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吉野川第十堰問題・河口干潟の保全

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1999.12.15

「埋立地に立地する必然性を明らかにすべき」

小松島港沖洲(外)地区整備事業に係る環境影響評価方法書について意見


平成11年12月15日

徳島県知事 圓藤 寿穂 殿

財団法人 日本自然保護協会
保護部長 吉田正人

小松島港沖洲(外)地区整備事業に係る環境影響評価方法書について、環境の保全の見地から、次のとおり意見を述べます。

(1)環境影響評価全体に対する意見

本事業は、徳島市北沖洲地区・南沖洲地区とマリンピア沖洲・期埋立地にはさまれた小松港湾区域内の公有水面を埋め立て、都市再開発用地、港湾関連用地、埠頭用地、緑地、高速道路用地を整備することを目的としている。
 
当協会は本事業が、四国横断自動車道橋・東環状道路橋の建設、吉野川第十堰の改築などとあいまって、ラムサール条約のシギ・チドリ渡来地ネットワークに含まれる吉野川河口の干潟およびそれを生息地・渡来地とする生物に与える影響が大きいと考え、平成11年3月2日、徳島県知事に対して、関連する他の事業とともに複合的な影響を調査する環境影響評価を実施することを求めた意見書を提出した。
 
その後11月1日、徳島県知事は、本事業の計画を縮小し、マリーナ計画を除く、約35haを埋め立てる計画に変更することを発表した。
 
埋立面積を縮小したこと、埋立面積縮小に伴い環境影響評価法の対象とならなくなったが、条例化を検討中の徳島県環境影響評価条例を先行適用して、環境影響評価を実施することを決めたことは評価したい。ただし、以下の点についてはさらに検討を要する。  

1.土地利用について、埋立地に立地する必然性を明らかにすべきである
渡り鳥の渡来地や干潟の生物の生息地として、また沿岸海域の水質浄化の場として重要な価値を持った干潟が、埋立や干拓によって次々と失われゆく今日、埋立以外の方法では用地を得られないという立地の必然性が説明されない限り、貴重な干潟やその周辺の浅瀬を埋め立てることは許されない。

しかし、都市再開発用地、港湾関連用地、埠頭用地、緑地、高速道路用地のいずれをとっても、計画が具体的ではなく、埋立以外の方法では用地を得られないという説明がなされていない。最近の報道では、県保健環境センターという、本来であれば環境に配慮した立地を求めるべき施設の埋立地への移設が検討されるなど、「まず埋め立てありき、埋立地の利用方法は後から考える」という姿勢が明らかになっている。
 
環境影響評価条例は、事業実施に伴う適切な環境保全措置の実施を求めるものであって、事業そのものの必要性を評価するものではない。環境評価手続き以前の段階として、立地の必然性を再検討し、埋立地以外では用地を求められないというもの以外については除外すべきである。  

2. 他の関連する事業との複合的な影響を評価すべきである
吉野川下流には、四国横断自動車道橋・東環状道路橋の建設、吉野川第十堰の改築など、ラムサール条約のシギ・チドリ渡来地ネットワークに含まれる河口干潟に複合的な影響を与える可能性の大きな事業が、次々と計画されている。とくに本事業による埋立地には、四国横断自動車道のジャンクションを建設することが予定されており、本事業(公有水面埋立)と四国横断自動車道の建設は、工事による影響は時期が異なったとしても、存在や供用による渡り鳥や干潟の生物に対する影響は複合したものになると考えられる。
 
