2006年8月赤谷の日レポート

8月赤谷の日レポート(2006年8月5−6日)

長い梅雨が明け、真夏の日差しの中での活動となりました。

ミドリヒョウモン ツチガエル、ヤマアカガエル
スイカ

↑左:ミドリヒョウモン、右上:ツチガエルとヤマアカガエル、右下:夏といえばスイカです。



テンモニ隊

 昨年5月から研究者とサポーターチームの合同で、ホンドテンの食性モニタリング調査を行ってきました。これまでは主に林道での調査を行ってきましたが、今回は、研究者である足立高行先生、桑原桂子先生、倉品治男先生のご指導の下、ホンドテンの沢での空間利用のあり方の講習を受ける共に、餌となる動植物環境を調査しました。両日とも研究者である講師3名+サポーター5名の8名体制で行いました。

1日目:小出俣沢遡行調査

足立先生

 これまで林道での調査では、石の上等目立つ所を最初に調査し、その他目を凝らして林道全体でのサンプリングをしてきました。いざ沢に降りてみると、当たり前ですがそこは石だらけです。足立先生からは、石の上、砂地の上を丹念に調査するようにレクチャーを受けました。右岸3名、左岸3名体制で調査に入りましたが、なかなかテン糞は見つかりません。沢に初めて入る調査隊員2名は、沢の水の冷たさに驚いていたようでした。

 入渓後1時間ほど遡行しているうちに、沢の中心付近の大岩の上に糞を見つけることが出来ましたが、多くは鳥の糞であることがわかりました。鳥の糞は、普通白い物質(尿酸)がありますが、この尿酸は雨で簡単に流れてしまいます。残った糞はテンやイタチの糞と見間違い易いです。尿酸が流失した鳥の糞をよく観察して、糞に含まれる内容物を確認することが重要です。また、鳥の糞を見慣れると簡単に粉々に砕けることもわかりました。注意点は、鳥も果実を食しますので糞の中に種子が紛れ込んでいることがあります。また、鳥が巣作りをする際に中には獣毛を使用する鳥もいますので、鳥と思われる糞の中にも獣毛が含まれる場合があります。このような時は「鳥?」と記録して採取するようにとのことでした。。


サンプリング サンプリング

 さて、本題のテン糞ですが、沢の中心付近の大岩の上に明らかに動物食であるものを発見し、一同一安心。遡行を続けるうち、太い倒木が沢の両岸を橋のように架かっており、この上をテンが文字通り橋代わりに使用しているとの予想の下、丹念に調査した結果、テン糞を発見することが出来ました。小出俣沢では、大岩の上と橋状に架かった倒木がテン糞のサンプリングポイントであるようです。また、今回の沢調査終了地点の上に東京発電の調整池があり、増水時には放流が行われるため、右岸、左岸とも川原には水が流れた地点が多く見られました。これも沢調査時に考慮する必要があります。
 渓畔林は、その名のとおり渓畔林を構成する落葉広葉樹が優先し、テンの餌植物として確認したのは、サルナシが圧倒的に多く、その他モミジイチゴ、クマイチゴ等も確認できました。水棲昆虫類は、九州と比べると圧倒的に少ないと倉品先生がおっしゃっていました。この間アズマヒキガエルを多く観察しました。

 調査終了地点の東京発電調整池手前から林道までの直登は、危険であり今後調査に入渓した場合は、少し沢を下り林道へ上がる安全なルートを見つけるたいと思います。ただ、沢を下るのも、浮石等の確認が十分出来ないので、危険を伴います。初心者の方は、単独での調査を行うべきではないと考えます。


<1日目調査結果(サンプル採取数)>
 小出俣沢:テン11、鳥?2、不明1→合計14/小出俣林道:テン4、イタチ1→合計5/雨見林道:テン1、不明2→合計3/ムタコ沢林道:テン4、テン?2、不明3→合計9/いきもの村:テン2


2日目:前野沢(合瀬)遡行調査

テンモニ沢班 テンモニ沢班

調査開始は午前7時。雨見林道調査開始地点の沢から入溪し、林道調査終了地点200メートル手前まで。調査方法は、前日と同様に行いました。前日と異なる点は、小出俣沢より川幅が狭く、渓もそれほど深くなく、水量が少ない。溪畔林は、ほとんどスギの植林地でした。下床植生もシダ類が多く湿っぽい感じでした。

遡行してもテン糞は、一向に見つかりませんでした。倒木が橋のように沢の右岸と左岸に数本架かっていましたが、いずれも直径15cm以下の小木でした。この倒木には、テンの爪あとがあり通過用に使用しているものの、テン糞は見つかりませんでした。小木のため落ち着いて糞をする場所ではないと考えられました。この沢では、テンの利用空間は少ないと予想を立てていた矢先に沢沿いの石の上にテン糞を発見しました。結果的には、他の石の上を含めて3サンプルでした。沢が遡行しやすかったことと、サンプル数が少なかったため、午前9時30分には、林道調査終了地点200メートル手前の小さな取水堰に到着し、林道へ上がりました。
 テンの餌となる植物は、サルナシが圧倒的に多く、その他ヤマグワ、クマイチゴ等でした。水棲生物では、サワガニが少ない印象を受けました。

