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徳山ダム建設問題と猛禽類生息地保全

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1999.09.24

水資源開発公団、NACS-Jへ未公表資料を提供

猛禽類生息状況調査報告書の内容をNACS-Jが独自評価し公開資料作成へ


福井県との県境に近い岐阜県藤橋村。かつて徳山村があったこの地に41年前に計画された徳山ダムの建設事業は、現在ではダムの付帯工事がすすみ、ダム本体の工事着手が目前に迫ってきています。しかし、貯水地予定地(日本最大規模)の谷にはイヌワシとクマタカのつがいも多数確認されているとのことから、ダム建設工事による自然環境への悪影響が懸念されてきました。このため、地域のNGOやメディアから事業主体である水資源開発公団に対し、公団が実施した大型猛禽類の調査資料の公開が強く求められていました。しかし、営巣地保護などを理由に、公団は資料公開を行わずにきていました。これに対し、今年8月末にNACS-Jも、地域の鳥類研究者の意見をうかがいつつ、この資料の公開の必要性を公団に対して申し入れていました。

その中で水資源開発公団から、この資料を公開可能となるよう加工することについてNACS-Jに要請があり、NACS-Jからは、単に公開資料にすることに協力するだけでなく、この資料の内容を独自に評価してその結果を添付できるようにすることなどを盛り込んだ下記の協定を結ぶことを要望し、これが取り交わされたことからこの資料を受けることを決めました。

今回の協定には次のような特徴があります。すなわち、大型猛禽類調査によって得られたすべての資料をNACS-Jは仔細に検討できること、そしてそれに対する自由裁量による点検評価ができることです。つまりNACS-Jにおける他の自然保護活動の場合と同様、NACS-Jの発言はどこからも拘束されず、完全に自由なままです。公共事業に関わる事業主体内部の調査結果について、このように本来の意味での第三者機関、それもNACS-Jのような自然保護NGOに全資料を提示し協力を求めた事例、また関与した事例は、前例がありません。NACS-Jにとっても、一歩踏み込んだ形での自然保護活動となりえます。この仕事と協定の内容は、9月24日に合同の記者会見を開き、発表しました。

NACS-Jでは、約2カ月をかけて公団から提供されるすべての資料を客観的に分析し、どのように公開すべきかを公団側に示します。公団側はそれに基づいて資料を公開するとともに独自の保全対策についても公表することになる予定と思われます。一方NACS-J側でも、この調査結果の独自の評価をその公開資料に添付するとともに、水公団と合同で公開した後は、NACS-J独自でこれらの資料を活用します。

■徳山ダムデータ
目   的 治水(洪水の調節)、岐阜県・愛知県内の利水、発電など
位   置 岐阜・福井の県境の「冠山」から伊勢湾まで達する揖斐川の山間部、藤橋村
総貯水容量 6億6000万m3(完成すると日本最大規模のダムとなる)
事業の状況 1964年に横山ダムが完成し洪水の被害は軽減された。が、その後の豪雨や大洪水などから、横山ダムの上流でのダム建設の必要性が求められ、1972から実施計画調査が着手され、現在に至る。

★詳細は、徳山ダム建設所のホームページをご覧ください。

■NACS-Jが関わるに至るまでの経緯

  • ダム工事予定地域周辺でイヌワシ・クマタカなどの生息が確認されたため、1996年5月から1998年9月まで水資源開発公団が猛禽類の生息状況の調査を実施。
  • 1996年8月、公団が公団現地事務所内部の検討機関として、新潟大学の阿部教授を座長とする「徳山ダムワシタカ類研究会」を設置。
  • 「猛禽類保護のためには工事を一時中断すべき」という意見が受け入れられなかった等の理由で、研究会委員4人のうち、野鳥の会岐阜県支部に所属する3人が1999年8月に辞任。
  • これまでの調査資料の公開にあたり、公団がNACS-Jに対し協力要請を打診、資料公開において自然保護上必要な配慮等の助言を依頼。
  • NACS-Jはこの要請を受けるために、自然保護上必要な条件を提示。公団はこれを了承。それらをすべて盛り込んだ協定書を取り交わし、資料を入手(協定書の取り交わしを9月24日記者発表)。


