2009年4月赤谷の日レポート

4月赤谷の日レポート(2009年4月4−5日)

クジャクチョウ キクザキイチゲ
クロサンショウウオ ニホンカモシカの頭骨

↑上左:越冬から目覚めたクジャクチョウ(赤沢) 上右:キクザキイチゲ 下左:クロサンショウウオの卵塊(南ヶ谷) 下右:ニホンカモシカの頭骨(赤谷)

ホンドテンモニタリング

 今回、赤谷の日1日目は全員で同じ活動をすることにしました。これには、各活動のノウハウや蓄積を共有することと、定番となっている活動を改めて全員で行い、この活動の魅力の引き出し方をみんなで検討することをねらいとしています。4月は、赤谷の日の定番活動「ホンドテンモニタリング」を全員で実施しました。


赤谷林道(〜オキフカホリ沢)

メンバー:鈴木さん、小鮒さん、和田さん、星野
 今回は、赤谷林道の調査ルートの半分(手前下流側)の調査を4名で行いました。前回3月の赤谷の日に雨見林道を歩いたときはテン糞サンプル0だったので、「テン糞、1個でも2個でも拾えたらいいなぁ。」と思いながら歩き始めました。出だしはテン糞は見あたらず、代わりに!?、カモシカの頭骨(小鮒さん発見)や谷中を移動するノスリに出会いました。しかし程なく歩いたところでテン糞発見!そこからは、嫌になるくらい?糞を見つけることができました。
 目立つ石の上にある典型的なサンプルが全体の半分位あり、ネズミやウサギと思われる動物食がほとんどでしたが、サルナシかマタタビらしき皮が見られる植物食のものもありました。時間がたったらしい古い糞でしたが、色が緑色っぽいものもあり、何故こんな色なんだろうと不思議に思うものもありました。糞に何が含まれているのかを見ていると、その動物の生息場所に何がある(いる)のか分かってきて面白いです。
 帰り道、クロサンショウウオの卵塊を確認し、ニホンザルの食痕と思われるウリハダカエデの枝を見つけ、行きに見落としたテン糞をいくつか拾いながら、まだ春には少し早い赤谷林道を後にしました。サンプル数は、テン糞11、不明3、合計で14サンプルでした。(地域協議会 星野)

ニホンザルの食痕のあるウリハダカエデを見上げる クロサンショウウオの卵塊 植物食のサンプル

↑左:ニホンザルの食痕のあるウリハダカエデを見上げる  中:クロサンショウウオの卵塊  右:植物食のサンプル


作業中

赤谷林道(オキフカホリ沢〜)

 ホンドテンモニタリングには久しぶりの参加でした。フンを探すのは難しそうなイメージを持っていましたが、プロセスを覚えれば作業自体はすごく簡単なことで、思ったより気楽な作業でした。さらに調査の時には、テンフンをみつけたとき以外は、一緒に歩いている方々と、植物や鳥の種類やエピソード、仕事、社会のことなどを話し、広い意味で社会勉強になりました。
 時には略語で話をされていて、難しいことを話しているようでしたが、尋ねれば丁寧に教えてくれて良かったです。簡単とは言え、骨の折れる作業をこれまで継続して実行してこられたのは、すごいと思いました。やっとテンモニに慣れてきたなという時のこと、「これはきれいな糞だね〜」という誰かのセリフに、「うん、確かに!」と、素直に同意してしまった自分にふと気が付き、少しおかしくて笑ってしまいました。(サポーター・林雄太)


小出俣林道

 小出俣林道の調査は、赤谷センターの田中さん、小川さん、貝沼さん、星田さんの4名と、NACS-J茅野さん、私(今井)の6人で行いました。そのうちの3人が調査者としては初めての参加でしたので、経験者のみなさんから事前に調査方法を説明していただいたり、調査中も標本の見つけ方のコツやこの調査の経緯などを教えていただきました。
 調査区間の前半で2標本を回収。それぞれ、ツルウメモドキの種子と動物の被毛から構成されているようでした。“中味にはいろいろなものがあるので面白い。”と聞いていたのですが、このようにはっきり判ると、たしかに中味が気になります。いつの間にか、“次のフンの中味は何か?”、“どのようにフンをするのか?”、“どんな生活をしているのか?”などと想像しながら歩いており、無口になってしまってました。
結局、この日の調査結果は上述の2サンプルのみで、私には見つけられませんでした…。早く「テンフンの眼」を持ちたいものです。(サポーター・今井)

