2009年7月赤谷の日レポート

7月赤谷の日レポート(2009年7月4−5日)

エゾアジサイとヒメシジミ 羽化直後のトンボ(エゾトンボ科?)

ホンドテン・モニタリング

サルナシの若い果実

7月4日 雨見林道

 初日は、前夜の豪雨やそれ以前の雨の影響を考え、雨見林道の1ルートを調査することにしました。雨見林道は、昨年2箇所での人工林の伐採があったモニタリングルートです。テンの食植物マップの修正と併せて、期待感は少ないものの、サンプリングを行うことにしました。サンプリングは、青木さん、北原さん、林武さんが行い、食植物マップの修正は、平井さんと鈴木が行いました。
 結果は、テン4サンプル、内容物は、クワ2、クワ+動物1、サクラ1。なお、クワ1サンプルは、溜め糞が車に踏まれてバラバラの状態でしたので、実際いくつあったかは不明でした。サンプル数は、少ないもののこの時期のテンの食性を現しています。ただ、イチゴ類、昆虫類を含むサンプルがありませんでした。
 雨見林道は、調査年度ごとのサンプル数の変動が激しく、7月及び年間のサンプル数は、2007年は34サンプル/107サンプル、2008年は3サンプル/56サンプル、本年の赤谷の日は4サンプル/17サンプル(*7/23現在)となっています。雨見林道における調査年度ごとのサンプル数の変動要因としては、降雨(雪)量、共用林道としての車輌の交通量が多いことに加え、野犬が常に林道を利用していることも大きな要因として考えられます。特に野犬は、今回の調査時にも林道上で4頭の集団を確認しました。(サポーター鈴木)

雨見林道 食植物マップの修正

 雨見林道は、人工林の割合が多いルートとなっていますが、林道の林縁部は比較的明るく、食植物の多様性と数量は他のルートよりも豊かであると感じています。さて、昨年伐採された地点では、林縁部に多く見られたクワ、コウゾ、クマイチゴ、モミジイチゴの群落は壊滅的でした。一部に見られたクマヤナギも完全に消滅していました。この影響について、現段階で評価することは出来ませんが、今後気をつけてモニタリングしていきたいと思います。(サポーター鈴木)

ツルウメモドキの若い果実

7月5日 ムタコ林道

 ムタコ林道は、通常テンモニ調査をしている区間を延長し、0m地点から、標識の1.8km区間をすぎた橋をわたって、2km以上までの距離を歩きました。残念ながら、天候の影響もおおきかったせいか、テン糞のサンプルは発見できずに終わりました。
 かわりに、調査開始地点1km付近から先の植生(テンの食植物)が地図上にまだ落とされていなかったので、鈴木さん、藤田さん、私の3名で植生を地図にプロットしながら歩きました。ちょうど、テンなどの野生動物の重要な秋―冬の食糧となる、サルナシやマタタビなどのツル性木本が花盛りの頃で、林道沿いの植生分布や傾向を知るには、ベストなシーズンでした。
 前日に見た雨見林道とは、全体的にずいぶんと様子が違うように感じました。
その主なとことろは、
1.雨見では多かったマタタビが、ほとんど見られなかった(ほんの数株)
2.かわりに、ツルウメモドキが多く見られた。
3.そして、サルナシ、ツルウメモドキ、ヤマブドウがある地点に固まって見られた。(今年は、この3種は豊富に実をつけているようでした)
 ムタコの林道沿いは、冬の調査から、テンを含めてタヌキやキツネなど、多数の動物が移動経路として使っていることがわかっています。そのようなことからも考えて、このような1か所に集中した、動物の栄養源となる(逆に言うと種子散布を動物にも頼っている)ツル植物の分布の様相は、テンを含む動物がこれらの果実を食べ、フンをすることで、このような分布ができたのではないか?そして、これらの植物をまたテンや他の動物たちが利用する。このような関係を想像させられました。
 また、林道沿いにかなり距離が長く伐採されたエリアがあり、そこは、ツル植物ももちろん、少なくとも実をつける個体は全滅していました。私たちは、テンのサンプル調査を通じて、テンそのものの赤谷の生態・特徴を知るのではなく、赤谷の森の年々の豊凶や環境の変化や、生態系の関わりを知ることを目的としていますが、このような植物の分布の違いや伐採の変化がテンの行動にどのような影響を与えるのか?興味がいってしまいますね。
 同時にもちろん、いろんな種類のツル植物が生える環境というのは、必ずしも原生林に近いような環境にあるのではなく、人が手を入れたり植林した森の林縁などに多いでしょうし、同じ赤谷でも、林道によってこれだけその様子が違うのですから、テンモニ調査を通じて周りの様子にも目を配り、「人が手を加えた自然」の多様性のふしぎにも、もっと迫っていけるのではないか? テンモニ調査にそんな可能性をあらためて感じた今回の体験でした。(サポーター平井)

