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長良川河口堰建設問題

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1999.07.01

特集「長良川が教えてくれたこと」(その1)

長良川河口堰5年間のモニタリング調査から
1999年7/8月号より転載


438特集表紙.jpg
特集:長良川が教えてくれたこと(PDF/4.1MB)

1.長良川を見つづける

今年の7月で、長良川の河口堰が閉じて4年が経過する。4年の間には、自然保護に関わる話題だけでも、藤前干潟、愛知万博、千歳川放水路、ダイオキシンなどの環境ホルモン等々、多くの話題がマスコミをにぎわせた。長良川河口堰問題は、これらの事件におされ一時期からすると世間からは忘れられたかのようにも思える。
しかし、変わらず見つづけている人たちがいる。河口堰ができるというのは、いったいどういうことなのか。人間のくらしに必要とされてすすめられたこの大規模公共事業はどんな意味をもっていたのか–。

その一つの答えが、今年、まとまった。
予想通りにことがはこんだこともたくさんある。しかし一方で、人間の予想をはるか超えたできごとがいくつも見つかった。
長良河口堰–この多くの犠牲を払ったできごとから、私たちはこれからの時代を生きていくために、教えてもらわなければいけない。

モニタリング開始

今年、NACS-Jは長良川河口堰について新しい報告書を発行する。『長良川河口堰が自然環境に与えた影響』というこの報告書は、河口堰の完成直前から現在に至るまでの環境の変化をまとめたものだ。報告書の”はじめに”(田中豊穂氏)から、モニタリングに至った経緯をご紹介しよう。

河口堰と関連がある、あるいは関連があるかもしれない事象をできる限り正確に記録にとどめるために、長良川河口堰に関心を持つ人々が、建設省・水資源開発公団とは独立に調査・研究を続けてきた。

長良川河口堰は、計画が発表されてから30余年、とりわけ着工後、環境への影響、漁業への影響、経済性、河川行政、公共事業のあり方などさまざまな面から厳しい論争の的となってきた。この中で生まれた2つの動きが、モニタリング調査へとつづいていった。

ひとつは、日本における河川環境の破壊の深刻さを憂慮して、長良川を1つの例として河川保護のあり方を探ろうという、NACS-Jの取り組みである。長良川河口堰問題専門委員会を中心にして、完成間近の1993年に運用前からの調査を行う必要と考え、「長良川河口堰事業モニタリング調査グループ」が組織された。

もうひとつは、長良川流域の研究者・住民による調査研究活動である。長良川下流域生物相調査団(団長・山内克典岐阜大学教授)は、岐阜を中心とした数十名の人々によって1990年に結成された。同調査団によって、堰運用前の汽水域の生物相をとらえた貴重な記録が残された。

長良川では、堰の運用開始後のほんの1~2カ月の間に、心配されていた現象があいついで見られた。この事態を重く見たモニタリング調査グループは、結果の公表とともに、追跡調査を行っているさまざまなグループの間で情報交換をより緊密にするために、1995年9月に「長良川研究フォーラム」を開催。これは以後毎秋に開かれている。モニタリング調査グループは、出発にあたってとりあえずの目標を5年間と定めていた。堰完成の前年から昨年までの5年間の同グループによる調査結果と、長良川研究フォーラム関係者などが実際に行った調査をもとに報告書としてまとめられた。

今月号は、この報告書をダイジェストし、河口堰ができた長良川に、いったい何がおこったかをご報告したい。

 


長良河口堰(ながらがわかこうぜき)

■事業名
     長良川河口堰
■所在地      左岸:三重県長島町 右岸:桑名市
■事業主体    水資源開発公団(建設省直轄事業)
■事業目的
洪水時に水を流れやすくするために川底の浚渫を可能にする(浚渫によっておきる海水のそ上を堰でくい止める)。同時に、せき止めた水の一部を都市用水として利用する(毎秒22.5t、愛知・三重県の工業・上水道用として取水)。
■事業規模
河口から5.4km上流に建設された延長661mの可動堰。12基の水門を閉ると3000万tの貯水量を持つ巨大なダムになる。
■予算規模     1800億円(当初予定は235億円)
■進捗状況     1993年完成、試験運用を経て、1995年5月から運用。
■環境の特性
長良川は、岐阜県美濃地方の北端、高鷲村から伊勢湾までの全長158?、流域面積1985m。源流部ではアマゴ、中流部のアユ、下流部のヤマトシジミと魚種豊富で知られる。25?より下流では支流がほとんど流れ込まないため水質がよく、アユの遡上量も多い。下流部は、両側を木曽川・揖斐川に挟まれている。河口堰がつくられた周辺は、海の干満の影響を受ける感潮域だった。

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