9月 赤谷の日レポート

9月赤谷の日レポート(2005年9月3−4日)

9月赤谷の日です。動き始めるとまだまだ暑いのですが、いきもの村のススキに夏の終わりを感じます。

いきもの村 モミ
ヒョウモンチョウの仲間 サカハチチョウ(夏型) コミスジ
ヤマトリカブト ヤマカガシ 小出俣のカツラ いきもの村 ニホンマムシ ヤマジノホトトギス

今月も各班別に活動を行いました。


炭窯づくり

立派な小屋が掛かった炭窯  9月の炭窯班は、窯への火入れイベントを予定していましたが、残念ながらお預け。防火水槽の工事がまだ未着手で、消防署のお許しが出ないためでした。確かに3日も4日も火が着いて、煙が出ているのに、消化施設が無いのは問題ですよね。

炭窯の上でたたずむヤマアカガエル カマキリ

↑左:炭窯の上でたたずむヤマアカガエル、右:カマキリ

 一方、8月の赤谷の日の後で、地元の大工さんによる小屋掛けが完成し、立派な炭焼き小屋ができていました。ただし、窯の上の屋根が高過ぎるため、周りから雨や雪が入ってしまうことが心配でした。早速、笛木先生と相談し、周りをトタンの波板で覆うことにしました。さらに屋根の下の妻の部分の三角形も、合板で蓋をします。ただし反対側は、煙が出ていくように開けたままにします。


小屋の周りにトタンを貼り付けます 師匠と一番弟子 小屋の周りにトタンを貼り付けます

↑左:トタンをつける準備、中:師匠と一番弟子、 右:裏には出入り口をつくります

小屋のうえの三角の部分にもふたをします 窯の裏側は煙を出すために空けてあります ホントに立派な小屋が出来ました!!

↑左:屋根に上って蓋をします、 中:小屋の中、 右:完成!!

完成してみると、何やら立派な家に見えます。この中で、炭火焼き肉を食べながら、宴会でもできそうな。後は、窯の名前を入れた銘板を、柱に掲げれば完璧です。炭窯班は、初日で作業が完了したので、2日目は各人、別の班に参加しました。(川端)


エンカウンタースペースづくり

今月は2回目の作業です。先月に、いきもの村内をひと巡りしてどこにどんなエンカウンタースペースを設けたらよいかを相談し、まずは9種類のプランを図面に描きました。そのうち今回は、「バットハウス」「フクロウハウス」「キツツキハウス」「テンハウス」を作りました。

フクロウハウス設計図 バットハウス設計図 キツツキハウス設計図 テンハウス設計図

↑設計図 左から「フクロウハウス」、「バットハウス」、「キツツキハウス」、「テンハウス」

「バットハウス」

 たくみ小屋の勝手口に設置したセンサーカメラにはコウモリが数回写りました。また、バットディテクターでは、いきもの村内で樹洞性のウサギコウモリと思われる声がキャッチされました。そこで考えたのが「バットハウス」、ウサギコウモリのねぐらになりそうなスペースの仕掛けづくりです。個人のお宅で、雨戸の戸袋にコウモリが入ってしまって困るということがあるので、たくみ小屋では、あえてそういう場所を作ってしまおうという発想です。

工房『石坂』 バットハウス バットハウス

↑左:『工房ISHIZAKA』図面からエンカウンタースペースをつくります

 まず、戸袋のミニチュア版のような縦横40cm×奥行10cmほどの木箱を作りました。木箱の側面には、コウモリが出入りするスリット(縦10cm×横3cmほど)を開けます。底面には、フンなどがたまらないように直径1.5cmほどの穴を沢山開けておきます。箱の中の壁面には、コウモリが指を引っ掛けてぶら下がれるように小さな溝を切っておきます。そして、箱の後面に透明のアクリル板をはめ込み、開け閉めができる板を取り付け、箱の中がそっとのぞけるようにしておきます。これで、木箱は完成です。それを、たくみ小屋の2階の北側の窓に取り付け、準備完了。あとは、コウモリがこの箱に気がついてくれるのを待つだけです。


「フクロウハウス」

フクロウハウス

 一日の作業を終えて夕食のひとときを過ごしていると、フクロウの鳴き声がいきもの村の東側から聞こえてくることがありますが、外に出て暗闇の中で目を凝らしても、なかなかその姿を見ることはできません。そこで、フクロウが使えそうな木箱を樹にかけてみることにしました。

 今回2つ目の木箱づくりです。フクロウが横枝に止まるのと同じような状況を作ってあげることが必要です。底辺が30cm四方・高さが50cmほどの箱で、前面は大きく口を開き、底面にはフンなどがたまらないよう穴を沢山開けておきました。そして、側面に透明のアクリル板をはめ込み、箱の中が見えるようにしておきました。

 次に、箱の取り付けにふさわしい樹を探します。日陰の斜面に生えていて、箱を取り付ける高さは地面から5mほど。それでいて、人の目線が箱と同じ高さになるよう、樹の後ろが上り斜面であること・・・など。結果、上の水場の南側の斜面の樹に取り付けてみました。はたしてこれでフクロウが関心を持ってくれるかどうか・・・?

