2007年5月赤谷の日レポート

5月赤谷の日レポート(2007年5月12−13日)

県境の稜線には雪が残り、目の前の木々はまぶしい新緑。赤谷の森が最も気持ちよい季節だと思います。

アズマヒキガエルとその卵 川古展望台からの景色
オオカメノキ

↑(左)アズマヒキガエルとその卵、(右上)川古展望台からの景色、(右下)オオカメノキ



湿地調査

↓調査結果フィールドノート(横山さん作成)

湿地の調査結果

 今回、いきもの村の上の湿地でクロサンショウウオの卵のう数の調査を行うことになり、横山さん、藤江さん、小川さん、和田さん、高校3年生の林さん、竹村の6名が担当した。
 クロサンショウウオの卵はすぐ見つかり、全員でカウントすることになった。倒木の根元に出来た水溜りをみると一面に卵のう。何十個も一塊になって、上下にも重なってカウントはかなり困難・・・。気を取り直して数えるが、人によってかなりの幅が・・・。5メートルほど横の倒木の下側にも500くらいの卵のうと、親の姿を確認。その近くにも小さな塊が何箇所か。そして更に500くらいの卵塊。湿地を1周したが、産卵場所は北側4分の1くらいの場所に集中していた。
倒木の根元が大きな水溜りになっています 湿地の全体
 各人の合計を出すと1450〜1800個。よく数えたものだと全員感心。厳密な数でなくとも毎年調査をすると一定の幅で傾向がわかるので、これでよいとのこと。一匹の雌は1回に2卵のう産み、2回産む個体がいるので少なくとも500匹以上の雌がおり、その何倍かの雄がいると推計できるとのこと。このような規模の大きな産卵地は余り例がないとのこと。
また、湿地の周りには、クマ棚のあるミズナラが何本もあり、ツキノワグマの密度も高いと思われた。このほか、ヒキガエルが何匹もカエル合戦をしており、ヒキガエルの卵塊が水面一面に覆っている場所もありました。
 6月にはモリアオガエルの産卵が見られるとのこと。花は終わっていたがカタクリの葉は一面に残っている場所もあった。湿地は2年前に比べ、水路が深くなり、水溜りが減り、アシが増えたとのこと、針葉樹林の中にぽつんと残された別世界のようなこの湿地は、毎年継続して観察をする意義がある場所と実感しました。(サポーター竹村)


ホンドテン・モニタリング

 5月の赤谷の日を控えて、10日夕方から11日未明にかけて、群馬県北部は、大雨と強風で荒れた天気となりました。そのためか、テンモニルート全体でコンディションは良くない状況での調査となりました。調査は、ムタコ林道、赤谷林道、小出俣林道、雨見林道の4ルートで行いました。
赤谷林道にてサンプリング

1.ムタコ林道(青木、鈴木)

 赤谷の日開始前に、通常ルートとその前後100メートルを調査しました。調査結果は4サンプル。全てテンで、動物食でした。通常ルートで2サンプルを採取し、そのうち1サンプルは、前夜のものでした。
 通常ルート手前では、2サンプルを採取しました。依然として、通常ルートでのサンプル数が少ない状況です。コンディションが悪いとはいえ、ちょっと少ないように思われます。通常ルートでのサンプル数が少ないのであれば、テンの行動圏に変化があると思われますので、林道始点から終点までを調査する必要があると考えています。

2.赤谷林道(青木、茅野、平井、鈴木)

 赤谷林道始点から、石積みバリケードの先の橋までを調査しました。9サンプルを採取しました。(全てテンで動物食でした。)新しいサンプルは無く、雨の影響でサンプル数は少ないように思えました。

3.小出俣林道(金井、星野、目黒、岡井)

 テンモニ隊の雄、金井さんが林道始点からカツラステーションを経て林道終点まで調査に加わったものの、サンプルを見つけられなかったとのことでした。林道始点から終点まで調査して、サンプル数0というのは、いくらコンディションが悪かったとはいえ意外でした。小出俣林道では、日中活動するテンの目撃例が数件あると共に、東京発電調整池上部のカラマツ林の漸伐や林道への砕石の敷設など少なからず環境改変が行われていましたので、これらにテンが反応してサンプリングも容易ではないかと期待していました。雨が大きな要因なのか?それとも子育て中のテンの行動自体に変化がおきているのか?見極めるため、5月中にもう一度テンモニを行う必要があると考えています。

