赤谷の日

2005年8月6−7日
8月赤谷の日です。強い日差しの中、熱中症に気をつけながら班別に作業を進めました。昼は「炭窯づくり」、「テン糞サンプリング」、「エンカウンタースペース設置」、夜は「コウモリ調査」「ムササビ観察」を行いました。


真夏の村の家  夏といえばスイカ  ヤマアカガエル
 ↑(左)スイカ、(右)ヤマアカガエル
 ↓(左)コガネムシ、(右)タマゴタケ
 センチコガネ  タマゴタケ
集合した直後、たくみ小屋横の水場で迫力ある光景を観察できました。
(↓左)最初発見したときはこの形で水場に下りる階段のところに転がっていました。良く見ると、アオダイショウにヤマカガシ(幼蛇)が捕まっているのがわかりました。(↓右)
ヤマカガシとアオダイショウ ヤマカガシとアオダイショウ
獲物をもって逃げるアオダイショウ   夢中で観察
←みんなが集まりはじめると、”せっかくの獲物を横取りされてなるものか”とヤマカガシをくわえたまま移動しはじめました。スルスルとかなり速いです。

 我々も”せっかくの機会を逃してなるものか”と追いかけます。すると観念したのか?ヤマカガシに逃げられそうになってあせったのか?私たちの前でゆっくりと食事のつづきをしはじめました。ゆっくりヤマカガシが呑みこまれていきます。迫力ある画像をご覧下さい。
ゆっくりヤマカガシを呑み込みます ゆっくりヤマカガシを呑み込みます
ゆっくりヤマカガシを呑み込みます ゆっくりヤマカガシを呑み込みます

