2008年5月赤谷の日レポート

5月赤谷の日レポート(2008年5月10−11日)

カタクリの群落 ガマ合戦

↑赤谷の森の春・・・左:カタクリ、右:アズマヒキガエルのガマ合戦


 天候に恵まれず、思ったフィールドワークがなかなかできない2日間でしたが、テンモニ(小出俣、ムタコ、雨見、いきもの村)計11サンプル、豊凶調査(いきもの村を除く24本の対象木にトラップを設置)、南ヶ谷湿地(生物の生息記録)、いきもの村近くのカラマツ・広葉樹混交林で植生調査(20m×20mの調査区を2つ設置)、たくみ小屋と村の家の整理整頓を行いました。(NACS-J茅野)


ホンドテンモニタリング&自然誌

 1日目は、小出俣林道のテンモニのルートに沿って、テン糞のサンプリングをしながら、足立先生がマップに落してくれたテンのエサになる可能性のある植物(おもにサルナシ)の場所や、その付近の樹木等の植生を一緒に確認してみました。テン糞を探しながらですので、あくまで目にとまった植生や花などの様子です。
 小出俣林道は、ほぼ北北東向きに歩くルートで、右側に小出俣沢があり、左側は小出俣山から派生する峰の尾根筋の末端の斜面になっており、地質も固まってないせいか所々崩壊しているような場所もあります。ゲートから500m程度までは、スギに混じって、まるで里山のような、ニワトコやアカシデ、コナラやカエデ類が良く見られます。500mすぎた所の右側谷筋に向かっては、地図に記されたサルナシの大木が、ハルニレの下に寄り掛かるように生えていました。周りにはサワグルミ、ハルニレ、タニウツギ、アワブキ、テツカエデなどの樹木が見られます。さらに1000mすぎまでの道では、左側はスギ林に混じって、雑木林が見られ、アカシデ・サワシバ・フサザクラ、ヤマモミジ、コシアブラ他など多様な樹木が見られますが、斜面の上でなかなか観察できるものが少ないです。崩壊という外乱要因を繰り返しながら、この樹林構成はどの様に変化していくのか、記録するのも面白いと思います。林道沿いにはモミジイチゴやクマイチゴなども良く見られました。一方、右側には、谷筋と反対側の斜面の植生が見渡せるビューポイントがあり、スギ林とそれ以外の自然林がモザイク状になった西向きの斜面を観察できます。自然林にはざっと見ただけでもブナ、ミズナラ、コナラ、トチノキ、ホオノキ、イタヤカエデ、ウリハダカエデ、アカシデ、カツラ、ハルニレなど結構な高木となった樹木が並び、左側の東向き斜面より林床は"明るい"感じです。林床の植物や動物などの生息・活動状況も左側斜面とは違いそうに思いました。この辺りから崩壊地、貯水池の辺りまで、結構サルナシは多く確認はできました。
 カラマツの漸伐地の付近は足早に通り過ぎてしまいましたが、ツリバナのつぼみの近くにシロトラカミキリを見つけました。寒くてあまり動けないようでした。漸伐地の植生変化の様子も興味ありましたが、斜面が急なのと伐採した枝がバリケードのようになっていて容易に観察できないのは残念です。

トチノキの大木 センサーカメラ設置中 サカゲイノデの群落(芽吹いたばかり) イタヤカエデの大木

 ゲートより2000m辺りから先は、林道沿いはスギ林ですが、下にはあまり目立たなかった樹種なども加わってきて変化があり、面白いエリアです。今の時期はアブラチャンやオオバクロモジの花盛りでした。ほかにハウチワカエデの花もまだ見られました。他にはミヤマガマズミ、オトコヨウゾメ、コアジアサイ、ミヤマニガイチゴなどのつぼみもありました。ほかにもアオダモやマルバマンサク、ハクウンボク、リョウブ、ウラジロノキなどの木が林道沿いを歩いただけで見ることができ、話題に事欠きません。ただこのエリアは、もっと広範囲で左右の地形や植生の違いなどを見るともっとたくさんのことがわかるでしょうね。もしかすると、昆虫などの調査・観察区域としても面白いかもしれません。

小出俣沢左岸側の植生 漸伐地のシロトラカミキリ ウリハダカエデ雄花の開花

 最後に、千曲平までの渓畔林を歩きました。途中の斜面では、ハイイヌガヤの花盛りでした。この時期に見られるんですね。ここの森の中に入ると、本当に癒されます。トチノキやカツラ、イタヤカエデなどの大木が渓流沿いに立ち並んでいます。また、チドリノキの花盛りでした。ゆらゆらと垂れ下がる雄花がとても目立っていました。ほかにサワグルミ、キハダ、フサザクラ、ヤマモミジ、アブラチャンなどの樹種も見られました。林床にはシダ類が繁茂し、ミヤマベニシダとサカゲイノデが確認できましたが、とくにサカガイノデは多く、ちょうど芽ぶきの時期で丸まった葉の先が起き上がろうとして、リズミカルな森の様子を醸し出していました。また、コチャルメルソウもたくさん咲いていました。

ハイイヌガヤの雄花の開花 コチャルメルソウの開花(背景はサカゲイノデ) チドリノキの花盛り(写真は雄花)
ズミの開花 ニホンベニコメツキ 形が印象的な、シシガシラの芽ぶき

 2日目は、生き物村上方の、カラマツ林の調査を行いました。林床には、スギの葉のようにも見えるシダ(たぶんヒカゲノカズラ)がたくさん生え、カエデ類やコアジサイなども見られる、まあまあ樹種の多い森林でした。20m四方の区画を作り、樹種と位置などを記録していきました。
 帰りの道では、フジの花が咲き始め、ズミの花が満開でした。エゾノコリンゴではないか?という話も出ましたが、葉っぱに切れ込みのあるものも見つかり、ズミでした。ズミの花には、ニホンベニコメツキがいました。ベニボタルの擬態で幼虫は肉食で森の中の朽木の中で他の虫を食べて育つそうです。この道沿いは距離は短いですがイチゴ類も数種類見られ、またシダ類もイヌワラビ、オクマワラビ、イヌガンソク、ツヤナシイノデ、シシガシラなど種類が多く見られる所が、特筆すべき点だと思います。


南ヶ谷湿地

調査中 定点撮影A 定点撮影B

↑(左)調査中  (中)定点撮影A  (右)定点撮影B



写真/文:平井希一、竹村秀雄、茅野恒秀

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