沢山実ったクマイチゴ クマイチゴの熟度を確認 モミジイチゴ

7月5日 赤谷林道・小出俣林道

 赤谷林道は北原さん、小川さん、青木の3名で調査しました。結果はテン3サンプル。内容物は、サクラが1サンプル、植物の特定は出来ませんが、動物+植物1サンプル、昆虫+植物1サンプルでした。
 このルートに限った事ではありませんが、今回の「赤谷の日」の前一週間の雨続きに加え、金曜の夜および土曜の夜の激しい雨で、ほとんどのサンプルは流されてしまったのだと思われ、調査中は雨に降られることはありませんでしたが、テンモニ調査においては最悪のコンディションだったと言えます。赤谷林道については、林道上が川のように流れた痕跡が随所にあり、3サンプル採取できたのが奇跡に近いような気もします。
 テンモニについては、確実に基本ルートを月に一度サンプリングを行う事になっていますが、今回の「赤谷の日」においての調査は、データとしては使えそうにありませんので、補完調査を行う予定です。こんな結果になることは、調査の前からある程度予測がつきますので、そんなコンディションの時には、思い切って「赤谷の日」においては、テンモニ調査を行わず、6名から9名集まっていただいて、別の日を調査日にあてる事も、今後考えた方が良いかとも思います。
 また、小出俣林道には藤代さん、茅野さん、星田さんが調査に入られましたが、サンプルは採取できませんでした。(サポーター青木)


南ヶ谷湿地の保全と調査

 今回、南ヶ谷湿地での土のう積みを、無事終了することができました。土嚢につめる土をどこから入手するかが決まらずにいましたが、近くの土を少し掘らせてもらって詰めることとなり、みんなで作業しました。この土嚢は水をせき止める目的のものではなく、現在の水路の状態を保つためのものになります。湿地の水の流出部分が、このまま放置すると崩壊する可能性があると判断され、その場合、湿地の水が大量に流れ出し、現在の湿地の状態が保てなくなることが危惧され、その予防策として実施しました。これからの経過も観察していきます。

モリアオガエルの卵塊 ウリノキ 羽化直後のトンボ(エゾトンボ科?)
南ヶ谷定点撮影A 南ヶ谷定点撮影B

↑左:定点撮影地点A  右:定点撮影地点B

 この際ですので、南ヶ谷湿地について少し紹介を(長くなって申し訳ありません)。湿地には多くの生き物たちが姿をみせます。たくさんのクロサンショウウオやモリアオガエル、アズマヒキガエルたちが産卵にやってきます。夏にはヘイケボタルの乱舞が見られ、トンボが飛び、湿地の植物はきれいな花を見せてくれます。
作業後の堤  こんな湿地ですが、水面の減少とヨシの進出が見られ、気になっています。4年ほど前にはクロサンショウウオの産卵が見られたという場所も、今は産卵がありません。今年はモリアオガエルの産卵場所に水がなくなってしまい、緊急措置として少し泥沼を掘らせてもらったわけです。なお、水の供給源は湧水で、絶えることなく流れ出ています。
 地元の方のお話から、この湿地、40年程前には水面の広がる池の部分が広くあったことがわかりました。今はモリアオガエルなどの産卵にも困ることがあるほど水が少なく、ヨシやスゲの原が広がっています。ミズゴケ、モウセンゴケの育つ部分もあります。周辺は40年ほど前、森林が皆伐されています。そこで、そのころ大量の土砂の流入があって池が埋まったのではと推測しているところです。今、簡単な土壌ボーリングや水位測定、水質測定などもおこなっており、人為の影響をどう評価し、湿地をどのように守っていくかを考慮中といったところです。人の影響による湿地の状態劣化を、少しでも緩和できたらと思うこの頃です。(サポーター和田)


土嚢設置作業

 土嚢を積む沢の左岸側、スギ植林内で土嚢用の土を採取しました。30cm程掘ると粘土層が出現しました。採取した土を詰めた土嚢は、予め設置しておいた下流側の丸太橋を利用して右岸へ運びました。水深は長靴に浸水しない程度ですが、1ヶ月前よりも30cm以上水位が上がりました。
 まずは、土が侵食であらわれているミズキの根元をふさぐように土嚢を埋め込みます。ミズキの根元へは、1/2程土を詰めた小ぶりの土嚢を丁寧に埋め込むように設置し、堤上流部の溝部には3/5〜4/5程度に土を詰めた土嚢を埋め込んでいきます。堤全体に水圧が強く掛からないように、土嚢間の隙間を程よく残しつつ、最後は上部の土嚢列の高さを整えて作業を無事に終了しました。堤設置作業で使用した土嚢は約50個となりました。今後は、土嚢内の土が流出・消失していないか、今回設置した堤下流側にもう1段低い堤が必要か、見回り・点検を行ないます。(地域協議会 松井)