 その後、雨見林道を調査しましたが、1サンプルのみ。昨年の7月、8月共に林道でのサンプル数が極端に減少していたので、テンの行動範囲が沢に移動しているのではないかとの仮説から沢の調査を行いましたが、沢でもサンプル数が少ないことが判明し、夏の期間テンはどこで行動しているのか?新たな疑問が浮かび上がりました。


2日目ムタコ沢遡行調査

ムタコ沢旧林道橋の下流50メートル地点の右岸の石の上にテン2サンプルを発見。その後、右岸左岸に別れ遡行調査したが、沢沿いでのテン糞の発見はなかった。新林道右岸の橋げた下の平石に溜め糞7サンプル及び3サンプルを発見。この橋げたの下は、雨も当たらず直射日光も当たらないので、9月の赤谷の日にセンサーカメラを設置したいと考えています。雪解け後から初冬まではムタコでは、センサーカメラの設置場所に苦労してきた。この場所でテンを撮影できればとの期待が高まっています。また、林道でテンの餌植物はサルナシ、ヤマブドウ、ツルウメモドキを確認しました。


<2日目調査結果(サンプル採取数)>
 前野沢:テン3/雨見林道:テン1/ムタコ沢:テン3/ムタコ林道:テン1、不明1/赤谷林道:テン6


追伸:9月赤谷の日も小出俣沢及び合瀬沢の沢テンモニを行いますので、サポーターの皆様のご協力をお願いします。(サポーター鈴木)




センサーカメラ回収&設置

アナグマの塒を観察しているセンサーカメラ

←定期的にセンサーカメラを設置しているアナグマの塒

 赤谷の森の各所にセンサーカメラ(赤外線による自動撮影装置)を設置しています。
定期的に設置している場所もあれば、何かの痕跡を見つけて、その主を明らかにするために設置する場合もあります。設置する場所や角度など、ムダなく、上手に撮影するためには幾つかコツが必要です。また、せっかくうまく撮れたのに、日時設定をミスして、何時撮影したのか分からないということもありますので、カメラの設定確認も忘れずに行う必要があります。

 今回も、いきもの村での設置&回収と、定期的に設置しているアナグマの塒での設置と回収を行いました。蚊の襲撃を受けながら作業をするのは、意外に辛かったりします。「赤谷の日」で設置と回収作業を続けることで、センサーカメラという道具をを自分のものにして頂ければと思います。(NACS-J出島)


木の実豊凶調査隊

今月の豊凶調査では、10個のシードトラップを新たに設置し、合計21個と、ほぼ当初予定の数のトラップを設置することができました。
トラップの作成 種子を回収 種子を回収

↑左:トラップ作成、 中:先月設置したトラップから回収作業、 右:回収作業を指揮する隊長

 初日の5日に、既存の11個のトラップの回収作業をしました。いきもの村周辺と、川古温泉周辺のコナラ、ミズナラ、ブナ、イヌブナです。回収の後、回収物の分析、分類を行いました。回収物には、木の実の外に、枯れ葉や樹皮の破片、花殻などいろいろ入ります。この調査では、作業の簡便性を考慮して、木の実だけを調査対象とし、成熟実のみ個数と乾燥重量とを調べ、未熟や虫害などについては個数のみを調べることにしました。
 今回はコナラ、ミズナラについて、未熟実が若干観測されました。先月の回収の際は、ブナ、イヌブナについては花殻が極端に少ないので、今年の不作が予想されます。

コナラの未熟実 サクラの仲間の種子 昨年のブナの殻斗
2日目は、ムタコ沢のブナ、ミズナラ、トチノキにトラップを設置しました。ブナは、去年の殻斗が無数に落ちていましたが、実生は意外と少ないようでした。トチノキは、すでに未熟の実を、沢山落としていました。トチノキの巨木の近くで、ムタコ沢の瀬に入り一休みしました。ムタコの沢の水は澄み、冷たく、甘露でした。小さな岩の下に、素早い黒い影が入ったように見えたのは、幻だったのか・・・、調査隊の皆さま、お疲れさまでした。(サポーター川端)
ムタコ沢で休憩中 豊凶チーム記念撮影

↑左:ムタコ沢で休憩中・・・気持ちいいです!!  右:豊凶チーム(2日目)



左:黙々と草を刈る赤谷センター所長、  右:スーパーダックのお弁当↓

草刈 スーパーダックのお弁当

 この他、テンモニ隊による林道でのサンプリング、いきもの村のネイチャートレイル整備、初回講習会などを行いました。

 とても暑かった8月赤谷の日ですが、来月は秋の気配を感じることはできるでしょうか?秋と言えば”きのこ”次回は、群馬野生きのこ同好会の方にご協力頂き、昨年に引き続ききのこ調査を行う予定もあります。
 来月もよろしくお願いします!!



写真/文:青木邦夫、川端自人、鈴木誠樹、茅野恒秀、出島誠一、萩原正朗、平井希一

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