 よく自然観察路のある林などを歩いていると、生き物がまったく使ってくれていない木箱が樹にかかったままになっているのを見かけることがありますが、箱掛けはじつに難しいです。



「キツツキハウス」

キツツキハウス キツツキハウス

 たくみ小屋の天井裏に住みついているアオゲラを写真で見るだけでなく、キツツキそのものを観察できるようにしたいと、キツツキ用の木箱も用意しました。今度は、樹のウロに似たような状況を整える必要があります。そこで、箱はフクロウのものより縦長で、出入り口は箱の上部に7cm四方ほどの小さめの穴を開けておきました。

 箱の取り付けにふさわしい場所は、日陰の斜面で、幹がちょっと下に傾き加減で、その前がある程度開けているような所。箱を取り付ける高さは地面から4mほどで、そこまでヘビが上がってこられるような枝がない樹。そして、フクロウハウスと同じく、人の目線が箱と同じ高さに来るよう、樹の後ろが上り斜面であること・・・など。そこで、フクロウハウスとは水場をはさんで反対側の斜面に取り付けました。


「テンハウス」

 以前燃料庫に使われていたブロック塀の小さな小屋を、テンがねぐらとして使えそうなスペースにリフォームしました。
 まず、骨が折れて崩れかけていたトタン屋根の一部を取り除いて、雨や雪が降り込まないよう簡単に修復しました(北側の屋根の長さが短くなってしまいました。わかりますか?)。そして、テンが屋根と壁の間の隙間まで上がってこられるように、丸太を斜めに立て掛けました。

燃料小屋 2段にします

↑左:燃料小屋、 右:2段にして気温の安定した場所にします

テンハウス完成 観察窓をつくります テンハウス

↑ここで子育てする姿を見てみたい!!

完成!!→

 次に、小屋の中です。小屋の奥半分のスペースを、板を横にわたして3段に区切りました。一番上の段は高さ50cmほどの屋根裏スペース、中段が高さ40cmほどのねぐらスペースです。屋根がトタンで、日が当たると屋根裏スペースが暑くなってしまうので、その下にもう一段設けて気温が安定したスペースを作りました。たくみ小屋のムササビが、通気口から屋根裏から入り、1階の天井裏に降りてきて寝るのと同じ行動パターンを誘導する形になっています。そして、上・中段の棚の手前を板でふさぎ、中段だけ中がのぞけるように透明のアクリル板をはめ込み、開け閉めができる板を取り付けました。
 ちょっと地面からの高さが不足している建物なのですが、何が使ってくれるでしょうか?
 2日目は、テンフン隊から早く戻ってこられた方々も手伝って下さったおかげで、作業がはかどりました。皆さん、お疲れ様でした。(芝小路)


テン糞サンプリング

 今月もホンドテンモニタリングとして糞のサンプリングを行いました。ムタコ沢、雨見林道、小出俣、赤谷林道(上流、下流)、いきもの村、の各ルート2名づつのチームで手分けして歩きます。

夏毛のホンドテン

←いきもの村のホンドテン(6/23撮影)。夏毛で顔は真っ黒です。

大川、山本チーム
(1日目:ムタコ沢、雨見林道、2日目:赤谷林道下流、いきもの村)

 初参加したテン糞拾い感想を含めて報告します。まず、「テンの糞とは!」黒くて、長細め、果実の種もしくは鳥毛、ウサギの毛などを含むとの説明をしてもらいました。そして「糞の落ちている場所!」乾いた目立つ場所にあるとのこと。
 探しはじめて、まづ最初に見つけたのはサルの糞。これを例にテンの糞のサイズを確認できました。その次にノウサギの毛(と思われる)を発見したところで、テンはノウサギも食べるとのこと。テンは意外と大きいのだねー。テンの大きさを認識しました。
 そしてついに糞発見!(大川が発見!!!)ムタコ沢ルート最終地点に近い橋の上で誰でもわかる所ですが。そして中身確認、動物の毛は発見できなかったですが、小さな果実の種子と結構大きな種子を確認できました。

↓いきもの村のホンドテン(7/28撮影)シッポは白い

いきもの村のホンドテン(7/28)

