2008年11月赤谷の日レポート

11月赤谷の日レポート(2008年11月1−2日)

三国街道の様子(11月1日) ムタコ沢の様子(11月1日) 仙ノ倉とエビス大黒(11月2日)
ツキノワグマのつめ跡 ニホンリスの巣 ミズカマキリ エゾユズリハの群落(小出俣漸伐試験地)

上段:(左)三国街道の様子、(中)ムタコ沢の様子、(右)赤谷の森稜線部の様子
下段:(左)ツキノワグマのつめ跡、(中左)ニホンリスの巣、(中右)ミズカマキリ、(右)エゾユズリハ

木の実豊凶調査

【豊凶調査結果】(成熟、未熟、虫害など全ての計で、対象樹種1本当たりの数)
(07年/08年)

ブナイヌブナコナラミズナラクリトチノキ
7月8.8/3.50/00/3.00/2.40/03.0/16.0
8月0/0.34.0/0.621.2/26.412.5/12.40.3/00/0
9月2.3/0.21.0/039.8/20.013.5/2.80.7/00/5.0
10月0.2/0.20/048.8/ 9.631.5/ 4.43.7/21.70/0
11月0/00/063.4/ 3.825.8/ 2.01.0/ 1.00/ 0
12月0/-0/-2.0/ -0/ -0/ -0/ -
11.3/4.25.0/0.6175.2/62.883.3/24.05.7/22.73/21

08年度の豊凶調査結果

 08年の豊凶調査は今月(11月)で終了します。10月までの回収状況を見ていると、木の実の落果のピークは過ぎ、12月まで落果することはほとんど無い、あっても誤差の範囲と思えます。11月の回収結果までを集計しました。昨年の調査とは対象木の種類や本数に違いがありますが、簡単に比較できる範囲で以下に紹介します。
 ブナ、イヌブナは程度の違いはありますが、2年続けて凶作と言って間違いないと思います。コナラ、ミズナラについて、昨年は10-11月に落果のピークがあるので、豊凶は別にして成熟落果があったことは確かです。それに対し今年は落果のピークが8月にあり、ほとんど未熟で落果したことが分かります。トラップ対象樹でみると、今年の豊作はクリのみとなり、山の動物には昨年に増して厳しい年になるかもしれません。いや、街の人間にも厳しい年ですが・・(サポーター川端)


最終日なのでトラップを回収 みんなで種子を仕分け中 カウントしたコナラのドングリ

↑左)最終日なのでトラップを回収  中と右)回収した種子をみんなで仕分けしてカウント。その場でPCに入力しています

◆仏岩新田沢、川古台地、いきもの村 (サポーター坂西、福田、川端、地域協議会 松井、NACS-J出島の5名で実施)  仏岩・川古の豊凶トラップについて内容物とトラップの回収を実施しました。ほとんどのトラップが落ち葉のみの内容のため、その場でカウントして終了という状況でした。川古台地では紅葉がきれいで、皆で鑑賞しましたが、紅葉では空腹は満たされません。堅果以外の果実の豊作に期待するしかありません。(サポーター 川端)

◆三国・ムタコ沢(サポーター赤澤、中澤、中馬、尾瀬高校 小竹、地域協議会 星野の5名で実施)  三国・ムタコ沢に今年最後の回収に向かいました。三国に向かう途中、標高千メートル辺りの紅葉が見頃でした。路上で多くの人が足を止めていましたが、今年はあまり色がきれいに出ていない、ということです。よく見ると、黄色があまり良くないようでした。トラップ内容物は、ミズナラが三国で成熟・殻斗が1ずつ、ムタコ沢で成熟・未熟がそれぞれ3,殻斗が2、という結果でした。その他の樹種は、トラップに入っていませんでした。今年最後の調査なので、トラップの回収も行いました。ムタコ沢では、1カ所トラップが支柱ごと倒されていました。近くに足跡が残っていたのですが、何者か特定できませんでした。(地域協議会 星野)


