2010年3月赤谷の日レポート

3月赤谷の日レポート(2010年3月6−7日)

コテングコウモリ

 今回赤谷の日の大発見は、雪の中で眠るコテングコウモリでした。この写真を撮った後はそのままにしておいたのですが、翌朝様子を見に行くと、コウモリの姿はなくなっていました。周囲に獣の足跡などもありませんでした。赤谷の森でコウモリ調査に取り組んで頂いている専門家に確認したところ、日本でまだ13例しか報告がないとのことです。また、翌日の状況まで確認した観察記録は今回が初めてとのことで貴重な記録となりました。また、世界中にコウモリは1000種いるのに、雪上にコウモリがいたという事例はほとんどないようです。
 ではなぜ、雪の上に、コウモリがいるのか?その有力候補として「冬眠」ではないかと考えられているようです。雪の中で冬眠して、雪が解けてその姿が出てしまった。。。想像するだけでオモシロイ現象ですね。



アニマルトラッキング&ホンドテンモニタリング

赤谷林道

 11時半に総勢12名で駐車場を出発。前日前橋で20度を超える暖かさを記録したこともあって、林道の残雪はほとんどなく用意したスノーシューを使う事はありませんでした。雪上の足跡もかなり解けて、まるでクマのものかと見間違えそうな大きさになっていたものや、凹んだ部分にほんの少し土が溜まった状態で点々と続く状況も見られました。
 また、途中ウサギの糞を何度か見かけましたが、あの特徴ある足跡は一つも発見出来ませんでした。さらには、林道沿いの小枝がまるで小刀で切り取られたような、ウサギかカモシカの食痕も多く見かけました。サルの糞が多く見られたのもこの間です。ムササビの糞もありました。12時半近く900m地点で昼食のため小休止。すぐ近くの谷側の雪上にカモシカの毛の塊を多量に発見。足立先生の解説では、何らかの原因で弱ったカモシカを誰かが襲った跡ではないかとのこと。でも、近くに全く骨を見ることは出来ませんでした。昼食後は1700m地点まで歩き引き返しましたが、この間は前半より残雪が多く、林道に並行して歩く足跡を合計5頭分見ることができ、また、ネズミのトンネルも観察できました。
赤谷林道での様子 赤谷林道での様子 赤谷林道での様子
 テンモニは、12月20日以降初めてのサンプリングだったこともあり、古いものもありますが、採取したサンプルは28でした。(テン:25、イタチ:1、アナグマ?:1、オーナー不明:1)イタチの糞はかなり流失していましたが、テンよりも比較的粘っこい糞なので落石にへばり付いていたものを足立先生が採取しました。食性は、動物のみ、動物+植物、植物のみがほぼ1/3の割合でした。動物は、主にネズミ、植物は、主にサルナシ、ツルウメモドキ、ウラジロノキでした。 行きにあんなに多くの目で探したにもかかわらず、この内、1/3近くは帰りに採取。一つ発見するとその側にまた発見。大人数で歩いたので帰りにこんなに多くサンプリングすることがちょっと意外でした。おそらく大人数で歩くと1サンプルを見つけると皆、そのサンプルめがけてダッシュしてしまい、じっくり集中して探せなかったのだと思われます。  私にとっては今回が3回目のテンモニ経験でしたが、これまでは雨の直後のテンモにだったこともあり、今回初めてテン糞の実物を見ることが出来幸いでした。(サポーター国安、鈴木)


小出俣林道

 ホンドテンモニタリング調査の研究者である足立さん他6名で小出俣林道のテンモニを行いました。小出俣林道は、東京発電調整池の手前の林道が崩落し、2月中旬に修復されました。林道崩壊地の修復に併せ林道に20センチ程度の砕石がしかれました。この作業の結果、林道の谷側の雑草や侵入してきた木本類も全て除去されました。林道谷川の護岸コンクリートもきれいになっており、テンがマーキングポイントとする「見晴らしの良い場所」が復元されました。このような状況でテンは、その好奇心旺盛さを発揮してサンプル採取が出来ると期待していましたが、結果は、東京発電調整池先まで調査したもののサンプルは見つからず、そこからは30センチ程度の積雪があり、調査終了時間との兼ね合いでムタコ林道へ移動しました。
 アニマルトラッキングについては、調整池手前の崩落地までは砕石が敷かれており雪もなく、実施できませんでした。(サポーター鈴木)