ムタコのコンクリートの道路の上には動物たちの痕跡がいっぱいです。なんでわざわざこんなところで糞をするのだ!(私だったら草むらでする)次に、鳥の食べられた痕跡(羽根がコンクリートの上に貼りついていました)を発見。なぜ、こんなところでたべられちゃったのだ?
 山本さん曰く、『この道路は結構動物たちが利用していて。夜もよくカモシカがこの道路を歩いてる』とのこと。リゾート計画の為に作られたと聞いたムタコ沢の道路ですが、今はうっそうとした木々に埋もれています。ほとんど人間が利用していないように思えまったく”無駄な道”と思いきや、夜のムタコの道路に動物たちがわいわい行き来する様子を思うと少し面白かったです。

 2日目は赤谷林道下流をサンプリングしました。林道の山側の小さめの石の上にて発見。前日の雨の為水分を含み濡れていましたが、形状は保っていました。やはり石の上が好きなのですね。(でもどういうポーズでここにしたのだろう?)他、2箇所ほどトイレポイント(ガードレール下やコンクリートの上)があったのですが発見できず。残念でした!ついでにコンクリートの上の砂利をどけてきれいにして、”オオカワトイレポイント”と名づけてきました。
 おつかれさまでした。(大川)


金井、青木チーム
(1日目:赤谷林道下流、2日目:ムタコ沢、雨見林道)

 今回もホンドテンのモニタリング班として、2日間調査してきました。しかし、サンプルを見つける事が出来ず、ストレスだけが残る結果に。。。いきもの村周辺とムタコ沢の橋ではサンプリング出来たものの、他の林道は全滅にちかい状態。春はかなり見つかっていたので、こんなに苦しめられる事になるとは・・・
 2日目は12時にいきもの村へ戻れたので、エンカウンター班のテンハウス作成にも参加。作業系の方がストレス解消には良いかも(笑)今後は一眼を持ち歩いて、少し写真でも撮りながら歩こうかな。(青木)

アリ ジャノメチョウ

↑(左)赤谷林道でヘビの抜け殻に群れるアリ、(右)いきもの村のジャノメチョウ


水温ロガー設置

赤谷川上流部

 プロジェクトエリアの主要な沢の水温をモニタリングするため、7月に水温ロガーを設置しました。そして8月初旬、赤谷センターの方にデータの回収をして頂きました。そのときに、赤谷川上流部の赤谷橋付近に設置したロガーが流されて無くなってしまったことが確認されました。流されてしまったものはしょうがないので、もう一度赤谷橋付近に設置しに行きました。
7月の水温(PDFファイル)
↑7月の水温をグラフにしました

ロガー設置の様子 アズマヒキガエル

↑(左)設置イメージ図、(右)赤谷林道のアズマヒキガエル
←赤谷川上流部


 今回は大きな岩に引っ掛けるように設置しました。これなら、この岩が流されない限り、ロガーも流されることはありません。ただ、水量が多いとデータの回収は出来ないかも知れませんが。。。

 ロガー設置のために赤谷林道を歩くので、ついでではないですが、赤谷林道上流部のテン糞サンプリングを行いました。サンプルは1つ見つかりましたが、少し古いもので形が崩れていたため、小林さん曰く、「これぞテンだ!というのを拾わないと充実感がないなー」とのこと。私はゼロじゃなくてホッとしましたが。。。


クロサンショウウオ ツノハシバミ トチの実 マンサクの虫こぶ(マンサクメイガフシ)

↑(左から)クロサンショウウオ、ツノハシバミの実、トチの実、マンサクの虫こぶ(マンサクメイガフシ)

オニグルミ


 川端さんはここ数ヶ月間、炭窯隊長としての活動でいきもの村から出ることが少なく、赤谷林道の奥を歩くのは初めてということもあり、自然観察をとても楽しんでいました。
 右の画像は赤谷林道、旧ダムサイト予定地にあるオニグルミです。「オニグルミの樹はアレロパシー(他感作用)を持つ木として有名です。つまり、オニグルミの樹の下では、他の木が育たないと言われます。この写真1枚で、やっぱりアレロパシーだ、と言うのも危険ですが、今度行ったら調べてみるつもりです。」と川端さんより後日頂きました。
 確かにこのオニグルミだけポツッと立っています。私も今度意識して見てみます。

 赤谷橋でロガーを設置して、途中サンプリングもしながら歩くということで、いきもの村に戻った時には14時になっていました。お疲れ様でした。(出島)


夜のコウモリ調査 & ムササビ観察

バットディテクター

コウモリ調査

←バットディテクター:操作は簡単です。右が音量、左が周波数。


 前回に引き続き、夜はコウモリ調査を行いました。宴会に後ろ髪を引かれながら19:00頃から調査に出発です。調査方法はいたってシンプル。20〜120kHzの間で周波数を変えながら、3分程度づつ声がひろえるかを確認します。今回は、ムタコ沢、三国峠、川古温泉、いきもの村を周りましたが、夕方から小雨が降り始めたため、先月に比べて確認できた声は少なかったです。
 参加した皆さんは少し期待はずれだったかもしれません。これからは、雨の時は宴会を続けましょう!(出島)