炭窯班

8月の炭窯隊は、10月の初窯を控えて、やることがいっぱいでした。今月は、窯の形の完成、小屋掛けまでやらなければなりません。そこで、炭窯隊は可能な人が、AKAYAの日の前日8月5日9時に集合しました。その呼びかけで、地元赤谷集落の林元保さん(7月もご協力頂いた講師の方)と、サポータグループの4人が集まりました。
5日 今日の予定は事前準備として、資材集めと準備です。
まず窯の天井の形を決めるため、中に入れて燃やしてしまう捨て材の調達。捨て材としては、杉の間伐材がある、と言うことで、林さんの車で、大峰山のレジャー施設まで貰いに行きました。軽トラックで3往復、かなりの量の丸太で、細いのや太いのが混ざっています。
調達した間伐材 林先生の丸太割 サポーターも挑戦
太い丸太は、縦に割って太さを揃える必要があります。そこで、2回目の運搬時からは、別動隊がいきもの村で、丸太割りをしました。林先生から割り方を教わり、見よう見まねで斧(よき)を振ります。(上中)先生はバシ!、バシ!と斧を決めますが、(上右)サポーターの面々はあっちこっちへふらふら。みんな自分の足を割りそうでヒヤヒヤしどうしでした。
 昼食を取ってから、林先生を中心に資材調達が続きました。笛木先生の指示で、炭窯の出入り口に使う平石が、追加で必要になりました。平石は、前回搬出した山から持ってきます。
 次は、窯の焚きつけに使う、薪の調達です。林先生が、以前から目を付けていた、相俣ダムの流木が最適だと言うことでダムの管理事務所に貰いに行きます。この流木については、この数年間、形の良いものをトラックで横浜まで運び、ある団地との交流会で展示販売していて、人気が高いとか。今年は、地元でとれた野菜なども一緒に販売したそうです。焚きつけ用の流木は、なるべく細かく乾燥したものを集めてきました。
 資材調達をしている間も、太い杉丸太の縦割り作業が続きました。丸太割りの技も身についたころ、やっと事前準備の作業完了です。
強い日差しのなかでの作業    林先生と笛木先生
 2日目(8/6)は、メイン講師の笛木さんも来られ、林先生との2方に、朝からご指導いただきました。 今日も朝から日差しは強く、暑くなりそうです。
初めは、耐火レンガを外して、窯の出入り口を、平石で積み直しました。前回の作業後、先生方の検討の結果、やはり平石の方が安定する、と言うことだそうです。
窯口の修復作業と並行して、今日のメイン作業である天井張りの準備を始めました。天井用の粘土のために、粘土調達班は、赤谷センターの2tトラックで、5月に調達した場所に向かいます。一方、いきもの村では、昨日用意した杉丸太を、90cmの長さに揃え、窯の中に隙間無く立てていきます。この頃、AKAYAの日参加のサポーター達が集まり始め、それぞれの作業の中に加わっていきます。
天井用の粘土を準備 スギを90cmに揃えます 切った丸太を窯に詰める
窯口の平石積みは、さすがに出入りしやすそうな安定した感じになりました。笛木先生が、窯口の上に、アーチになる細長い石を置いて完了です。窯の中の杉丸太は、窯口いっぱいまで詰め込みます。さらに、丸太の間や壁との隙間に細い材を詰め込み、余計な空間が無いようにしていきます。
隙間なく詰め込みます 平石の窯口に変わりました
日差しの下はさすがに暑く、先生方を交えて小休止。この間に、粘土を積んで戻ってきた2tから、粘土を下ろし、こねる準備をします。日差しが暑いので、屋根の下で。・・でも暑い。
木陰で休憩 木陰で休憩 粘土を下ろします 最後に、窯の天井のドーム形を、杉丸太で作ります。丸太を横に寝かして、長さを合わせ、角を取っていきます。笛木先生は、暑いし忙しいしで、「のんびり眺めながらやると、良い形にできるんだけど・・」と一言ぼやき。でも、さすがに窯の形になってきました。天井の形ができたところで、昼食となりました。
天井の形をつくります 天井の形をつくります
午後は、最大の山場、天井張りです。本来なら、2日掛かりで粘土をこね、数日掛けて屋根に粘土を乗せ、叩いて固める作業をします。今日は、それを1日でやってしまおうと言う計画。中の杉材が焼けたときに、天井が崩れ落ちたのでは、「赤谷の悲劇」になってしまいます。先生方の腕が試されます。(何て言っていいのかな・・・)念のため、粘土にはセメントを混ぜ強度を付けました。
コモを掛けて粘土を張ります   ヨイトマケノ唄を歌いながら?
丸太の上には菰(こも)をかぶせて、その上に粘土を乗せていきます。暑くてすぐに乾燥してしまうので、粘土はどんどん乗せていかなければなりません。サポーター達が3班に分かれて粘土を練りました。昼下がりの猛暑の中、汗にまみれ、ヨイトマケノ唄を歌いながら足で粘土を練ります。余程苦しいのかと思ったら、意外と皆さん、楽しそうにおしゃべりをしながらやっていました。ヨイトマケではありませんでした(失礼)。
天井の粘土は、20cmの厚さにまでしてから、踏んだり、押したりして固めます。セメントも入り、暑さのせいで、大分堅くなっていました。先生方も安心した様子。最後に表面を鏝で滑らかにして、天井が完成です。明日は、天井作りの予備日でしたが、完了したので先生方とは、今日でお別れです。来月の段取りや、それまでにやっておくことなど、打ち合わせをして「お疲れさまでした」。本当に、暑くて大変な1日でした。

3日目は、思いがけず空いてしまい、「おや炭窯隊」。それでも、窯の前の水切りや、窯横の階段を作り、昨日使った粘土の整理などをして、8月の作業を完了しました。参加した皆さま、お疲れさまでした。(川端)

エンカウンタースペース作成班

 センサーカメラ調査のおかげで、どんな生き物が「いきもの村」を利用しているのかが少しずつ見えてきました。そこで、彼らにストレスを与えずにそのくらしぶりが観察できるちょっとした仕掛け「エンカウンタースペース」を設置しようと、その初回の作業を行いました。この取り組みは、まず「いきもの村」内で試してみて改良を重ね、うまく使えるものになったらプロジェクトエリア全体に設置を広げていこうというものです。