カツラ カツラ カツラ

↑左:調査区間後半1/3ほどは林道上に残雪多く、区間終点はこんな感じでした。


ムタコ沢

*****作成中*****



南ヶ谷湿地

 平地ではサクラの咲く季節ですが、4月初旬の南ヶ谷はまだ雪の中でした。今回は、昔から地元にお住まいの林元保さんと、自然地理が専門の中井達郎さんが同行。所々黒く顔をのぞかせる湿地を見ながらうかがった林さんのお話は、とても興味深いものでした。以下に紹介します。
 昔、この湿地は菅笠の材料を取りに来た場所でした。材料とは、湿地に生えるカサスゲです。その頃(昭和30年代)ここにはもっと水があり、広く水面が広がっていました。今水面はわずかで、水溜りといった状態です。またカサスゲはもっとたくさんあったようで、今はヨシが茂っている部分で、昔はカサスゲが生えていた場所もあったようです。また2ヶ所ある湿地のうち小さいほうは、以前は水のたまった池だったそうです。
 昭和47年頃(1972年頃)には大型の機械での伐採が進み、伐採後の木も、ワイヤーをかけてそのまま引きずって運んだりしました。また昭和40年代は南ヶ谷林道整備の最盛期でもありました。1976年(昭和51年)の空中写真では周辺の森が広く皆伐された姿が写っています。

検土杖で調査中 林元保さんの話を聞く

左:検土杖で調査中  右:林元保さんの話を聞く

 林さんのお話からわかるのは、この40年たらずの間に、南ヶ谷湿地の様子が大きく変化したということです。またこの頃は大型機械の導入による大規模な森の伐採等のあった時期でもあったようです。これらの事実は今後の湿地保全を考えていく上で、大きな示唆となるものと思えます。中井さんは検土杖というもので地下90cmまでの土を調べました。黒や赤みがかった土の中に少し砂混じり部分もありましたが、もう少し本格的に調べたほうがいいのではとのことでした。また、湿地の水の流れ出しの最終部分に問題点を指摘されました。木の根に支えられてかろうじて保たれているらしい水の出口がもし崩壊した場合、湿地内の水が大量に流れ出す可能性があるといったことです。今の湿地の状態を保つためには、この部分に土のうを積むといった措置も考えられるとのお話でした。
 今回は地元の自然を知り尽くした方と専門的な目で見られる方を迎えて、有意義な一日を過ごすことができました。(サポーター和田)


自然誌調査

赤沢林道

赤沢林道の入口

 赤谷の森の中でもっとも延長の長い林道のひとつが、赤沢林道です。この道は、もともと脇に以前の「赤沢林道」があり、それは新治地区から四万温泉へ抜ける歩道だったようです。その道に沿って、1973年に営林署(当時)が車道を整備し、赤沢山から入須川まで抜ける道としたのが、今の赤沢(万沢)林道です。「赤谷の日」では、各エリアの春の訪れの様子を観察するため、赤沢林道を、入口から歩きました。メンバーは、今井さん、高野さん、星野さん、田中さん、小川さん、星田さん、茅野の7名です。
 この林道は北向き斜面が多く、春の訪れはまだまだという結果でした。それでも、フキノトウ、ヤナギ、マンサク、ヒオドシチョウにクジャクチョウが観察できました。残念ながら、入口から3km弱の鉄塔下のところから、積雪が多くなり、雪も緩んでいたため、それ以上奥へ進むのを断念しました。赤沢林道では、テンモニも行いました。通常ルートにしておらず、毎月のサンプル回収を行っていないためか以前のサンプルと新しいものが混在しており、3km弱で28サンプルという量でした。
 ちょうど12時前後に林道入口へ戻ったところ、ムタコ沢の直上でクマタカの旋回上昇を観察しました。気温が上がり、上昇気流に乗って気持ちよく飛翔していました。(NACS-J茅野)


昭和30年代の赤谷の森 2009年4月5日の赤谷の森

↑右:昭和30年代に撮影されたと思われる絵葉書。 右:絵葉書とほぼ同じ場所の現在の景観


保土野林道

 保戸野林道の自然誌調査を、金井さん、林武さん、北原さん、林裕太さん、鈴木さん、坂西さん、小澤くん、茂木くん、青木の総勢9名行いました。予想ではもう少し春が進んでいると考えていたのですが、フキノトウとヤナギが芽吹きはじめたくらいです。
 そんなことで、目に付くのがテンフン。普段調査をしていないルートということもありますが、29サンプルを採取。内容物のバリエーションも多く、初日の全体活動としてのテンモニ調査よりも内容的に充実した調査になりました。サンプル数が多かったため、沢山の人にサンプル採取を体験していただけたと思っています。特に生徒に模範を示すかのように、真剣に作業をしていたサポーター坂西先生の姿が印象的でした。
 その他の自然誌ですが、蝶類ではテングチョウ、ヒオドシチョウ。鳥類は、シジュウカラ、ミソサザイ、ウソと他の林道と同様に少ない状態でした。4月25日、26日とサポーター企画のギフチョウ調査が行われる予定になっています。それに向けてウスバサイシンなどの発芽の状況も見ておきたかったのですが、時期が早く、確認はできませんでした。(サポーター青木)

崩れた岩 サンプリング中 ツルウメモドキのサンプル

↑左:崩れた林道沿いの岩 中:サンプリング中 右:ツルウメモドキのサンプル


写真/文:星野理恵子、和田晴美、青木邦夫、平井希一、今井英夫、竹村秀雄、茅野恒秀、出島誠一

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