したがって本事業の環境影響評価にあたっては、他の関連する事業(とりわけ四国横断自動車道)との複合的な影響を評価すべく、それぞれの事業者と調整すべきである。  

3. 情報公開をすすめ、徳島県環境影響評価技術審査会の透明性を確保すべきである
徳島県環境審議会環境政策部会がまとめた「徳島県環境影響評価条例(仮称)のあり方について」では、「事業者への住民意見の提出は、貴重な環境情報の提供となる」と評価し、「環境影響評価準備書手続の段階においては、必要に応じ公聴会等の開催などにより直接聴取するための手続を導入することが望ましい」としている。また「事業者自らが実施する環境影響評価については、十分な環境情報を基に、事業に関する環境保全について適切な配慮がなされているかどうかを、科学的かつ客観的に検討する必要がある」として、第三者機関の設置を求めている。
 
本方法書の公告縦覧にあたっては、平成10年度以降の調査結果が公開されていないなど、情報公開に関して不十分な点が見られる。徳島県環境影響評価技術審査会が、第三者機関として機能するためには、市民の傍聴を認めるなど、透明性を確保する必要がある。  

(2) 環境影響評価方法書の内容に対する意見

1. 環境影響評価法のめざすスコーピングとは、地域にあったメリハリの効いたアセスメントを実施するためのものである。この方法書は、これまで実施した、あるいは今年度実施予定の調査しか書いておらず、これまでの調査結果の説明書にすぎない。環境影響評価として、何を重点においてどのような調査を実施するのかを明らかにし、方法書の確定後にきちんとした現地調査を実施すべきである
「第4章 環境影響評価の項目並びに調査・予測及び評価の手法」を見ると、かなり多くの項目が、平成9年度の文献その他の資料調査をもって調査期間のすべてであるとしている。現地調査の計画がある項目も、平成11年11月までで調査が終了し、その後の調査予定はない。例えば、水質は平成9年度の文献調査と、平成11年度の現地調査の後には、現地調査計画がない。また生物多様性の項目でも、昆虫(ルイスハンミョウを含む)、魚卵・稚仔魚、底生生物、干潟・砂浜生物(カニ類を含む)など、数多くの項目が、平成11年11月までに調査期間が終了しているか、あるいは平成11年度内で調査を終了する予定となっている。
 
このような方法書は、「地域にあったメリハリの効いたアセスメントを実施し、広く一般から環境の保全に関する有益な情報を聴取する」という、スコーピングの意義を全く理解しないものであり、これまでの調査結果および今年度の調査予定の説明書に過ぎない。本事業の環境影響評価において、何を重点としてどのような調査を実施するのかを明らかにすべきである。
 
具体的には、本事業はA)沖洲海岸を埋め立てることによって貴重な干潟とそこにすむ生物に多大な影響を与えるおそれが強い、B)マリンピア沖洲・期と陸をつなぐことによって海流の流れが変わり吉野川河口干潟に影響を与えるおそれがある、ことから、
1)沖洲海岸の生物の調査について重点化をはかる
2)吉野川河口干潟の生物の調査について重点化をはかる
3)埋立による海流の変化の予測について重点化をはかる
など少なくとも3点の重点項目を示し、その項目については、既存資料だけですませるのではなく、方法書確定後にきちんとした現地調査を実施し、その結果を準備書に記載すべきである。

2. 生物の多様性の確保および自然環境の体系的保全の項目について
1)ルイスハンミョウ
平成5~9年の調査によれば、吉野川河口干潟・沖洲海岸は、環境庁レッドデータブックにおいて希少種とされるルイスハンミョウの最大の生息地となっている。平成10~11年の調査結果が明らかにされていないが、平成9年時点では、吉野川河口干潟で発見がない時でも沖洲海岸では見つかっていることから、沖洲海岸がルイスハンミョウの供給源となっていることが考えられ、もし沖洲海岸を埋め立てれば、ルイスハンミョウに決定的なダメージを与えることが予想される。方法書では、ルイスハンミョウの調査は、平成11年8月までとなっているが、平成12年の夏以後も徹底的な調査を行い、影響の回避を図るべきである。