炭焼き準備

木酢用の煙突設置

↑左:煙突の取り付け作業  中:煙突の支柱は間伐材  右:ご協力頂いた笛木さん、桑原さんと記念撮影

 これまで、いきもの村で3回の炭焼きを行ってきましたが、木酢の採取はしていませんでした。毎回、モクモクとでる煙を無駄にするのはもったいないので、木酢をとるための煙突を設置することにしました。入須川にある桑原板金さんにお願いをして、永井宿で炭焼きを続けていらっしゃる笛木さんの窯と同じような煙突を作製して頂きました。今回は、出来上がった煙突を炭窯に設置する作業を行いました。
 また、炭窯の位置がゆるやかな傾斜の下に位置することから、炭窯内に水分が多くなるという問題がありました。そのため、炭窯ないにグレーチングを敷くことと、炭窯の前に側溝を掘るという対策を行いました。

側溝 側溝 木酢液を採集する仕組み

いきもの村の冬支度

蒔き割り 蒔き割り

 いきもの村で暖をとるのに薪は大切な燃料です。空いた時間に冬支度として薪割りをしました。蒔き割りは、力任せでもできてしまう作業ですが、いかに効率的に、余分な力を使わないで行うか?という塩梅は難しく、なかなか奥の深い作業です。皆さん楽しそうに作業をしていました。(NACS-J出島)


ホンドテン・モニタリング

 11月の赤谷の日は、天候にも恵まれ、穏やかな日でした。
 テンモニ調査の1日目は、ムタゴ沢林道と雨見林道に入りました。尾瀬高校の学生さんも1名加わって、総勢5名で賑やかにフンや周りの植生を調べました!テンのフンは、ほとんどがサルナシで、なかには新しいものもありましたが周辺の木を見ると、少なくても人の目が届く高さの範囲では、もう実はすべて落ちたり食べられたりして見られませんでした。ツルウメドモキはまだありましたが。
 他のエリアでも見られたようですが、温かかったせいか、テントウムシなどの昆虫が活動しているのが見られました。赤谷の今年のこの時期、なぜか紅葉はあまり鮮やかでなかったですが、ムタゴ沢には、イタヤカエデやアブラチャンなど黄葉する樹木も多く、レモングリーンや明るい赤色に色づいたミズナラとあわせて、なかなか美しかったです。雨見林道でもツルウメドモキの実は目立っていましたが、今のところテンは、それよりも美味しいサルナシに集中しているようですね。

ムタコ沢でサンプリング 赤谷林道メグスリノキ 雨見林道で記念撮影

↑左:ムタコ沢でサンプリング中  中:メグスリノキ  左:テンモニ隊で記念撮影(雨見林道)

 2日目は、赤谷林道を調査しました。赤谷林道でも、もうサルナシの実は、林道を歩いて見た限りでは、実はすでになくなっていました。こちらでも温かかったせいか、ヤマアカガエルや昆虫類が陽だまりの中に活動していました。紅葉はあまり鮮やかでなく、例えばメグスリノキも、レモンイエローから薄紅色までグラデーションが1本の木の中でもありました。ここでも、マルバカエデやウリハダカエデ、オオバクロモジ、ブナなど黄色〜黄色みを帯びたオレンジ、茶色などの葉っぱはそれなりに美しく、赤谷林道の秋を彩っていました。パステルパープルの実が目立つムラサキシキブが多かったですが、少ないですが同じ仲間のコムラサキらしき個体も見つけました。

ヤマアカガエル サンプリング ムラサキシキブ

↑左:ヤマアカガエル(?)  中:メグスリノキ  左:テンモニ隊で記念撮影(雨見林道)


ネズミ調査

ヒメネズミを計測中 ネズミの食痕

3日目、赤谷の日と別に、足立先生に同行してネズミ調査をお手伝いしました。前日の赤谷の日に、小出俣林道のカラマツ漸伐地から、上の方のスギ植林地までシャーマントラップという捕獲箱を一定間隔で設置していたので、その回収・測定などです。
 斜面は結構急で、登るのもひと苦労でした。目論見通りというか、スギ植林地にはネズミはかからず、下方の漸伐地には3個体のネズミがかかりました。アカネズミ2匹にヒメネズミ1匹でした。アカネズミとヒメネズミは一見すると同じように見えますが、間近で観察すると、地上性と樹上性の棲み分けの違いによる後足の大きさや足裏形状の違いなど、よくわかりました。漸伐地は、8月にもレポートしたように、地面近くにはケチヂミザサやイチゴ類が覆い、周囲もドングリのなる木ややカエデ類など食料となる植物も多く、隠れ家も多そうなことからネズミが多く生息していそうなのはうなずけます。ただ、スギ植林地にも写真のようなネズミの巣も見られました。トラップ回収時に既に死んでしまっていた2個体は、足立先生によると、夜中に捕食者がトラップの中のネズミを狙って来たため、そのショックで死んだのではないか?ということでした。確かにトラップの上部にそのような形跡がありました。林道沿いにはテンの糞は少ないですが、果たして正体はテンなのでしょうか?

