2008年10月赤谷の日レポート

10月赤谷の日レポート(2008年10月4−5日)

イカリモンガ 秋の木漏れ日 夕景 ツタウルシ

(上左)アザミを吸蜜しているイカリモンガ (上右)秋の木漏れ日 (下左)いきもの村からの夕景 (下右)色づき始めたツタウルシ


木の実豊凶調査

回収の様子 ミズナラの果皮を半分にした食痕 犯人はリス? オニグルミの周辺はリスの食痕が多数

 前月と同様に2グループでトラップ捕獲物回収に回りました。今月の全体の集計結果は以下の通りです。10月までの累積を昨年と比べると、クリ、オニグルミを除いて全て少ないです。特にコナラ、ミズナラの昨年は、10月まで未熟が多かったのですが、今年は未熟の落果が少ないのが目立ちます。このままだと11月に成熟落果のピークが来ないような気がしています。
 ただし、ブナについてはトラップには入っていないが、周辺には落果があるという回収時の情報があります。これが単に確率的な偶然なのか、小動物などによる影響なのか、継続的な注意が必要と考えています。(サポーター川端)

樹種 ブナ(低標高6本)ブナ(高標高4本)イヌブナ(5本)コナラ(5本)ミズナラ(5本) クリ(3本)トチ(1本)オニグルミ(1本)
回収種子合計数
(成熟、未熟、シイナ、虫害の合計)
1 0 0 48 22 65 0 1

ホンドテンモニタリング

1日目は、小出俣林道、雨見林道+ムタコ林道。2日目に、赤谷林道、いきもの村(初回講習会)の調査することが出来ました。

ムタコ林道でのサンプリングの様子

サンプリング状況

1.小出俣林道(サポーター金井、北原、鈴木、地域協議会 林の4名で実施)
 テン6サンプル(内容物:サルナシ4/サルナシ+動物2)
 6サンプルは、調査終了地点でよく溜フンが見つかる場所で5サンプル、その周辺で1サンプルでした。小出俣林道は、常にサンプル数の少ない状況が続いており、今回も調査ルート全体を通してのサンプリングはできませんでした。

2.ムタコ林道(サポーター青木、平井、NACS-J大野の3名で実施)
 テン15サンプル(内容物:サルナシ12/ミズキ1/ヤマブドウ?1/動物1(ヒミズ又はモグラ)
 ムタコ林道では、昨年来サンプル数は常に10以下と低調でしたが、なんと今回は15サンプルを採取しましました。しかも、設定ルート場のどこに集中しているということもなく、ルート上でほぼ満遍なくサンプリングされました。今年、これまでサンプル数が少なかったムタコ林道調査地で、どうして、10以上ものテン糞があったのか、その理由はわかりません。あえて想像するなら、調査ルートの林縁にはサルナシが豊富に実っており、これを目当てに調査ルートにテンが一時的に戻ってきたと推定されます。

サルナシ 3.雨見林道(サポーター青木、平井、NACS-J大野の3名で実施)
 テン1サンプル(内容物:サルナシ1)
 ムタコ林道で、15サンプルを採取した3名の調査隊員は、今年も順調にサンプリングできている雨見林道では20サンプル以上は採取できるのではないかと意気込んでルート上を注意深く調査したそうです。しかしながら、テン1サンプルにとどまりました。こちらはなぜ1サンプルのみだったのか?これも不明です。

4.赤谷林道(サポーター北原、福田、鈴木、地域協議会長浜、坂西の5名で実施)
 テン23サンプル(内容物:サルナシのみ21/サルナシ+動物2)21のサルナシのみのうち6サンプルは、かなり新しく前夜のものと思われました。

5.いきもの村(初回講習会)
 0サンプル

 10月赤谷の日の調査結果としては、食性は、植物食が多く、各ルートともサルナシ食に特化していることが判りました。過去3年間の調査を通じて、各ルートとも10月から11月は、特にサルナシ食が多いことが、判ってきました。(サポーター鈴木)