ムササビの滑空

ムササビ観察

北側のスギへ滑空(センサーカメラで撮影)→

 たくみ小屋をねぐらとするムササビの行動をセンサーカメラで追跡しています。数日前の様子では20:00頃出勤、4:00頃帰宅というサイクルでの行動が確認されています。また、たくみ小屋二階屋根裏の西側通気口から、一度屋根上に上ってから、北側のスギに滑空する姿が確認出来ています。
 今回こそ滑空する姿を見られるかと思いましたが、ライトで照らされるのが嫌なのか、姿を見ることは出来ませんでした。なかなか簡単ではないですね。暮らしぶりの追跡を続けて、また直接観察の機会をうかがいましょう。(出島)



教育素材さがし

 小出俣エリアでは、「環境教育の教材研究と実践」というテーマを掲げて環境管理・生物多様性の復元をめざしています。
 ホンドテン・モニタリングサンプル採取班とともに、小出俣エリアを歩きました。自分がここで教育プランをつくるなら・・・という観点から、気になった動植物、環境、景色をピックアップしてまわりました。林道入口付近は、オニグルミ、アブラチャンなどが多く、この季節ミズヒキが目立ちます。左手にある斜面に階段をつけて、20メートル四方くらいのコナラ林を導入スペースにしては、という意見がありました。

自然林と人工林の混在 虫カビに寄生されたバッタ オオゴムタケ

↑左:自然林と人工林の混在、 中:虫カビに寄生されたバッタ、 右:オオゴムタケ

 斜面に沿ってネズミの穴が見られたり、露頭があったり、地衣類が見られたり、対岸には自然林と人工林の混在する様子が見られたり、東京発電貯水池まではいろいろな環境を見ることができます。傘のないブナの実にも注目があつまりました。菌類に詳しい目黒さんがオオゴムタケや冬虫夏草を見つけました。林道入口から東京発電の貯水池までは、森の基本的な仕組みを学ぶエリアと言えそうです。


ホオノキ セスジツユムシ クマの爪痕 観察中

↑(左から)ホオノキ、 セスジツユムシ、 クマの爪痕、 観察中

観察中 ツリフネソウ 冬虫夏草「カメムシタケ(別名ミミカキタケ)」

↑(左から)素材検討中、 ツリフネソウ、 冬虫夏草「カメムシタケ(別名ミミカキタケ)」

 東京発電の貯水池近くには、オオハンゴンソウがありました。外来生物が入り込んでいます。貯水池を過ぎると、道はなだらかになり、人工林がまとまってみられます。このエリアは、今後の計画で人工林を自然林に戻していくための管理を行うことから、自然林が回復していくプロセスを学ぶ場として、位置づけてはどうかという意見がありました。隣り合ったカラマツとスギの下層植生の違いや、お互いの施業の結果でどう影響があるか、途中からはササが出てくるところもあり、興味は尽きません。

広葉樹の侵入が見られるカラマツ林、自然林が回復するプロセスを学ぶ場に↓

広葉樹の侵入が進んでいる人工林

↓オオハンゴンソウ、幹を直登するアズマヒキガエル

オオハンゴンソウ 幹を直登するアズマヒキガエル

 スギ林を抜けると、いったん二次林に迎えられます。ブナやホオ、ミズナラなどが中心の二次林には、ツキノワグマの爪痕など動物の痕跡があり、ここでは動物の様子をモニタリングしたり、点々と残る炭窯跡からは人間の利用の歴史などを学ぶことができます。小出俣の象徴とも言えるカツラの巨木までのエリアは、自然林(二次林)と動物・人間との関わりを学ぶ場と位置づけられそうです。


カツラ前で集合写真 カツラの巨木

↑カツラの前で集合写真

 カツラの巨木の周囲では、沢の近くに下りて、沢沿いの渓畔林を体験することもできます。さまざまな環境の特性や特徴に合わせて、テーマを設定しながら、環境教育の場として総合的な意味づけをもたせられるよう、観察メニューやスペースの企画を進めていきたいと思っています。そのような活動の導入になる勉強会でした。(茅野)



 参加された皆さんお疲れ様でした。  
鈴木さん、川端さんに作っていただいたミョウガの味噌汁はとても美味しかったです。来月はもっとたくさんの秋の実りに出会えると思います。秋の森を楽しみましょう!!次回は10月1−2日です!


写真/文:青木邦夫、大川淳子、川端自人、坂西成人、芝小路晴子、茅野恒秀、出島誠一、萩原正朗、平井希一、目黒美紗子

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