2)鳥類
鳥類については、平成5年、平成10~11年に調査が実施されている(平成10~11年のデータは明らかにされていない)が、渡り鳥にとって重要な春期の調査がわずか2シーズン分だけで、しかもルートセンサスによる個体数のカウントのみであり、きわめて不十分である。吉野川河口干潟は、ホウロクシギなどの大型のシギが渡来する干潟であることがわかっており、これらの種類については、個体数のカウントのみではなく、潮汐の変化とともに、干潟・浅瀬のどのような位置で採餌しているかを時間ごとにマッピングし、影響を回避すべき干潟・浅瀬の範囲を知る必要がある。方法書では、鳥類の調査は、平成11年12月までとなっているが、平成12年の3~6月にも現地調査を行い、上記の疑問に答えるべきである。

3)干潟の生態系
生態系については、沖洲海岸、吉野川河口砂州について、食物連鎖のモデル図が書かれているが、「調査および予測の手法」はきわめてあいまいで、注目種の選定、調査方法、調査期間が何も書かれていない。したがって生態系に関しては、方法書に対して意見を述べる段階にはない。
 
生態系の調査についてあえて意見を述べるならば、本環境影響評価において調査し予測評価すべき対象は、「沖洲海岸および吉野川河口干潟(地上部の砂州だけではなく浅瀬も含んだ干潟)の生態系」であり、その保全目標は「沖洲海岸および吉野川河口干潟の生態系が健全な状態で持続的に維持されること」である。
 
干潟の生態系は、デトリタス食物連鎖が重要な位置を占めていることがわかっており、このデトリタス食物連鎖が健全に維持されることに重点をおいた調査が行われるべきである。また渡り鳥の捕食による有機物質の除去も、干潟の浄化能力に大きな役割を果たしており、これらを量的に把握し、浄化能力が損なわれることがないよう、影響を回避しなければならない。
 
また干潟の生態系が維持されるためには、埋め立てが干潟や浅瀬の地形に与える変化についても調査する必要がある。埋立による海水の流動の変化、波あたりの変化とそれに伴う地形変化、堆積物の変化を予測し、干潟や浅瀬が失われることがないよう、影響を回避しなければならない。なお、平成10年度以前に実施した予測調査は、マリーナ計画が変更される以前の調査であるため、新たな計画に基づいて予測調査をやり直すべきである。

3. 人と自然との豊かなふれあいの確保について
方法書には、人と自然とのふれあいの場の調査について、平成11年度に実施予定とするのみで、具体的な調査方法がまったく書かれていない。そのため方法書に対する意見を述べることができないが、これまでの調査では「事業実施区域における釣り場」の調査が行われているだけで、まったく不十分であるといわざるを得ない。沖洲海岸および吉野川河口干潟周辺で、自然観察会・探鳥会が定期的に開かれていることから、地元の自然保護団体(とくしま自然観察会、日本野鳥の会徳島県支部等)に対するヒアリングやそれにもとづく現地調査を、平成12年の春から夏のシーズン中に実施する必要がある。

4. 環境保全措置と事後調査
本方法書には、環境保全措置と事後調査に関する計画が全く書かれていない。「評価の手法の選定」の中で、「対象事業の実施により選定項目に係る環境要素に及ぶおそれがある影響が、実行可能な範囲内でできる限り回避され、又は低減されており、必要に応じてその他の方法により環境の保全についての配慮が適正になされているかどうかについて検討する」と述べられているだけである。
 
環境影響評価法は、環境基準クリアー型からベスト追求型への転換をねらいとしており、本事業の環境影響評価要綱も同法に準じていることから、環境保全措置に対する基本的な考え方をもう少し具体的に表明すべきである。
 
事後調査については全くふれられていないが、不確実性の高い環境保全措置を実施する場合には、事後調査を実施し必要に応じて環境保全のための対策をとることが求められる。沖洲海岸の埋立を行うとすれば、どのような環境保全措置をとろうとも、不確実性の高いものになることは間違いがない。したがって方法書には、環境保全措置にともなう追跡調査の実施についても事業者の意見を表明すべきである。

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