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長良川河口堰建設問題

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1974.09.01

「長良川河口堰の建設による環境破壊は、到底回復が困難である。」

No.148(1974年9月号)より転載


国は木曽川水系における水資源開発基本計画の1つとして、長良川河口堰を建設することとした。

しかしながら本事業は、木曽三川河口調査団の調査をもとに水産業等に対する配慮がなされていたとするが、地元漁業権者が、水資源開発公団を相手として、岐阜地方裁判所に本事業停止の仮処分を請求している事実、あるいは地元自然保護団体の強い反対運動からして、適正な配慮が行われたかを問わざるを得ない。さらにその余についても、また、総合的な配慮がなされたものとは認めがたい。

長良川は、わが国の河川としては珍しく、その本流にはダムが建設されておらず、河川水は汚染度が低く水質良好であり、鮎などの遡上魚が妨害されずに遡上できる河川は、長良川以外には見られないとされている。また下流部(おおむね、東海道新幹線鉄橋より下流を指す)の河川敷内の砂州は、その上流部が、桑等の樹園として利用され、その余は主としてオギ、チガヤ、マコモ及びヨシを主とする草地で、裸地は極めて少なく、河口付近には、木曽三川地域に固有なイセウキヤガラを産するなど、汽水域の自然は日本全域にあっても極めて貴重なものと認められる。

さらに、わが国の大中河川の河口部は、河口港として利用されてきたため、河口沿岸が都市化されているが、長良川を含む木曽三川は、自然のままの河口を持つ少ない例外の1つである。また下流部沿岸で木曽川及び揖斐川に画された地域は、わずかな村落を除いては水田で占められ、シギ、チドリ、サギ、カモ類など水辺鳥類はもちろん、アオジ、カシラダカ、ビンズイ等、森林草原のものも含め、数十種類の野鳥を生息させ、昆虫、小動物も豊富であり、さらに水質良好な長良川河口に接する伊勢湾は、水棲動物が豊富である。

したがって、これらの豊かな自然環境は、全国的な自然河川の保護とともに、流域住民のためにも、これを保全する必要のあることは言うまでもないことである。長良川河口堰の建設は、長良川、特にその下流部及びこれに接続する伊勢湾並びにそれらの沿岸の自然環境に重大な影響を及ぼし、その環境破壊は、到底回復が困難である。

よって当協会は、保護委員会の決議に基づき、長良川河口堰の建設事業は、これを廃棄すべきものであるとの意見を申達する。

昭和49年9月9日
財団法人 日本自然保護協会
会長      川北 禎一
理事長     藤原 孝夫
保護委員会委員長     沼田 眞

(提出先)
水資源開発公団、岐阜県、関係各官庁、政党、報道機関、その他。


(解説)
これまでの行政の河川に対する考え方の中には生物に対する配慮はない。上流部で大規模に伐採をし、ダムで集め大量に取水し、下流には汚染水を流し込んでいる。そして川をまっすぐにし、川底を平らにならし、できるだけとどこおらさずに海に落とそうという発想なのである。

水資源開発公団によれば、長川川河口堰の建設目的は、治水と利水である。学術調査団の研究をもとに水産資源に支障をきたさぬようにし、さらに人工補給もするという。この主張どおりに受け止めても、結局川を水と水産資源でしかとらえていないことに変わりはない。河口部は海水と淡水の混じり合う部分で、それだけに特異な生物の生存域である。人類だけの地球ではない。人類の立場でしても、人類の生存の場を確保し子孫への継承の責任から、かけがえのない地球を大切にしよう、自然を保護しようという発想の必要に気付いたのではなかったか。この多様な自然をこわすことを許してはなるまい。

(金田 平)

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