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資料集その2 エコツーリズム・ガイドライン発行にあたって

1994.08.01
解説

エコツーリズムは、「環境に与える影響を最小限に抑えながら自然に触れ、自然環境を研究・探勝する」ツアーとされています。もともと欧米の環境教育の中から生まれたものですが、昨今の環境保護ブームを反映してか、新しい旅のスタイルとしての「エコツアー」が数多く企画・実施されています。しかし、これまで国内はもとより海外への「エコツアー」に関する明確な規定やガイドラインは日本にはありませんでした。そのため、ともすれば既成の観光ルートに飽きた旅行者にものめずらしい場所への旅行を提供するだけで、目的地となった保護地域には何の利点ももたらさず、ゴミの問題や地域文化への悪影響などを起こしかねないものまでが「エコツアー」を名のる心配が出てきました。

 

IUCN(国際自然保護連合)がまとめた「国立公園と観光保護地域の開発ガイドライン」によると、エコツーリズムが従来の観光と異なる点として、(1)途上国の自然保護地域の保全資金を生み出す、(2)自然保護と同時に、地域社会の新たな経済手段を創り出す、(3)地元住民や観光客に対して環境教育の場を提供する、としています。また、1993年に中国で開催された、第1回東アジア国立公園保護地域会議のワークショップではエコツーリズムの定義が出され、生態系への配慮、環境教育の提供などが唱えられています。

 

NACS-Jはこれまで、エコツーリズムに関するさまざまな取り組みを行ってきました。過去に2回実施した、プロナトゥーラ・エコツアーは、自然環境保全のための組織・制度を視察し、日本の自然保護にフィードバックするために実施された研修ツアーで、1991年はスイス・アルプス、1992年にはスリランカへのツアーを実施し、報告書を刊行しました。この他にも、自然に親しむ宿ネイチャーイン(NatureInn)登録制度、北海道えりも町のゼニガタアザラシウオッチングツアーへの協力などを推進してきました。

 

NACS-Jはこのような経験から、エコツーリズムの本来の目的である自然保護の立場からエコツーリズムのガイドライン作成のための検討委員会を設けました。本書はそれらをまとめたものです。また、資料として、IUCN、UNEPとWTO(世界観光機構)が1992年にまとめた「国立公園と保護地域における観光推進ガイドライン」等を掲載いたしました。この資料集が自然保護を目的としたエコツーリズムを企画・実施する際の参考になれば幸いです。

 

最後に、このガイドライン作成のため助成金をいただいたPRO NATURAにこころより御礼申し上げます。

 

1994年8月1日

財団法人 日本自然保護協会 会長
国際自然保護連合日本委員会委員長 沼田 眞 

 

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