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「九折瀬(つづらせ)洞を保全するため、 川辺川ダム周辺の環境アセスメントを」

1999.12.15
活動報告

九折瀬洞調査報告

期日 平成11年11月6日(土)13:00~17:00
主催 自然観察指導員熊本連絡会
協力:NACS-J、九州大学探検部
参加者 連絡会4名、NACS-J2名、
九州大学探検部4名、マスコミ5名
行動概略
  • 道路より急な崖を約30m下りて入口へ。入口の天井の高さは川から5mくらいあり、自然の増水で入口が完全にふさがれることはほとんど無いと思われる。
  • 入口からは穴が徐々に上がっていた。洞内は足元に泥、壁は細かい石灰質?が薄く付いている程度。ほとんど這って歩かなければならない。
  • 入口より30mほどの地点で、石に巣を作る白いクモ発見。体長1~2mm。さらに奥、石の間に網をかけるクモを見つける。やや広いホール状の場所に出ると、コウモリ数匹とコウモリの糞の堆積物(グアノ)が3~4カ所見られた。グアノの中にはトビムシの他、ヤスデ2種を確認することができた。その他、陸貝の貝殻2種類を発見した。
発見した生物 9種(クモ2種、ヤスデ2種、トビムシ、ゴミムシ?、カマドウマ、ゲジ、ユビナガコウモリ)

 

九折瀬洞について

五木村には大小20カ所の洞窟があるとされている。九折瀬洞は全長1186m、五木で最長、熊本県内で2番目の洞窟である。五木村の中心である頭地地区から約1km上流の九折瀬地区にある。入口は、ちょうど川辺川の流れに面した岸壁に、流れと同じ高さで開いている。入口からは横穴が迷路のようにつながっているが、穴は奥に向かって高くなっている。

(注意)洞内は非常に危険であり、一般の人は入ることはできません!

 

工事との関連について

ダムが完成した場合、満水時には現在の川岸から最大15mほど水位が上がる。その際には九折瀬洞の入口が完全に水没する。
水没した場合、洞窟の半ばまで水が入ると予想される。その際には洞窟でくらすコウモリは出入りできなくなる。専門家によれば、長期間出入りできないとコウモリが餓死してしまう恐れがあるという。また同時に昆虫などにも大きく影響することが予想される。
 

九折瀬洞内で過去に確認されている生物(文献資料より)

過去に確認された生物は以下の通りである。洞窟内には光がないので、光合成を行う植物は全く生えていない。従って、洞窟に入ってくる栄養分はコウモリの糞(グアノ)しかない。このコウモリの糞(グアノ)、あるいは他の生物の死骸を養分にして成り立っているのが洞窟の生態系である。

種名 備考
クモ目 マラシグモ科 マシラグモの1種 洞窟毎の変異が見られる、新種候補
ユウレイグモ科 アケボノユウレイグモ 好洞窟
ヒメグモ科 ヨロイヒメグモ
オオヒメグモ 好洞窟
メナシヒメグモ 真洞窟、日本で2番目の記録、ヨロイヒメグモの目が退化?
ホラヒメグモ科 ヒゴホラヒメグモ 熊本県内に分布、五木村では3カ所に生息している
タナグモ科 イツキメナシナミハグモ 98年12月新種として発表された
サラグモ科 アシナガサラグム 外来
コガネグモ科 タニマノドヨウグモ 外来
アシナガグモ科 ヤサガタアシナガグモ 外来
オビヤスデ目 オビヤスデ科 ツノノコギリヤスデ 熊本・宮崎に分布、体長28~29mm
ヒメヤスデ目 リュウガヤスデ科 オオセリュウガヤスデ 熊本に分布体長40~50mm、グアノに優先する
直翅目 カマドウマ科 マダラカマドウマ 好洞窟
粘管目 トゲトビムシ科 キュウシュウホラトゲゴミムシ 真洞窟、広く生息
コウチュウ目 オサムシ科 ツヅラセメクラチビゴミムシ 真洞窟、九折瀬特産、RDB絶滅危惧種
オオマルクビゴミムシ 外来
ホラアナヒラタゴミムシ 真洞窟、新種の可能性あり
ハネカクシ科 ヒゴツヤムネハネカクシ 熊本特産、主要な生息地の一つ
翼手目 キクガシラコウモリ 鼻に特徴、大型のコウモリ
ユビナガコウモリ 九折瀬洞では最大2000頭

*真洞窟:洞窟内のみでくらしている
*好洞窟:主に洞窟内でくらしている
*外来:主に外でくらしている

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