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千歳川放水路計画

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1994.06.01

基礎資料の公開や代替案の検討、 包括的な環境アセスメントを

NACS-J千歳川問題専門委員会報告とコメントを発表

=月刊『自然保護』No.385(1994年6月号)より転載=


 

1994年4月14日、NACS-J千歳川問題専門委員会は「千歳川放水路計画の問題点第一次報告書」を発表した。NACS-Jはこれと同時に、報告書の結果をもとにして「放水路計画には重大な問題が多いので、根本的な計画策定の見直しを求める」という主旨のコメントを発表した。千歳川問題専門委員会がこの報告書で指摘したのは、千歳川放水路建設による自然への悪影響と治水計画の矛盾などの問題点である。さらに、問題を討議するための情報公開と科学的な検討を訴えている。

NACS-Jは、これらの問題は計画の策定過程で科学的な検討を十分に行おうとしなかった事業主体の姿勢によるものと考え、北海道開発局、建設省などの関係機関に以下の点を実施するよう働きかけることとした。ひとつは、千歳川放水路計画と石狩川の自然破壊・治水などに関するすべての基礎資料の公表と未調査項目を調査すること。もうひとつは、千歳川放水路計画を根本的に見直すための、具体的な内容と手順の提案である。

千歳川放水路計画は1982年に北海道開発局によって立てられた。しかし計画公表から11年を経た現在でも着工に至っていないのは、計画自体に現在の技術では解決できない無理があるため、と委員会報告は指摘している。以下に、報告書で指摘された要点をご紹介したい。なお報告書には、総論のほかに、付属文書として各委員会の責任でまとめられた検討結果が添えられている。総論は、各付属文書をもとに委員会全体としてまとめた意見である。

 

問題点の指摘や8つの代替案も
一方的に否定された
この計画はもともと、石狩川の治水のため、石狩川の増水時にここに流れ込む千歳川を逆流させて日本海に放水するというものであった。そのための放水路が北海道中南部を東西に分断するという、非常に大規模な土木工事計画である。しかしながら、この計画が初めて具体化した「石狩川水系工事実施基本計画」が諮問され承諾を受けたのは、非公開で行われる河川審議会であり、関係自治体・住民の意見や状況が熟知されていたか、大いに疑問である。また、最近ではこの計画の目的は、千歳川の治水に重点がおかれるようになってきた。千歳川流域の治水を考えるならば、流域の低地を農地兼用の遊水地にするだけでもある程度の洪水対策が可能であるにもかかわらず、放水路を造るとその農地兼用の遊水地とほぼ同じ面積の農地が千歳川流域以外の地域から失われることになる。また、放水路によって水脈が分断される美々川流域、工事で出される大量の残土、洪水時に放出される汚れた水による漁業への影響、放水路に沿って内陸に流入する冷気による農業被害など、千歳川と無関係な地域にも多くの問題を引き起こすと推測される。

さらに、この治水計画は、この流量までは洪水を防ぐことができるという値である「計画高水量」を、毎秒1万8000立方メートルとしている。この値は、石狩川での史上最大の流量である1万2000立方mをはるかに上回る。安全度を高めることは望ましいが、他地域にも犠牲をしてまで安全度を高めることは受け入れられるものではない。ちなみに、この値を毎秒1000立方メートル減らしただけで放水路計画は不要となる。

このように多くの問題点をもつ計画に対して、保護団体などから少なくとも8つの代替案が提案されてきたが、くわしい検討過程や科学的根拠が示されないまま一方的に否定されている。もちろん自然環境保全面からいっても、美々川流域の豊かな自然に多大な影響を与えることが心配される。

美々川流域の自然は、湧水群がえぐった渓谷によって特徴づけられている。落葉広葉樹の自然林が残る谷壁とほとんど改修を受けていない河川、そして川に沿って広がる湿地が一セットになって保全されている地域は、石狩川-苫小牧低地帯のなかでも、もはや美々川流域だけである。このような自然を保全する場所に、単に貴重種や稀少種だけに注目した自然評価ではなく、「生物の多様性保全」の観点から自然の評価と保全策が必要である。特に、湧水や河川、湿地の維持に貴重な役割を果たしている地下水の保全は「一連の流域環境全体の保全」のために不可欠なことであり、放水路計画が地下水脈を断ち切ることが危惧される。

報告書では、これらの未解決の問題に対応するため、以下の点を提案した。

1.放水路計画の基礎となった資料の公開と代替案の検討。

2.包括的な環境アセスメントの実施とその過程の公開。

3.放水路計画の再検討と総合的治水計画の策定。

4.大規模公共事業に関する意思決定の公正化・透明化。

 

千歳川問題は、NACS-Jの重要課題  最後に千歳川問題専門委員会の位置づけについて補足したい。

千歳川問題専門委員会は、NACS-Jの河川問題調査特別委員会のもとに設置されている。委員長は、小野有五・北海道大学教授(環境地理学、地形学)ほか五名の委員からなる。また、委員以外の専門家にも助言を受け、意見交換を重ねている。委員会では、大規模な自然破壊が心配される開発計画を抱える地域として、また日本の河川生態系保護のあり方を検討する典型的な事例の一つとして千歳川に取り組んでいる。

1993年9月の東京での第一回委員会以来、合計4回の委員会を開催しており、今回発表した報告書はこの検討結果であもある。

NACS-Jでは、千歳川問題を今年度の重要な課題の一つとして、NACS-J自然保護寄付をもとに活動を行いたいと考えています。会員の皆さんのご支援・ご協力をお願いします。

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