NACS-Jと水資源開発公団とが取り交わした協定書
(全文/公開済み)


岐阜県揖斐川上流域徳山ダム建設計画に関わる

大型猛禽類調査資料

(水資源開発公団による生息実態調査結果)の

適正公開等に関する協定書

(趣旨)

第1条
水資源開発公団(以下「公団」という。)と財団法人 日本自然保護協会(以下、「協会」という。)とは、公団が野生生物の生息環境の保全及び情報公開の重要性の観点から行う表記調査資料の公開とその内容の点検に関し、民間の公益法人の裁量を公団が認めつつ協会に協力を求め、協会がそれに応じるにあたり、本協定を締結するものである。

(資料の提供と活用)

第2条

  1. 公団は、自然保護への専門的な活用を目的として、公団が徳山ダム建設計画地域において実施しとりまとめた希少猛禽類の調査計画、調査結果、その調査結果に基づく解析結果を内容とする「徳山ダム希少猛禽類調査資料」(以下「調査資料」という。)一式を協会に提供する。
  2. 協会は、調査資料の著作権が公団にあることを明示した上でこれを適切に保管し、自然保護のために活用する。

(公開資料及び添付文書の作成

第3条

  1. 協会は、国民に対する情報公開の必要性の観点から実施される公団による調査資料の内容公開にあたり、公団から提供された調査資料に対し、希少猛禽類保護の観点から公開を差し控えるべき情報にマスキングをする等の加工を適切に行い、情報公開の要請に応じた公開可能な資料(以下「公開資料」という。)の作成に協力する。
  2. 公団は、協会による公開資料の作成作業において必要な場合には、徳山ダム建設計画における自然環境に関わる他の資料を協会に対して提供する。これらの資料の取り扱いは、調査資料に準じるものとする。
  3. 協会は、公開資料の作成過程において、調査資料の科学的妥当性及びデータ類の信頼性を独自に点検し、調査資料に関する一定の評価を行う。その評価結果は、協会の裁量によって取りまとめ、点検者名等を明記した上で、公開資料に添付する文書(以下「添付文書」という。)とする。
  4. 公団は、本条1及び3に関する協会の一連の作業の実施にあたり協力する。
  5. これらに要する費用等に関しては、公団及び協会において別途協議の上で取り決める。

(本協定等に関する発表とその方法等)

第4条

  1. 本協定等に関する発表は、主要記者クラブに対して公団及び協会の共同記者会見によって行う。
  2. 本条1に関わる記者会見は、本協定の締結時、公開資料完成時、その他公団及び協会が協議し合意した時とする。
  3. 公開資料完成時の記者会見で発表する資料は公開資料及び添付文書とし、発表の方法は公団及び協会において協議の上決定する。
  4. 混乱を避けるため、第三者に対する個別の情報提供は、本協定に基づく協議の内容については本協定締結時の記者会見まで、公開資料の作成過程及び添付文書に関わる項目については公開資料完成時の記者会見まで、公団及び協会双方において行わないものとする。
  5. その他、本協定に関わる項目に関する取材等については、必要に応じ公団及び協会の協議に基づいて対応する。ただし、本協定の定めに直接関わらない取材等に関しては、この限りではない。

(公開資料等の発表後における公開資料等の開示)

第5条
公開資料等の発表後によせられる公開資料等の開示希望者への対応は、公団及び協会がそれぞれ行うことを原則とするが、公団及び協会のいずれかの求めがあれば協議を行い、必要に応じて協力し対応するものとする。なお、開示の際には、その開示先を公団は協会に対して、協会は公団に対して通知するものとする。

(その他)

第6条

  1. その他本協定に定めのない事項について疑義が生じた場合は、公団及び協会の協議に基づいて対処する。

この協定締結の証として、本書を2通作成し、それぞれの署名捺印の上、各々1通を保有する。

平成11年9月22日

水資源開発公団 総裁 近藤 徹
財団法人 日本自然保護協会 会長 沼田 眞

 

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