サルナシのサンプル

ホンドテンの食植物マップからの観察

 私は初日のみ、ムタコ林道と雨見林道のコースに参加しました。先月ー今月の間に作成しておいた、主にテンの食植物のマップを手に、その結実状況も含めて見ていきました。

(1)ムタコのコースは、テン糞が多かったため、主にそちらを探すのでいっぱいでしたが、新たに、サルナシ・ヤマブドウ・ツルウメモドキの実が目立っていたので、新しいポイントを見つけることができました。どれも、道と人工林が接する場所の近くで、とくにツルウメモドキの実がたくさん成っていて、遠目で見ても、スギの一部が黄色く見えるのが印象的でした。一定面積当たりで見られるテンの食植物の密度では、ムタコがほかよりもかなり高いようです。


(2)雨見林道も、同様に人工林の近くの道上には、マタタビやサルナシの熟した実が落ちていて、近くを見ると、スギの梢の上の方に、かなりたわわに実がなっているのがわかりました。どちらも、良く糞に見られるサルナシなどのツル植物が、人工林の切れ目である道沿いの林床でスギなどに巻き付き、林冠部まで延びて光を得て多くの実を付けている様子が、改めて確認でき、印象に残りました。
 同じような場所は、自然林に近い状態の二次林などでも、沢の近くなどで良く見られます。ムタコの場合は、その両方が隣接しているので、そのせいもあって多いのでしょうね。

 テンの糞を通して、テンの食植物・動物の生息状況と赤谷の森林や地形の違いとの関連は?種子散布者として、テンもどれ程関わってるか?など、やってみると興味あるテーマは尽きず、拡がっていきます。こんな面白い活動に、皆さんもぜひ参加して謎解きしてみませんか?(サポーター平井)


南ヶ谷湿原調査

 めっきり冷え込んで、湿地までの林道両側には、ススキの穂が金銀に輝き、キタキチョウが少なくなったハギの花で吸蜜をし、多くのイカリモンガが蝶のように背の高い草の上を舞っている。陽だまりではヒョウモンチョウの仲間やルリタテハ・アカタテハがせっかちな飛翔をくりかえしていた。

クマ剥ぎを観察中

 林道から湿地に下った時、クマのまだ新しい糞を見つけみていると、50mほど向こうで何かが移動する草すれの音がし、足元には直径3〜4cm、長さ2m程の幹から剥ぎとられた真新しい栗の枝が数本散乱。どうもクマの食事の邪魔をしてしまったらしい。今年、栗はよく実っている。湿地周囲には数本のクリの木があるが、その下には空になった多数のイガが散乱し、少し離れた所には、よくこなれた糞(合計6箇所)が・・。湿地の南側ではちいさなクマ棚もできていた。また、杉の表皮が地面より1m位からバナナの皮をむいたようにめくりおろされ、木部に細かい食みあとが多数。これはクマ・シカのいずれによるものかと暫し討論。
気温25℃。先週の全国的な11月中旬並の低温によるためか、湿地の葦はほとんどが枯れていたが、ヤンマ類がまだ産卵行動をしていた。湿地内部の浮島では、ウメバチソウの花が地味な湿地をぽっぽっと引き立てている。土中の洞にクロスズメバチが巣を作っており、足音の振動で多数の蜂が煙のように巣から出てきて、おおあわて。湿地から流出する沢を渡れるように寝かした丸太のあっちとこっちには、はっきりとしたけものみち。これに向けてセンサーカメラを設定。

 今月の調査は、(1)湿地水源とGPSによる湿地の全体形の確認 (2)水生昆虫等の調査を中心に行った。湿地には、北側と南側の2方向から小さな沢水が流入しており、その水源はどこかと調べると、何と、水源のすべては、湿地のすぐ東北側、林道との間のわずかなエリア(間伐予定の杉林内)に集中。今後は、間伐が水源と湿地双方へどのような影響を与えるのか検討・調査をすすめていく必要性を感じた。水温は、水源:9.5℃、湿地岸:日陰部15℃前後、ひらけた日向部20℃〜。水中昆虫の調査をしていると、クロサンショウウオの幼生(体長3〜4cm)にまじって、初夏にモリアオガエルの卵塊が多くあった水域ではイモリが多く網に入る。複数種類のヤゴ、小さなゲンゴロウ、コオイムシの仲間などを採取。また、巻貝と5mmほどの薄い貝殻の二枚貝の存在もわかり、これがホタルの餌になっているのかとワクワクする。(サポーター前田)

定点撮影 クロスズメバチの巣 ツキノワグマの糞



写真/文:鈴木誠樹、平井希一、前田修、竹村秀雄、川端自人、出島誠一

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