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生物多様性を脅かす外来種問題

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2000.10.01

特集「エイリアンスピーシーズ」その6 IUCNガイドラインとは

移入種問題専門家、グリーン博士に聞く

会報『自然保護』No.450(2000年10月号)より転載


2000年2月、IUCN(国際自然保護連合)評議会は「外来侵入種による生物多様性の消失を防止するためのIUCN指針」(通称IUCNガイドライン)を採択した。これは、各国地域の政府や機関が生物多様性条約の第8条(h)を履行できるよう支援する目的で作成された。このガイドライン作成に携わったIUCNオセアニア地域理事で、9月初旬「移入生物問題を検討するワークショップ」(生物多様性JAPAN主催)のためニュージーランドから来日したワレン・グリーン博士に、作成のいきさつとニュージーランドの状況を聞いた。

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Dr Wren Green(IUCNオセアニア地域理事)
「これからは、どの生物種が「侵入種」になりうるかというリスク・アセスメントが必要になるでしょう」と語る。

ーーIUCNガイドラインはどのようにして作成されましたか。

世界中の専門家130人からなる「種の保存委員会(SSC)移入種グループ」が草案をつくり、数年にわたる議論と修正を経てまとめたものです。グループには、植物、園芸、げっ歯類、淡水生物、昆虫、哺乳類、捕食類などの専門家、害虫・害獣などのコントロール専門家もいます。ニュージーランドからは座長のクロウト博士や私を含め多くの委員を送り込んでいます。

ーーなぜニュージーランドの専門家はこのガイドラインづくりに大いに貢献できたのですか。

ニュージーランドにはもともと二種の小型コウモリ以外の陸棲哺乳類はおらず、陸鳥、爬虫類、昆虫しか生息していませんでした。これは、最も近いオーストラリアから分離後、6000万年もの間ずっと孤島であったため、独特の進化を遂げた固有種が保存されたからです。モアとかキーウィといった飛べない大型陸鳥も何種もいました。しかし、150年ぐらいの間に88種いた陸鳥のうち36種ほどが絶滅、モアだけで12種いたものが絶滅、大型のワシも絶滅していきました。

これは、ヨーロッパ人がこの島に移り住むようになった1800年代後半から1900年代にかけて、農業や狩りなどの目的で膨大な数の生物種を持ち込んだことによります。哺乳類だけでもウサギ、牛、羊、ヤギ、イタチ、シカ、キツネなど80種、植物は250種がわかっていますが、外から人間が持ち込んだ生物種は2万にも及ぶのではないかと推測されます。これはもう “移入種のるつぼ”、いわば移入種の自然実験場と化したわけです。生態的に閉じられた島嶼国ゆえ、とくに移入種に対して脆弱なのです。

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グリーン博士を始め、国内で移入種問題に取り組む研究者が集まった「移入生物(Invasive species)問題を検討するワークショップ」
(9月2日、代々木オリンピック青少年センター)

ーー在来種に具体的にどのような影響が出ましたか。

多くの固有在来種が絶滅したり絶滅の危機に瀕していきましたが、とくにウサギ類やイタチ類は陸鳥の捕食者となり多くの種を絶滅させましたし、現在もっとも手を焼いている移入種のひとつがポッサム(フクロギツネ)です。今や羊の頭数より多い6000万~7000万匹にまで繁殖してしまいました。毛皮のために、オーストラリアから導入された動物です。

ニュージーランドの在来種と移入種の状況

在来種 外来種 うち外来侵入種
植物 2.410 2.070 258+
哺乳類 2 34 20?
鳥類(陸棲) 88 33 12
淡水魚 約35 20 10+

なお、ニュージーランドでは2万種以上の生物が栽培飼育されている。

ーーこれの被害は?

移入種は必ずしもすべてが在来種に害を及ぼすわけではありません。IUCNガイドラインでは、生態系に影響を与えるものを「外来侵入種」(Alien invasive species)、生態系への影響はとくにないものを外来種(Alien species)、と区別しています(表参照)。ニュージーランドの場合、もともといなかった哺乳類の導入は島の生態系に大きなダメージを与えました。これはニュージーランドが犯した過ちです。

IUCNガイドライン

解説】IUCNガイドラインの目標は大きく分けて4つ。移入種に関して、1)理解と認識を向上させる、2)管理的対策を強化する、3)適切な法的・制度的なシステムをつくる、4)知識および研究のための努力を奨励すること。これらを達成していくため、以下の7つの目的が掲げられている。

  • 移入種は、先進国・途上国、その他地球上のあらゆる地域の在来の生物多様性に影響を与える重大な問題であるという認識を高めること、
  • 移入種の導入阻止は、国内的および国際的な最優先課題として奨励すること、
  • 外来種の意図的でない導入を最小限にとどめること、認可されない外来種導入を防ぐこと、
  • 外来種の意図的な導入は、生態系コントロール目的といった類いのものも含め、生態系への影響可能性を慎重に事前に正しく評価することを保証する、
  • 移入種に対する根絶措置やコントロール・キャンペーンを展開・導入するのを奨励すること、またこの種のキャンペーンや計画の効果を高めること、
  • 外来種の導入、外来侵入種の根絶やコントロールを規定するために、国内制度および国際協力の包括的な枠組みを創り出すのを奨励すること、
  • 世界的規模で起きている移入種問題を提示するため、正確な基礎的知見を研究し発展させ分かち合うことを奨励する。

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なお、原文(英語)はIUCNのウェブサイトで、邦文(『自然保護』編集部による仮訳)はこちらで入手することができる。

ーーニュージーランドでは、このような移入種問題にどう対処していますか。

害を与える雑草、ネズミ、ポッサムなどの駆除やコントロールのための対策費として年間2億2000万米ドルの予算を費しています。侵入種による経済的損失額といえます。生態系全体の損失もカウントすると年に4億3000万米ドルに値します。

国境の水際での管理も厳しくしており、たとえばすべての国際郵便物はX線でタネの有無を検査していますし、新たな生物種を国内に持ち込む際には国の認可を必要とし、これには費用がかかるようになっているなどさまざまな対策をとっています。

ーー移入種対策の先輩国として日本へのアドバイスは。

一にも二にも、移入種問題に対する人々の意識を高めることです。2つ目には、農業への影響を含めこれによる経済的損失、さらに生物多様性の損失といったコスト認識が必要です。

じつは移入種問題というのは政策担当者が思っているよりずっと深刻な問題なのですが、現在の検疫システムでは生物多様性保全に対してまったく不十分ですし、このような職務にかかわる人員を増やしたり教育や再訓練することも必要です。もっとも安く効果的な対策は、貿易や出入国など国境での水際防止作戦を厳しく行うことです。

(聞き手・保屋野初子)

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