2006年9月赤谷の日レポート

9月赤谷の日レポート(2006年9月2−3日)

強い日差しの中、ホンドテン・モニタリング、豊凶調査、いきもの村のアトリエ整備、初回講習会、を行いました。


↑テンモニ隊がサンプリングを行った小出俣沢の様子。左:アキアカネ、右:カジカガエル (撮影:平井希一)



ホンドテン・モニタリング

 8月に足立先生、桑原先生、倉品先生のご指導の下、沢での調査手法の講習と調査を行いました。その際、餌植物となるサルナシが多く確認出来たため、9月にどの程度サルナシ等を利用しているかとの確認と調査手法のスキルアップを含め9月と同様に沢での調査を行いました。(2日間とも4名体制で調査を行いました。)

1日目:小出俣沢遡行調査(赤谷川本流出会いから東京発電調整池間を往復)

 入渓地点は、先月と同様赤谷川本流出合いとしました。遡行前半部分は、樹木が覆いかぶさり、薄暗い感じであったことは先月と同様でした。しかし、入渓後30分ほどして先月発見できなかった、この下流域の薄暗い箇所で1サンプルを採取しました。発見されたテン糞は、苔むした平らな石の上にあり、決してテンが好んで糞をするような場所ではないと、隊員一同不思議に思いましたが、この周辺では、帰路にも1サンプル採取しました。
 発見されたテン糞は、いずれも動物食(ネズミ類)だと思われたため、周囲を見渡すと、ネズミの巣穴らしきものがあります。意外な所にもテンの利用空間があることと、調査の難しさを改めて痛感しました。

倒木の上にあったサンプルを採集” アズマヒキガエル

↑左:倒木の上にあったサンプルを採集   右:アズマヒキガエル。沢につかっている様子が「温泉に入ってる見たいで気持ち良さそうだ」と皆で言っていました。

↓左:サンプリングの様子   右:サルナシ。まだ熟していません。

サンプリング サルナシ  遡行後1時間ほどして先月と同様に大石が点在する箇所で数個サンプリングすることが出来ました。この箇所は、大石が多く点在し、明るい環境でした。この地点の少し上流の右岸にサルナシが鈴なりに果実をつけていましたが、まだ熟しておらず、周辺でサルナシを含んだテン糞を見つけることは出来ませんでした。
 さらに遡行を続け、先月多くサンプリングした橋のように架かった倒木上を丹念に調査しましたが、今回は倒木上でのテン糞は、2サンプル程度と少なかったのが特徴でした。それに対し、多少凹凸のある滑状の岩盤の上で多くサンプリングしました。
 東京発電調整池下から往路を再調査しながら下りました。帰路でも数個サンプリングすることができ、遡行時と異なる視点となることを再認識しました。
 なお、小出俣沢調査後、先月テンのため糞を発見したムタゴ沢の新林道橋げた下にデジタルセンサーカメラを設置し、翌朝回収しましたが、動物類を含め何も撮影されていませんでした。
<1日目調査結果>
サンプル数 テン:11、テン(?):1→合計12サンプル
食性 :動物11(昆虫を含む)、植物?1(昆虫を含む)


2日目:(1)前野沢(合瀬)遡行調査

 8月の調査と同様、調査開始は、午前7時。雨見林道調査開始地点から入渓し、雨見林道調査終了地点200メートル手前までを遡行調査しました。
先月に比べ水量は少なく、3分の1程度まで減水していました。調査ポイントを丹念に探しましたが、サンプル採取は1サンプルのみになりました。サルナシの果実等も確認しましたが、サルナシを食したテン糞を見つけることは出来ませんでした。8月に橋上に架かった倒木にテンが利用したと思われる爪あとを数箇所発見しましたので、これらを記録写真として撮影しました。
 沢調査後、林道に上がり林道を下りながら調査しました。結果は、雨見林道調査開始地点から300メートル程のところにサルナシを食した新しいテン糞を1サンプル発見しました。

ミズタマソウ フシグロセンノウ

↑左:ミズタマソウ  中:フシグロセンノウ  右:ニホントカゲ こんな風に体を温めるのですね!「カメラを構えたら、すぐに手をクルリと上げてくれました(笑)」

2日目:(2)ムタコ沢調査

 8月の調査同様に旧林道橋下流50メートル地点から新林道橋下まで遡行調査を行いました。新林道橋げた下でテン糞1サンプルを採取しましたが、明らかに先月の取残しと思われるものでした。

<2日目調査結果>
前野沢(合瀬):1(動物食) / 雨見林道:1(植物食・サルナシ) /  ムタコ沢:1(動物食)

