2009年5月赤谷の日レポート

5月赤谷の日レポート(2009年5月9−10日)

イワカガミ オオカメノキ アズマシャクナゲ カタクリの群落 フモトスミレ タムシバ ヤマカガシ フデリンドウ アズマヒキガエル

↑赤谷の森の春・・・画像の上にマウスを置くと種名が表示されます

南ヶ谷湿地

 今月は、南ヶ谷湿地保全活動を全員で体験する日を2日目の5/10に実施しました。
 5/10の湿地周辺には、湿原の周囲にはカタクリが咲き、湿地の中ではグーグーとアズマヒキガエルのガマ合戦(交尾)が繰り広げられ、湿地の池には、所狭しとクロサンショウウオの卵塊で埋まっていました。今回の活動は、全員で伐採予定の水源の人工林を視察し、地元の林元保さんから60年前の湿地様子を聞きました。その後、水質調査、サンショウウオの卵塊数のカウント調査、歩道修繕の4つの活動を行いました。

自然環境モニタリング会議委員の中井さん(自然地理学)からの解説 林元保さんから昔の様子を伺う。写真は炭窯跡 みんなで歩道の整備作業 検土杖で土壌の堆積状況を調べる

今回の南ヶ谷湿地保全活動で、湿地の貴重性や、湿地保全の問題点、課題をサポーター全員で共有することができたと思います。また、今回は、多くの方々が参加いただき、調査活動が湿地に悪影響を及ぼさないための歩道を整備することができました。暑い中の作業本当にお疲れ様でした。
 私が参加した60年前の南ヶ谷湿地の様子の聞き取り調査について、簡単に報告します。地元で子供のころから南ヶ谷湿地に行っていた林元保さんによると、60年前の南ヶ谷は現在のような湿地というよりは、池(現在の10倍程度の面積の池)だったということ、昭和4〜5年には、南ヶ谷湿地を水源とする手道集落(いきもの村周辺)の人が南ヶ谷の池の水を利用するために、湿地において水路を掘った(場所は不明)とのことでした。航空写真から、1970年代に湿地の水源林は皆伐されていた事実も考え合わせると、南ヶ谷湿地は様々な人間活動の影響を受け、その環境が大きく変貌した可能性があることがわかりました。
 また、湿地に生えているオオカサスゲは、昔はスゲ傘を作るための最適な材料で、赤谷周辺でも、ほとんど採れないため、わざわざこの南ヶ谷まで来て採取していたとのこと。今度、是非、林さんからスゲ傘作り(添付写真参照)を教わりたいと思っています。水をはじいてかつ、軽い素材は、このオオカサスゲだけで、しかもその生育地は限定されているとのこと。貴重なスゲを巡って、昔の人は取り合いにならなかったのか?と聞いてみると、昔の人は、それぞれの領分があり、その領分を守って自然を利用していて、人の土地で採取すること(抜け駆け)などは考えられない、とのことでした。昔の人は、周囲の自然資源をうまく配分して生活していたという一端を見た気がしました。(NACS-J藤田)

スゲを編む カタクリ カヤネズミの巣?確認中です 樹に掛けられたヒキガエルの骨

ヒアリング調査

 私達のグループは、南ヶ谷湿原の一昔前の状況と今との変化を林さんに教えていただきながら周辺を散策・調査をしました。50年ほど前は「一面が池」と呼べるくらい豊富な水場で、人里まで水を引くため水路を作成したそうです。以前は40p〜50pほど深かく、林道からも確認できるほどだったそうです。ヒキガエルの大合唱を聞き、カタクリを踏まないよう足下を確認しながら周辺を歩きました。湿地から下流へ300mほど下がり、どんな水路を作ったのか現地をたどりましたが、だいぶ年月も経って地形も変化しているようで、みんなで当時を想像しながら回りました。
 現在の湿原はカヤやヤナギが生育しています。生育している植物も年月によって場所を変えている様子で、湿原の周りにはウツギも多くありました。林さんから子どもの頃の暮らしを話して頂いた中では、家の手伝いのため山地からカヤを集めて運んでたそうです。カヤは、乾燥させても水分を吸わないため軽くて良いものでミノを作るには最適のものとのことでした。
 湿原には夏になればホタルが沢山いることも初めて知りました。四季の変化でどのよう顔を湿原が見せてくれるのか興味が湧いています。(サポーター清水川)

