日本自然保護協会は、生物多様性を守る自然保護NGOです。

  • 文字サイズ

愛知・藤前干潟の埋め立て問題

愛知・藤前干潟の埋め立て問題 ニュース&トピックス 一覧に戻る

1993.12.01

「藤前干潟のピンチ深まる」

No.379 (1993年12月号)より転載


ポスト・ラムサールの現実

ラムサール条約釧路会議は、日本の干潟や湿地の保全に画期的な一歩を進める機会だった。しかし、開発先行を理由に登録地指定を見送られた重要干潟の危機は、むしろ深まっている。

藤前干潟でも、名古屋市は釧路会議直後の6月市議会に、縮小したゴミ埋め立て計画のアセスメントを今冬から実施するための補正予算を提出した。与党 (自社公民)市議は、質問の枕にラムサール条約会議や湿地の重要性を引きながら、ゴミ処分場も必要だから、環境保全に配慮しながらしっかりやれと、これを通してしまった。

 

縮小計画でも干潟にダメージ

9年前に発表された当初計画では、105ha、10年分のゴミを1990年から埋め立てるというものだった。その後、全国からの支援で続けられた保存運動で、これを52ha、6年分のゴミを1999年から、に変更させてきたのだ。

しかし、半分にしたとはいえ、52haの埋め立ては干潟の心臓部を破壊し、生態系に致命的なダメージを与える。当会の行った採餌位置調査では、シギやチドリたちは7~8割もの餌を計画地内で取っていることがわかった。すでに数千haが埋め立てられ、やっと残っている最後の干潟は、かけがえのない伊勢湾の生命線だ。

ラムサール条約の「ワイズ・ユース=賢明な利用」という理念から考えれば、干潟のはたらき、生態系のつながりを断ち切る埋め立ては、もうしてはならないのだ。

 

干潟保存は人間のためにこそ

名古屋港内には、造成されながら20年以上も未使用になっている埋め立て地や、南洋丸太材の輸入減少で使われなくなった貯木場など、当面の代替地が考えられる。それを使いながら、その間に根本的なゴミ減量、使い捨て社会からの脱皮をはかる施策を急ぐべきだろう。

当会では、愛知県や名古屋市、名古屋港管理組合などに、代替地確保やゴミ問題について、関係者間での話し合いを求めているがなかなか実行されない。なぜだろうか?

それは藤前干潟の埋め立てが、まだ「鳥の問題」であり、干潟や海とつながって生きている私たち「人間の問題」だとは、受けとられていないからだろう。

それがこれからの課題である。口先や頭だけでなく、体で感じてもらうには、どうすればいいのがろうか?

 

干潟探検隊

この8月、当会は夏休みの子どもたちや家族に呼びかけて、「干潟探検隊」を6日間にわたり開催した。潮だまりでカニをつかまえたり、プチプチプチと干潟にいっぱいの生きものたちのざわめきに耳を澄ませ、やわらかくあたたかい泥の中で、思いきり泥んこ遊びをした子どもたちの顔は、ほんとうに晴ればれと輝いていた。

私たちが残し、子どもたちに伝えたいのはこれだ、いろんないのちが生きている不思議さや、ともに生きていることの愉しさを感じる心だとおもったのである。

(辻敦夫・藤前干潟を守る会)

愛知・藤前干潟の埋め立て問題 ニュース&トピックス 一覧に戻る