2007年7月赤谷の日レポート

7月赤谷の日レポート(2007年7月7−8日)

モリアオガエル モリアオガエル
エゾアジサイ エゾアジサイ ブナ

↑(上段)モリアオガエルとその卵塊(下左)エゾアジサイ(下中)エゾアジサイ(下右)赤谷の森のブナ



南ヶ谷湿原の保全

念願の湿原保全のチームに参加。人工林を少し下ると、突然視界が開け、一面ガマに覆われた湿原が広がった。先月の保全活動では、水面の低下を防ぐためにサポーターが堰を作った。その成果と、ようやく梅雨らしくなった天候のおかげで、湿原の水面の面積は見事に回復していた。
モリアオガエル卵塊を確認 ハッチョウトンボの♂ イトトンボの仲間

↑(左)モリアオガエル卵塊を確認 (中)ハッチョウトンボ♂ (右)イトトンボの仲間

 今回の調査対象はモリアオガエルの卵塊。到着してすぐさま、止水域に斜めに突き出た枝先に、卵塊を発見した。メレンゲ状で手のひらくらいのサイズ。初めて見た印象は「思ったより大きい!」だった。このサイズの卵塊を1匹の小さなカエルが産むのか〜としばし感動。サポーター皆で、あの角度この角度から卵塊を探す。移動しながらふと、足下を見ると、じっとうずくまったモリアオガエルを発見!モリアオガエル特有の赤い目、カメラを近づけても全く反応無し。実は目は開けているけれど、睡眠中とのこと。そういえば、蛇も冬眠の際は目を開けたままだものなぁ、乾いたり砂がついたりしないのかしら?と人ごと(カエルごと)ながら心配してしまう。
 そんな素敵な出会いも経験しつつ、湿原をぐるり1周して、92個の卵塊を確認できた。調査後は、湿原の中を踏み荒らさないよう観察台を作成。かわいらしいハッチョウトンボ(群馬県や、鮮やかな青色をしたイトトンボの仲間にも出会えて、大満足の1日だった。(サポーター目黒)

木の実豊凶調査

7月の豊凶調査は、ムタコ沢のブナ(1本)とトチノキから、虫害種子および未熟種子を回収しました。他の樹種は、未熟を含め確認できませんでした。思ったよりは、まだ少ない結果です。
 ブナの調査対象木は、全部で6本で、残りの5本からは回収できなかったので、今年の豊凶は個体差がありそうです。回収できなかった木は、双眼鏡で見ても、枝に実らしきものが見えません。回収できたのは、虫害種子約50個と殻斗30個でした。トチノキは対象が1本で、未熟種子が3個でした。トチノキはトラップ外にも未熟が落ちていましたし、木にも多くの種子がありました。それ以外のナラ類は、まだ実が小さいはずなので、双眼鏡でも確認できません。昨年は、8月には未熟が確認できていました。
<ご参考>丹沢のブナもウォッチングしています。丹沢は一昨年、昨年と割と豊作でした。今年は、花をあまり確認できていませんが、先日、裏丹沢で、大量の未熟の落下を見つけました。ブナハバチが葉を食い荒らしていました。本来だと個体差のある凶作なのかもしれませんが、ブナハバチの害の影響がどうでるのか心配です。(サポーター川端)
ムタコ沢にてトラップを回収中 バイカツツジの花 途中でコウモリの穴をさがす隊員

↑(左)ムタコ沢にてトラップを回収中 (中)バイカツツジの花 (右)洞窟が気になるサポーター福田さん

テンモニ隊(ホンドテン・モニタリング)

今月も基本5ルートを調査いたしました。
・雨見林道(鈴木・青木)/テン:19(サクラ・クワが主)
・ムタコ林道(鈴木・青木)/テン:14(サクラが主)、テン?:1
・赤谷林道(金井・田中・鈴木・青木)/テン:27(サクラが主、バラバラで不明6は昆虫と思われる)
・いきもの村(金井・田中・鈴木・青木)/テン:20(サクラ18、サクラ+動2)
・小出俣林道(金井・田中・林・鈴木・青木)/テン:3(サクラ)
合計84サンプル。