クロサンショウウオの卵嚢数調査

 クロサンショウウオの卵嚢数調査チームは、竹村さん、青木さん、鈴木さん、金井さん、と私(小林)の5人で調査を実施しました。私は今回が初参加であり、見る物すべてが新鮮で感動的でした。もちろん、クロサンショウウオについても同様で、卵を数えるのも初体験でした。残念ながら今回は成体は観察することはできませんでした。前日に、事前調査を行った竹村さんの報告では、約3000強の卵嚢を数えたそうですが、卵嚢が複数重なりあったり、膨張していたりして、正確に数えることは難しいであろうということでした。
 いざ、調査開始です。確かに水面下に白い卵嚢のようなものが多数見受けられます。重なり合って産んだであろう卵嚢が時間がたち膨張し、中には崩れだしているものもありました。クロサンショウウオの産み立ての卵嚢は長さ5cmほどの1対2房のアケビ状の卵嚢だそうですが、産卵から数日たっているものが多く前述の状態でした。ちなみにふ化までの日数は水温によって変化するようです。

クロサンショウウオの卵の様子 定点撮影A20090510 定点撮影B20090510

 竹村さんに記録をお願いし、他の4人で3つのカウンターを使ってエリアを決めてカウントしました。エリアごとの平均値をそのエリアの卵嚢数としました。数え易い卵嚢のエリアでは差はそれほどないのですが、密集して産卵されているエリアでは数十の差になることもしばしばで、膨張してしまった卵嚢数の調査の難しさを実感しました。今回の結果は約2400でした。カウント調査後、ある卵嚢を掬い卵の成長度合いを観察しました。直径10mm強の卵の中で幼生がクルクル動いていて、とても可愛らしいものでした。また、クロサンショウウオは、止水に産卵するのですが下の池から流れ出している小川にも数個、卵嚢がありました。これらは雨による増水で流れ出したものと思われます。
 その他、池の中ではヒキガエルが多数産卵行為をしていましたが、何者かに食べられ途中のヒキガエルの死体の残骸も複数見ました。(サポーター小林)


ホンドテンモニタリング

緑が濃くなり始めた林道

赤谷林道

5月9日の赤谷林道の調査は、鈴木さん、小鮒さん、林でした。前日夜半まで赤谷は雨だったようですが、9日は晴天の新緑の中でのサンプル収集でした。往路はほとんどサンプルを発見できず、昨夜の雨で流れてしまい今日はサンプルはなしかなぁ?と話しながらも「でも帰りはよく見つかるんだよな」そのとおり復路に8サンプルの採集ができました。しかし、新しいサンプルは採集できませんでした。やはり夜半の雨の影響があったと思われます。
 サンプリング中は、植物観察も同時進行。ハルリンドウの群生地を写真に収めたり、ヒキガエルとその卵、クロサンショウウオも観察できました。ヒキガエル、サンショウウオを写真に収めようとしたですが、落ち葉と卵のなかに隠れ撮影できませんでした。残念。(地域協議会 林武)

雨見・ムタコ

サポーターの金井さんと赤谷センター職員2名で、ホンドテンモニタリング調査をムタコ、雨見林道の2路線に入りました。残念ながらムタコ林道でのサンプルはありませんでした。ムタコ林道では、橋から少し奥の杉林の水たまりに、クロサンショウウオの卵塊を15個確認しました。雨見林道では、テンのサンプルが1個で食性は動物でした。状態はみずみずしく、当日朝のサンプルのようでした。(赤谷センター小川)

小出俣

***作成中***


初回講習会

 「赤谷の日」では、赤谷プロジェクトの活動に新たに参加されるサポーターの方々への初回講習会を定期的に開催しています。今月は、新たに加わった4名のサポーターの方々(大竹さん、大坪さん、小林さん、清水川さん)を対象に、初回講習会を実施しました。講師は茅野が務めました。まず、いきもの村たくみ小屋にて、赤谷プロジェクトと、赤谷サポーターについての詳しい説明を行いました。初夏を思わせる日差しを避けて、小屋の中で涼しく過ごしました。
 次に、たくみ小屋、村の家を案内し、備品や利用方法について説明をしました。その後、いきもの村を一周し、センサーカメラの紹介と活用方法、設置の実習を行いながら、テンモニを行いました。この日は前日の雨のせいか、いつもはサンプルがある県道と旧道の交差地点にもサンプルが見つからず、いきもの村のサンプル数はゼロでした。
 初回講習会では、いきもの村だけでなく、赤谷の森を知ってもらうことも重要です。後半は車に分乗して、三国峠のブナ林を紹介しました。旧三国街道三坂線を少し歩けば、ブナやミズナラの大木に出会えます。新緑のブナ林で、赤谷プロジェクトがめざす森林の姿を参加者の皆さんと議論しました。いきもの村への帰り道に、猿ヶ京関所資料館で公開中の『上越風土記』展を全員で見て、コーヒーをいただきながら、赤谷の森の歴史を語りました。
 三国峠では、スズメより少し大きく、喉が赤いノゴマ(♂)?を発見しました。赤谷の森では初認かもしれません。北海道への渡りの途中でしょうか?(NACS-J茅野)



写真/文:林武、清水川一義、小林茂男、前田修、竹村秀雄、小川純、茅野恒秀、藤田卓

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