ムタコ林道

 ムタコ林道は、林道始点から秋小屋沢橋奥まで除雪されていました。林道新橋から先は前夜からの新雪があり、サンプル採取には条件が悪い状態でした。今回は、調査開始点(林道始点)から1,600メートル地点までの調査となりました。
 テンモニの結果は、テン8サンプルでした。食性は、ツルウメモドキのみが6、ツルウメモドキ+動物が2でした。サンプル採取した地点は、調査開始地点から新橋までが主でした。この区間は、雪解けが進んでおり、かつ前夜からの降雪の影響が少なかったのでサンプル採取が出来たと考えられます。ただし、このサンプルが2月14日に行ったの調査の後のサンプルとは言い切れず、12月下旬の根雪から3月の積雪期までは、テンの食性分析の誤差を払拭することが出来ないことを実感しました。
 ムタコ林道では、調査開始地点から1,700メートル地点までは雪解けが進んでおり、実施できませんでした。(サポーター鈴木)


大峰林道(アニマルトラッキング)

 高野さん、竹村の2名で、南ケ谷湿地のセンサーカメラのフィルム交換のため、アニマルトラッキングも兼ね、大峰林道を歩いた。ゲートまで車で行こうとしたが、路上の積雪が多くなり、入口とゲートとの中間くらいの場所から歩くことにする。歩き出して直ぐにミヤマホオジロ雄が現れた。少しゆくとアカウソ?雌が出現。コガラ、アオジ、エナガ、シジュウカラ、コゲラ、カケス等が次々現れ、にぎやか。仮称和田池のバイカモは半分くらいになり、荒れた感じがした。
 前日までに雪はかなり溶け、林道上を始め、ところどころで地面が顔を出していた。雪が締まっていたので、スノーシューを持っていかなかったがときどきズボっと足が沈むだけで、1月にラッセルしながら歩いたときに比べ比較にならないくらい歩き易かった。
 イノシシ、カモシカ、ウサギの足跡があったが、いずれも古いもので新しいものは無かった。南ケ谷林道との合流点手前の最後の登りから急に雪の量が増え、地面が出ている箇所が全くなくなった。南ケ谷林道から湿地に向かって降りようとすると、雪の中に腿までズボっと沈む。雪がないと判る凹凸が雪で隠れ、予想外の沈み方をするので、急な斜面に加え、歩きにくいことこの上なし。
雪をかぶったマンサク 定点撮影A 定点撮影B
 湿地は一面雪に埋まっていた。湿地の周囲を歩くが、膝から腿の深さまで雪に中に沈む。高野さんがセンサーカメラのフィルム交換をしたところ、水路沿いのカメラの目盛は33を示していたが、他はゼロ。センサーカメラ付近だけでなく、足跡は皆無。積雪期にはカモシカ等は別のルートを使うのか?フィルム交換後湿地の周辺を一周したが、湿地の中に足跡は見当たらず。ただ1箇所、通常ルートの上に、逆ハの字型の足跡が左右規則正しく続いていた。
ラッセルしながら林道に戻ると、足が沈まないので舗装道路を歩くような感じ。大峰林道を半分くらい下った場所で、キクイタダキ、コガラ、シジュウカラ、ヒガラ、コガラ、エナガの大群落に遭遇。林道の左右から飛び出し、道路脇の木に止まるので、ほんの4〜5m位の場所から観察できた。また50羽位のアトリの群れが木々の上を飛んでいった。
 小鳥は大峰林道の上部ではほとんど見たり聞いたりできず、半分より手前、ゲートから三分の一くらいまでが一番多かった。アニマルトラッキングはいまひとつであったが、小鳥の方は種類、数とも満足のいく一日であった。(サポーター竹村)


木の実豊凶調査の準備

足踏みミシンと格闘中


 赤谷の日で定例調査として行っている木の実の豊凶調査の準備として、壊れてしまったトラップの補修を行いました。必要な道具の買出しをして、その後、懐かしい足踏みミシンで縫い上げます。途中、網を縫う糸が不足してしまったため、一部次回に持ち越しとなりましたので、来月も時間を見つけて続ける予定です。(NACS-J出島)



写真/文:青木邦夫、竹村秀雄、国安俊夫、鈴木誠樹、藤田卓、出島誠一

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