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東京湾・三番瀬の埋め立て問題

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1998.12.01

三番瀬、計画策定懇談会スタート

合意形成の試金石になれるか

=月刊『自然保護』No.432(1998年12月号)より転載=

 


 

東京湾奥部の干潟・浅海域「三番瀬」を埋め立てる計画についての計画策定懇談会が10月19日スタートした。千葉県が主催するこの会議に、日本自然保護協会も参加している。これから始まる議論に向けて、主な論点を整理し、会員の皆さんに日本自然保護協会の考えを伝えてきた。

1.合意形成は、科学的調査に基づいたデータの尊重から始まる

議論は、まず三番瀬の自然の価値を十分認識するところから始めなければならないと考えている。これまでの調査で、三番瀬には多様な生物が生息し、イシガレイ等の幼稚魚の生育場として価値が高いことや渡り鳥の重要な中継地であること、極めて高い水質浄化能力があることがわかっている。千葉県が行った補足調査結果もそれを裏付けている。三番瀬は千葉県や近隣市民だけでなく、東京湾全体にとって、日本にとってそして国際的にも貴重な干潟・浅海域なのである。

埋め立てを前提とするのでなく、計画の中止や代替地の検討を含めた議論がされて、初めて補足調査を行った意味がある。補足調査委員会も「埋め立てはどれだけ小さな面積でも生態系に影響を与える」と報告している。

2.自然の価値を活かした地域づくりを

三番瀬は自然そのものの価値だけでなく、江戸前漁業が今でも営まれているという文化的な価値、そして千葉・東京という大都市に近接しながら、人が自然と触れ合える場として教育的・精神的に大変大きな価値を持っている。地域づくりにとって重要な財産になる三番瀬を、どう保全し、どう位置づけ活用していくか–。市民の声を十分聞きながら共通認識をつくった上で議論をすすめる必要がある。

3.都市生活のつけは、これ以上自然に回せない

三番瀬を埋め立てる目的は、「都市問題の解決に必要な施設のためのまとまった用地確保」とされている。しかし、下水道もゴミ処理場も道路も、今のような整備の繰り返しでは、まとまった用地確保は遠からず困難になるし、巨大な施設を支える財政の困窮も指摘されている。都市の生活基盤整備はこのままでよいのか、その方法・費用・用地等を見直すと共に、水の使用や排水・ゴミ・車の使い方など市民生活のあり方も考えなければならない。いつまでも安易に自然を犠牲にすることと引き替えの、一時的な問題解決策しか検討されないのでは、環境基本法が目指す持続可能な社会の実現はあり得ない。

4.合意形成のプロセスを皆でつくる

「自然と共存した持続的な社会づくり」には市民の協力が不可欠で、市民への情報公開と合意形成への市民参加が保障されなければならない。第一回の会合は、懇談会を「公開するか否か」の議論に終始した。日本自然保護協会は、都市問題の解決と三番瀬保全には、市民参加なしでは真の問題解決は望めないとして懇談会の傍聴と議事録の全面公開を主張した。しかし、自由な発言が妨げられるとの理由から、全面公開を反対する委員の意見も取り入れた座長のまとめにより、議事録要旨の公開と会合直後の記者発表と、実に中途半端なものとなった。これは、これからの本題の中で、異なる価値観がぶつかり合ったときの合意形成の難しさを暗示しているとも思われる。だが、だからこそ科学的なデータにより誰の目にも明らかになった三番瀬の価値を中心に据え、市民参加から広く意見を集め議論を尽くす必要を求め続けていきたい。

(開発法子・保護研究部研究担当部長)

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