 8月及び9月の2ヶ月間沢調査を行った感想としては、小出俣沢では確実にテンの利用頻度が高いと思われました。前野沢(合瀬)では、橋状の倒木の利用は見られるものの、利用頻度は低いと思われました。ムタコ沢では、林道と同様に利用している可能性が高いと感じられました。(サポーター鈴木)


木の実豊凶調査隊

 今月からは、前回までに設置したトラップの中身の回収作業です。
 トラップの位置を把握できているので、1つのトラップを残しただけで、回収作業は1日目にほぼ完了しました。
無残に壊されたトラップ 回収作業中
 いきもの村のトラップが無残に壊されていました。。。鉄製のポールがひどく曲げられ、歯型もしっかりと残っていました。とても人間の力でできることではありません。どうやら、ツキノワグマの仕業のようです。トラップの網は破られていなかったことから、このトラップがお気に入りの通り道を、邪魔してしまったのかもしれません。

グニャグニャになったポール 歯型のついたポール 木の実豊凶トラップ

↑左:グニャグニャになったポール  中:ツキノワグマの歯型が残っています  右:木の実豊凶トラップ

 2日目は、1日目に回収できなかった1つのトラップの回収と、回収した木の実の仕分け作業です。
色、大きさ、穴の有無などから、成熟/未熟/しいな/虫害/獣害に仕分けを行い、その数を数えます。

トラップA247 トラップA248 トラップA249 トラップA250
トラップA251 トラップA252 トラップA253 トラップA254
トラップA255 トラップA256 トラップA257 トラップA258
トラップA259 トラップA260 トラップA261 トラップA262
トラップA263 トラップA264 トラップA265 トラップA266
トラップA267

 このところ、全国的に今年の木の実は不作であるという話や、その影響でツキノワグマが里に下りているというニュースを耳にします。赤谷の森の状況は、この豊凶調査で把握したいと思います。来月もよろしくお願いします。(NACS-J出島)

きのこ調査

 9月赤谷の日2日目、群馬野生きのこ同好会の主催で、赤谷の森のきのこ調査を行いました。
場所は去年の調査と同様に小出俣林道。同好会メンバーの約20人と赤谷サポーター3人での調査となりました。2005年はスギ林、カラマツ林、ブナ・ミズナラ二次林、渓畔林の4箇所で調査をしましたが、今回は時間の都合で、カラマツ林と二次林の2箇所を調査地としました。
 最初の調査地は二次林。今年は夏が異常に暑く、また調査前まであまり雨が降らなかったため、いつもなら様々なきのこでにぎわっている二次林内も、何だか寂しい様子。それでも冬虫夏草の1種であるハナサナギタケや、濃い紫色が特徴的なナスコンイッポンシメジ等、結局43種のきのこを確認しました。このうち2005年10月、11月にも確認されたきのこは僅か8種。つまり、35種はニューフェイスです。去年と調査時期が1ヶ月ずれているせいもありますが、二次林でのきのこ調査はやるたびに確認種がまだまだ増えていきそうです。
オニイグチモドキ ウスイロカラチチタケ サンプリング後の同定会
 次に場所を移動して2つめの調査地であるカラマツ林へ。
 ここでは、2005年10月の調査では11種、11月は8種のきのこが確認されています。今回は24種を確認することが出来ました。エイリアンの手のようなサンコタケ、珊瑚のようなハナビラタケなどに混じり、同好会の方も20年前に1度確認しただけという、ザイモクイグチ(イグチのくせに菌根菌でなく木材腐朽菌!)が発生していました。このカラマツ林は、2006年の秋に50%の漸伐(帯状に伐採する)が実行され、その後の植物相の変化をモニタリング調査することになっています。ここで平行してきのこ相もどのように変化していくか調べてみると、おもしろいデータがとれると思います。
 群馬野生きのこ同好会の皆さん、ありがとうございました。(サポーター目黒)


左:アトリエに椅子と机が完成しました、  右:今月の”はやしや”のお弁当↓

はやしやのお弁当 アトリエの椅子と机

 その他、アトリエに手づくりの椅子と机が設置されました。ネイチャートレイルの途中にあるアトリエを”教室”として使いたいと考えています。できれば、黒板も置きたいと思いますので、不要になった黒板等があれば、ぜひ、ご連絡下さい。

 さて、来月は赤谷の森の上部は色づきはじめていると思います。季節の変化を感じながら、各活動を進めたいと思います。
来月もよろしくお願いします!



写真/文:鈴木誠樹、出島誠一、平井希一、目黒美紗子

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