2009年6月赤谷の日レポート

6月赤谷の日レポート(2009年6月6−7日)

三国街道で集合写真

↑三国街道で集合写真。

木の実豊凶調査

 今回は参加者全員で、豊凶調査を体験する日。ルートとしては、三国街道三坂線の調査ポイントにしぼり、豊凶調査用トラップを設置しながら、そのまま三国街道を歩いて自然観察をするという試みになりました。人数が多いので、三坂線入り口で2グループに分かれ、登山路沿いのトラップ設置と林内を藪こぎしながらの設置を行いました。
 藪こぎ設置グループの最初の調査ポイントでは、上を見上げると何と対象のブナの木が枯れ始めていました。1/5程度の枝にしか葉は無く、残りの枝は丸坊主。これでは計測しても意味がないので、対象木を変更することになってしまいました。2個目のトラップを予定通り設置して、登山路に出るとちょうど登山路設置グループに合流しました。

設置するシードトラップの道具を持って準備 シードトラップ設置中 樹冠の様子

晶子清水〜三国峠・・・ツツジ

 三国街道からは、三国峠方面と大般若方面に別れて行動しました。。私は、6月に三国峠付近を歩くのは始めてで、春〜初夏の生き物の展示場のような自然を、長浜さんや松井さんの説明で楽しむことができました。おかげで先頭から最後尾は大分時間差があったようです。
 個人的にはツツジの種類の豊富なことに驚きました。この日に咲いている花を確認できたのは、サラサドウダン、アブラツツジ、ウラジロヨウラク、コヨウラクツツジ、ヤマツツジなどです。その他に別な時期に花を確認したのがトウゴクミツバツツジ、ホツツジ、バイカツツジ、別な場所で確認したのがムラサキヤシオ(小出俣山)、レンゲツツジ(南ケ谷湿地)、アズマシャクナゲなどなど。ツツジは特殊な土壌に耐えて育つ性質があり、それが理由なのか、日本海型・太平洋型両方の分布の中間地帯故なのか自分には説明できませんが、分布上からあるべきものはすべてある感じがしています。三国街道の新たな楽しみを見つけました。(サポーター川端)

ウラジロヨウラク コヨウラクツツジ
サラサドウダンツツジ アブラツツジ

↑上左:ウラジロヨウラク、上右:コヨウラクツツジ、下左:サラサドウダンツツジ、下右:アブラツツジ

晶子清水〜三国峠・・・タゴガエル

タゴガエルの卵とおたまじゃくし

 6月の赤谷の日初日、時々雨の降るあいにくの曇り空でしたが。川端さんを隊長に、豊凶調査のトラップ設置を体験しました。藪を漕ぎながら、マーキングしてある設置ポイントを探す作業は楽しいものでした。
 鳴き声の数をカウント記録していなかったため、はっきりしたことは言えませんが。今年はタゴガエルが産卵期に出す「クックックックク・・」という鳴き声が赤谷の森で多く聞かれたように思います。小出俣にある、東京発電のダム手前の湿気の多い林道わき斜面でもそうでしたが。三国路自然歩道でも地上に水の流れが無い涸れ沢含め、すべての沢でタゴガエルの鳴き声が聞かれました。
 後半は天気も回復し、日差しがでる度始まるエゾハルゼミの合唱も心地よいものでした。また、赤谷の日に集まった様々な人と歩くことによって、新しい発見や視点が得られたことが何よりの収穫でした。(地域協議会 長浜)



晶子清水〜大般若塚

 全員でトラップを設定し、三国街道に着くと、雪崩で亡くなった長岡藩士の墓の前に出る。その少し手前に三国峠への道と大般若への別れ道がある。ここで、三国峠方面へ向かうグループと大般若方面へ向かうグループに別れた。大般若グループは大般若までのなだらかな道をブナの実の生育具合、咲いている植物の種類などを調べながら散策した。ブナはおよそ半分ぐらいの樹で結実が見られたが、実が未熟のまま落ちているのも見られた。虫によるものか、強風によるものかは不明。
 途中で仔ウサギにも出会うことができた。大般若に到着後、少し休憩して17号線まで降りた。(サポーター福田)

タニウツギ タゴガエル ノウサギ

南ヶ谷湿地の保全と調査

 南ヶ谷湿地の周囲は新緑に覆われ、夏の近さを感じる風景になっていました。今月の活動は、湿地からの流れ出し水路の落差部分の補修用堰の新設、モリアオガエルの産卵に備え木々の下部の浚渫、水質測定、先月中井氏に湿地内に多数設置していただいた水位測定用の筒を利用した地下水位測定(新たに測定器を持参)、センサーカメラの新設・メンテナンス、と盛りだくさんでした。参加者は、赤谷センター:貝沼さん、NACS-J:藤田さん、サポーター:川端さん、大竹さん、福田さん、竹村さん、藤島さん、和田さん、前田の9名です。