4.雨見林道(金井、鈴木、林)

 初参加のの林くん(尾瀬高校3年生)と通常ルートを調査しました。林くんは、はじめてのテンモニでしたので、なぜテンモニを行っているのか等のレクチャーをしました。また、テン糞を見付けやすい場所や見過ごしてしまうような場所なども一通りレクチャーさせてもらいました。その結果、テン糞に見間違え易い落ち葉が丸まったものやテン糞そっくりの木の破片なども見つけてくれて、その都度「これテン糞に似てますが?」と問いかけてくれました。テン糞と見間違えるようなものは、たくさんあります。林さんは、違うであろうと自分で判断して捨てるより、参加者全員でテン糞であるか否かを確認しあう行動をとってくれました。この「全員で審議」する姿勢は、テンモニ隊に参加する人全ての人に持ってもらいたい姿勢だと考えています。
 さて、結果は11サンプル(テン9、テン?1、不明1)でした。この時期の雨見林道では、平均的なサンプル数を確保しました。糞の内容物には植物が含まれていましたが、この時期結実する果実はまだありません。近くに養鶏場がありますので、そこのゴミ捨て場のものを食したのかもしれません。

雨見林道にてサンプリング フデリンドウ 赤谷林道にてサンプリング

まとめ(4ルート合計24、テン22、テン?1、不明1)

・全体的にサンプル数が少ないのは、雨の影響だと思われます。
・子育てのための活動範囲が、昨年と異なっていることも考えられます。
・小出俣林道では、4月下旬に砕石を敷く林道整備が行われました。それ以降、テン糞を見ることが少なくなっていると複数の関係者から聞いており、砕石は、角が取れておらずテンにとっては歩きにくいのだろうか?などと思ったりしています。砕石を敷く林道整備は、今後、ムタコ林道(通常ルートより上部)でも行われるので、整備前後のテンの活動をチェックできるよい機会だと思っています。

このように、赤谷の日のテンモニだけではサンプル数が確保できなかったり、サンプル採取する場所が前年と大きく異なっている場合等がありますので、赤谷の日以外でもテンモニを行う必要性を感じています。特にこれからは、果実が実る季節でもありますので、「テンが食した旬の果実の糞!」を採取したいと考えています。(サポーター鈴木誠樹)

木の実の豊凶調査隊

 今回より2007年の豊凶調査を開始しました。今月は、昨年に設定した対象樹木への、トラップの設置作業です。
今年の改善点は、動物による食害の回避です。昨年のトラップの中にほとんど木の実が入っていなかった理由の一つとして、ネズミなどがトラップ内に入った可能性がありました。それを避けるため、トラップネットを地面から30cm以上離す、周りの枝葉を払う、トラップの口に鳥避けのテープをヒラヒラさせることを行いました。作業は順調に進み、1日目に全21トラップの設置を終えました。来月から12月まで、毎月、トラップ内容物の回収、分析を行います。

対象木の下にトラップを設置 新緑の様子 対象木の下にトラップを設置


 赤谷の日、たくみ小屋2階で寝ているみんなの目覚ましはムササビです。ドン!!ドドドドッドッ!!と凄い音を出して朝4時過ぎに戻ってきます。夜外出するときは私たちが気づかないくらいコッソリと出て行くのに、戻るときは何の気づかいもないようです。そのムササビは、今年も子育てをはじめています。子どもは2頭。今年も無事巣立ってくれることを期待しています。
 参加された皆様お疲れ様でした。6月赤谷の日もよろしくお願いします。


写真/文:青木邦夫、川端自人、鈴木誠樹、竹村秀雄、茅野恒秀、出島誠一

ウィンドウを閉じる
AKAYAプロジェクト ホームページ


Copyright(c) 2005- Nature Conservation Society of Japan. All rights reserved.