土嚢に土を入れる 土嚢を詰める 作業後の記念撮影

木の実豊凶調査

トラップ設置中

木の実豊凶調査は、三国街道・ムタコ沢エリアチームと仏岩・川古エリアチームの2チームに別れて活動しました。三国・ムタコエリアについて報告します。川端さんを隊長に、今回はコナラ・ミズナラに種子トラップを設置し、調査研究を行っていらっしゃる農工大学の岩淵祐子さん(特任助教)に同行して頂きました。三国・ムタコエリアについて報告します。ムタコエリアはブナ・ミズナラ・トチノキの下にトラップを設置しました。
 トチノキは未熟な落果がすでに多数みられていました。ブナとミズナラは落果がほとんどありませんでしたが、他の木では落果のみられるところもありました。三国エリアは前回設置済みということで、回収に向いました。結果は以下の通りです。4本のブナのうち2本に落果がみられ、その他のブナ・ミズナラは全く落果はみられませんでした。
 A2ブナ:殻斗240 未熟16 虫喰い420
 A4ブナ:殻斗23  未熟3  虫喰い48
 その他、三国街道の途中、たくさんブナの落果をみかけました。これまで、数少ないサポーター活動の中でも、これほどトラップに落果がみられていたことは私自身は初めてで、「回収するものがあるって嬉しいなあ・・・」とあまり深くは考えずにそんなことを思いました。
 しかし、上を見上げると、ミズナラの葉が虫食いだらけで、スカスカです・・・葉脈を残して食べられています。ミズナラの木全体に広がっていました。そんなミズナラの木があちらこちらにみられました。これからどうなっていくのだろうか・・・と少し心配になりました。
 それにしても、岩淵さんのカエルをみつけた時に追いかけたあの敏捷性と、針金を切るときの大胆さに、さすが研究者!!と驚き、そしてとてもたのもしく思いました。ありがとうございました。また是非赤谷の日にいらして、たくさん教えてください。(サポーター瀧澤)


7月4日川古・仏岩シードラップ設定の報告をします。藤代、金井、星野、福田の4名が11時川古温泉到着。資材を林道入り口まで運ぶ。まず、川側のイヌブナ、ミズナラ各1本にトラップを設置した後昼食。その後台地のイヌブナ1本、ブナ1本、コナラ2本、クリ1本、ミズナラ1本にシードラップを設置した。イヌブナには少しの結実が見られたが種子の落下は全く見られなかった。コナラ、ミズナラの葉は虫食いが多く見られた。秋の結実が少ないのではないかと危ぶまれる。クリは花が多く落下していたので、結実が期待される。その後、仏岩に移動。イヌブナ3本、オニグルミ1本にシードラップを設置。イヌブナの結実は一部では見られるが、大部分は結実が見られない。オニグルミは部分的に結実が見られた。トラップの網がほつれており、応急処置でひもを通しておいた。(サポーター福田)

蝶類調査

 今回から、赤谷の森におけるチョウの分布状況を調べる活動をはじめました。草原性のチョウ・森林性のチョウの分布を知ることにより、蝶類相から見た赤谷の森の特徴を把握することを目的として、継続的に観察していきたいと思います。
7月4日 観察時間11:00〜15:00  天気 曇りと時々晴れ(雨上がり)
参加者は長浜さん、小林さん、小鮒の3名。観察場所は、川古駐車場から赤谷林道(2.5km地点)を往復しました。観察開始時は雨上がりでチョウの飛翔は望めないような気象状況であったが、昼すぎには時々晴れ間が出てきた、チョウ類は17種27頭を確認。林道の状況は露の湿り気の多く状態で、多くのヒルに悩まされた。
7月5日 観察時間8:30〜13:00  天気:快晴
参加者は小林さん、金井さん、川端さん、福田さん、米田さん、星野さん、松井さん、岩淵さん、小鮒の9名。観察場所は、牧場跡地(うだっぱら)にルートを定めて区間毎に観察、蝶の捕らえ方、見分け方を小林さんからレクチャーを受けながら観察。チョウ類は16種シジミチョウは大変多く数え切れないほど、その他のチョウは25頭観察できた。皆様お疲れ様でしたこれからもご参加お待ちしています。(サポーター小鮒)

うだっぱらを歩くメンバー うだっぱら ヒメシジミ♀

炭材集め

作成中!!


写真/文:青木邦夫、平井希一、福田耕二、竹村秀雄、和田晴美、鈴木誠樹、大坪信二、小鮒守、瀧澤信子、松井睦子、茅野恒秀、出島誠一

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