サンプリング中 クマイチゴの結実状況 サクラと思われる種子を含んだサンプル

↑(左)サンプリングの様子  (中)クマイチゴの結実状況(赤谷林道)。今年はどのエリアでもモミジイチゴ、クマイチゴ、クワの結実が良好です。これらをテンが食べるのか?楽しみです。  (右)サクラと思われる種子を含むサンプル

今月、特筆すべき点は、サクラでしょう。一昨年1サンプル、昨年は4サンプルしか採取されていませんが、今回のサンプリングでは大半をサクラが占めている状況で、5ルート全て同じ傾向でした。
また過去2年間のデータから、赤谷のテンは通年ネズミに依存している事がわかってきていますが、今月の赤谷の日における調査については、古いモノを除いて動物食のサンプルはほとんど採取できませんでした。(サポーター青木)

いきもの村環境管理(ニセアカシア伐採とネイチャートレイル整備)

 「いきもの村」は、環境管理(よい状態を保つ)の手法を、サポーターや関係者が学ぶ実習フィールドです。盛夏に近づき、草地環境のエリアでは草が伸びてきましたので、調査や環境教育活動のために使用するトレイルの部分について、草刈りを行いました。
 県道東側入口からアトリエまでのトレイルと、県道西側の最下段のトレイル整備を進めました。人の背丈ほどの葛が伸び、人力で刈るのはかなり時間がかかりました。夏の間に、もう一度行う必要がありそうです。
 また、一昨年から行っている、外来種ニセアカシアの伐採除去を進めました。ニセアカシアの除去は苗畑の放置後17年経過したところで開始しましたが、年2回ほどの伐採も3年目に入り、萌芽の樹勢もやや衰えてきたように思います。根絶方法はなかなか確立していないようですが、「赤谷の日」で行っている除去活動も、今後、レポートにしていきたいと思います。(NACS-J茅野)

アマガエル ゲンゴロウの仲間 ヤマアカガエル

↑(左)いきもの村のトレイルで見つけたアマガエル  (中)防火水槽で見つけたゲンゴロウの仲間  (右)防火水槽の周りを草刈しているとヤマアカガエルがたくさん出てきました。

センサーカメラ設置(旧三国街道エリア)

 赤谷の森には、古くから表日本と裏日本を結ぶ要路として使われてきた”三国街道”が、”三国路自然歩道”として残されています。この歴史的な旧街道を、自然科学の目で再評価し、地域資源としての魅力を高めるプロジェクト(仮称:旧三国街道フットパス網計画)が動き出しています。
 このプロジェクトの一環として、旧街道とその支線を含めた全域にセンサーカメラを設置し、野生動物がこのエリアをどのように利用しているのか把握したいと思います。今回は、藤代さん、赤澤さん、出島の3名で、国道17号線から旧街道の支線三坂線へ入り、三坂茶屋跡〜大般若塚〜国道17号と歩きながら、5台のセンサーカメラを設置しました。
 このエリアは、少なくとも100年以上大規模な伐採が行われていない林が多く、ブナ、ミズナラの自然林が広がっています。動物が塒に使っていそうな洞を持つ樹も多く、どこにカメラを設置しようか悩みます。今回は標高にバラツキを持たせながら、獣道になっている場所や樹洞に仕掛けました。さて、何が写るか?楽しみです。(NACS-J出島)

三坂線と旧街道が交わる地点の休憩所で昼食 センサーカメラ設置中 ミズナラの大木にカメラを設置

↑(左)休憩所で昼食、  (中)センサーカメラを設置、  (右)ミズナラの大木にカメラを設置。


7月赤谷の日お疲れ様でした。梅雨時期ですが天候に恵まれて活動をすることが出来ました。2日目(7/8)の午後は、みなかみ町町民向けの活動報告会”赤谷の森フォーラム”にも参加頂きありがとうございました。
 来月は通常活動に加えて、猛禽類調査チーム(ASTR)研修会を実施する予定です。暑い中の活動になると思いますが、8月もよろしくお願いします。


写真/文:青木邦夫、鈴木誠樹、川端自人、竹村秀雄、目黒美紗子、横山隆一、茅野恒秀、出島誠一

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