レンゲツツジ 水生昆虫とイモリ 水位低下を緩和するために設置した堰

 湿地は、湿地西端の水深があるところを除いて、先月クロサンショウウオが多数産卵していたすべてのエリアで水が抜けてしまい、ただ湿っているだけとなっていた(地下水位も先月より最大で20cmも低下)。水のある湿地西端部も水位低下のため水際が相当後退して、かろうじて水が溜まっているという状態。当然湿地から浸み出している水量も大変少なくなっていた。
 湿地西端の底をタモ網でひとすくいしたところ、アカハライモリ1頭、クロサンショウウオ幼生1頭、マツモムシ2頭、それにヤゴ(4種類か)が約40頭も。周囲の水抜けにより、最後の水たまりに避難してきたのだろうか。モリアオガエルは水面にせり出した枝に卵塊を産み付ける。まもなく始まる産卵にそなえて、湿地北側と南側の昨年卵塊があった枝の下部を浚渫した。湿地底部の黒い堆積した広葉樹の葉のすぐ下にはスゲの繊維層が深部まであり、ドブのような腐敗臭が強い。その繊維層を縫うように葦の地下茎が不気味に伸びている。

定点撮影地点A 定点撮影地点B

↑(左)定点写真撮影地点A、(右)定点写真撮影地点B

 湿地水路の下流部には不気味な落差部分がある。これを放置したら落差部の崩壊が上流に向かい、いずれは湿地の水が完全にぬけてしまう可能性がある。この落差部に杉の間伐材で土嚢用の堰を作成。杭は藤ヅルを切り出して固定した。来月、ここに土嚢を入れてとりあえず湿地の延命をはかる予定。湿地3か所目のセンサーカメラを有蹄類の足跡があった通路に向けて設置。あと、今年は気のせいか、あちらの葉に、こちらの幹にイラガの幼虫が多いような気がする。
 水が抜けてしまったエリアにいたヤゴやクロサンショウウオの幼生、ヤマアカガエルのオタマジャクシはどこにいってしまったのだろうか。どこかで生き延びていることを願って。(サポーター前田)

作業前 作業後

↑(左)作業前、(右)作業後

ホンドテンモニタリング

小出俣林道

 6月7日(日)赤谷の日2日目に小出俣林道でホンドテンのモニタリング調査(テンモニ)を行いました。(調査メンバー:青木、平井、北原、林、鈴木)
 調査結果テン5サンプルを採取しました。糞の内容物から推定される食性は、昆虫のみ1サンプル、昆虫+鳥類1サンプル、動物のみ3サンプルでした。6月7日時点では、ベリー類は未だ未熟果が多く、ベリー類を含むサンプルはありませんでした。しかし、この季節特有の昆虫や鳥類を食したサンプルを僅かながら採取しました。動物(おそらくネズミ類)を食したサンプルもありました。さて、7月には、ベリー類は終わりに近く、また、昆虫類もそれを食した糞は雨に流され易く、そのような状況でどのような食性傾向になるかを想像しながら、調査したいと考えています。(サポーター鈴木)

林道で出会ったアサギマダラ 夏の重要な食植物であるベリー類の熟度を確認 テンモニ中

赤谷林道・ムタコ沢林道

赤谷林道とムタコ線のテンモニについて、サポーター藤代が報告します。赤谷でのサンプル数は6サンプル。うち2サンプルがイタチと思われます。内容については、昆虫食と植物食の混在?に見えました。ムタコは4サンプル。古いものが多く、内容物は判別できませんでした。
 道中テンのエサになるであろうアズキナシの開花を探しながら歩きましたが、見つからず。その代わり、赤谷林道でニセアカシアの花に群がるサルの群れに遭遇しました。花が甘くて天ぷらにすると美味しいと聞いたことがありましたが、サルが食べるている様子は初めて観察しました。また今年も赤谷林道のブナについて未熟の趣旨が大量に落としている個体がありました。虫食いのしいなが多いのですが、虫に食われたから落ちたのか、落ちたから虫に食われたのかは分かりませんでした。
サンプリング ブナの未熟種子 イタヤカエデの種子
 同様に気になったのは、イタヤカエデの未熟種子があちこちで落ちていたことです。例年そんなことはなかった…気がします。ただ私の記憶はあまりあてになりません。どなたか記憶のある方があればあとでこっそり教えてください。
 赤谷の谷も晩春の様相。ハクウンボク、ガマズミ、タニウツギなどの開花がみられ、アサギマダラが春の日差しと戯れており、季節の流れと命の躍動を感じることのできたテンモニでした。(サポーター藤代)


写真/文:平井希一、川端自人、長浜陽介、福田耕二、竹村秀雄、前田修、青木邦夫、鈴木誠樹、藤代和成、茅野恒秀、出島誠一

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