左:スギ林のネズミの巣(手前にクルミの食痕)、右:ヒメネズミの体重計測中↑

サンプリング結果

さて、テンモニの結果概要です。
ムタコ林道(1日目)テン16サンプル・・・・・・食性:全てサルナシ
雨見林道(1日目)テン5サンプル・・・・・・・・食性:サルナシ4、動物1
赤谷林道(2日目)テン7サンプル・・・・・・・・食性:サルナシ6、サルナシ+ヤマブドウ1
小出俣林道(ネズミ調査後)テン1サンプル・・・・食性:動物1
(サポーター鈴木、平井)


南ヶ谷湿地

 1日目の調査・作業は、NACS-J藤田、サポーター竹村、小鮒、坂口、前田、加えて、尾瀬高校から2名の方が参加しました。湿地の水源の再確認、また、湿地内部の植生・アシの生育分布調査、先月に引き続きハンディGPSを利用して水温測定場所のポイント設定などの調査を行った。
 天気:曇り、気温13℃と肌寒く、水温は8℃から9℃で手を長くつけていることができない。湿地の水位は先月と比較して驚くほど低くなっており、先月までは空を映してトンボ類が産卵していた岸近くの多くがぬかるみ状態へと変化していた。先月に引き続き、クマの糞があちらこちらにある。内容物は、おもにクリを食していたと思われる練り餡状態から、マタタビやサルナシの種が多く混ざったものにかわっている。
 先月、けものの足跡が多くある道に向けて設置したセンサーカメラの電池・フィルムの交換を実施。(後日現像したところ、多くのクマはじめ、ホンドテン、イノシシ、ハクビシンなどが写っていた。われわれが調査で行き来している道は、なんと複数のけもの達の幹線道路だったようです!)

オオアオイトトンボ 定点撮影A 定点撮影B

 2日目は竹村、前田で湿地内の水流確認や湿地周囲の観察を行った。湿地までの大峰林道往路、車をあまり意識しないヤマドリ3羽が道端で採餌。11月はじめに寒波が襲来したにもかかわらず、湿地内ではオオアオイトトンボが数頭飛翔し、小さなハエなどを空中で捕食し、また、ヤンマの仲間が1頭ゆったりと湿地上空を飛翔・ホバリングしていました。
 休憩場所近くのマユミが開花。その根元近くの倒木におおきなシイタケ多数。湿地周囲ではコマユミ、ツリバナが赤い実を結実。湿地内のアシの群生地域で水流の確認のために流れを遡っていると、4〜5mの範囲でアシが刈り取られたエリアが数か所出現。アシは膝高あたりでななめに切られている。春先にシカが若芽を食べたあとだろうか。それらのエリアからはいくつかの踏み跡(けもの道?)がついている。湧水が湿地に流れこんでいる湿地東部には、何本かのヤナギの仲間が水中に根をおろしている。土砂の流入により、近い将来、陸に遷移していくのだろうか。
 湿地からの流れに沿って、いきもの村方向へのルートをしばらく下ったところ、あちこちに葉がついたままの枝が散乱しており、周囲を探すと必ずクリの木。そして、そのすべてにカラスの巣のようなクマ棚ができている。
 湿地上部の林道では、陽が当たる枯れ草のなかにリンドウが開花しており、周囲をぱっと明るくしていた。紅葉の美しいピークは過ぎていたものの、湿地周辺の草木は赤や黄に染まり、カメラをどこにむけても絵になってしまう。落葉の音だけがする陽だまりで一日中読書をしていたい暖かな日でした。夏場、湿地にいたモリアオガエルやクロサンショウウオはこの時期、どこに行ってしまうのだろうか。近く予定されている周囲の杉林の間伐によって湿地はどう変わるのか。などなど今後も調査項目が山積みである。(サポーター前田)



写真/文:鈴木誠樹、竹村秀雄、平井希一、川端自人、松井睦子、星野理恵子、前田修、出島誠一

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