 エリア内にある5つの家や小屋をあらためて一巡りし、どんな生き物を呼び寄せるためのエンカウンタースペースを作ったらよいかを相談し、設計図をいくつか描きました。そして、今回はそのうち4つの仕掛けを作りました。
屋根裏のムササビ ←屋根裏のムササビ
  ムササビ用の巣箱
たくみ小屋台所の天井に開いている穴から、1Fの天井裏でムササビが寝ている様子がのぞけることがわかったので、とりあえず応急処置としてその穴に開け閉めができるベニア板の扉を取り付けました。ここにはさらに、人の臭いを感じさせないような仕掛けを加える必要があります。また、ムササビが寝ている真下の天井板が湾曲し大きな隙間が出来ていたので、安眠をむやみに妨害しないよう、ムササビの不在時をねらって補強板を打ち付けました。さらに、小屋の向かいのスギには、地面から6mほどの位置に40×80cmほどの大きさの木箱を取り付けました(赤谷センターの皆さんがあらかじめ作っておいて下さいました)。箱の両側面には直径15cmほどの穴を開けてあり、たくみ小屋で寝心地が悪かった際にムササビが使ってくれたらという希望が込められていますが、はたしてどんな生き物が使ってくれるやら?

ネズミを見るスペース ネズミ用のたくみ小屋入口 また、たくみ小屋1Fの壁際に並んでいるロッカースペースを利用して、ネズミを呼び寄せる仕掛けを作りました。「いきもの村」には、アカネズミやヒメネズミの仲間が生息しています。建物の外壁の地面から40cmほどの高さのところに直径10cmほどの穴を開けて竹筒をはめ、その下に薪を積んでネズミがその穴まで登れるようにしました。そして、屋内のロッカースペース側には、竹筒をつなげた透明のプラスチック水槽を置き、水槽の中に好物の落花生を入れました。ロッカーには扉がついているので、ふだんはそれを閉めておけば人の気配を感じさせることはありません。ネズミが水槽の中までやってきて食事をしてくれるようになれば、扉を開けてそっとその姿を見ることができます。

 もう一つ作って下さっていた木箱を利用して、道具置き場にホンドテンを呼び寄せる仕掛けを作りました。小屋の内壁の高さ4mほどの位置に箱を取り付け、壁には直径15cmほどの穴を2つ開けました。小屋の外側には、その穴に向かって伐り出したスギを立てかけて、テンが登ってこられるようにしました。その際、ヘビが上がってこられないように立てかける角度や高さに注意しました。これで完成ですが、箱の手前側面に透明のアクリル板をはめ込み、開け閉めができるベニア板を付けておいたので、その箱に生き物が入ってくれたら、その様子がのぞけるようになっています。

 2つの小屋のほか燃料庫跡やアトリエにも、センサーカメラに記録された生き物の食事や睡眠の場所になるような環境を整え、その様子が観察できる仕掛けの案をいくつか考えました。今後、少しずつ野生動物とのエンカウンタースペースを増やしていきたいと思います。(芝小路)

テン糞サンプリング班

今回もサンプリングルートとなっている6ルートを二人づつで歩きました。今回から、ルートには現在地を知るためのサインが設置されました。サンプリング用の地図にもサインの位置が記されていますので、糞探しに夢中になっても現在地を見失う事はありません。(「周りの環境を良く見て、糞がありそうな場所を予想しながら探して下さい」と足立先生は仰っていました。。。糞だけに夢中になってはいけません。)
ニホントカゲの死骸   フン
←ニホントカゲの死骸
糞だけではなく、生き物の死骸もサンプリング対象です。糞の内容を分析する際に大事な資料となります。今回はこの他にヒミズの死骸もサンプリングできました。
先日、足立先生は、「赤谷のホンドテンは動物食の傾向が強いように思う」という話をされていました。今回は木の実と思われる内容物のフンも幾つかサンプリングされました。この森のホンドテンは何を食べているのか?この森に何匹のホンドテンがいるのか?分析結果が待ち遠しい!
フン フン フン
2日目も6ルート全てを二人づつで歩きました。前日もサンプリングしたせいか、回収できたサンプル数は少なかったです。いきもの村のネイチャートレイルには、糞をしやすいように大きな岩を置く作業もしました。
スミナガシとフン
右の写真は、サンプリング中にスミナガシを撮影したのですが、その背景にしっかりと糞が写っています。実はこのフンはサンプリングできていません。。。この画像を見てはじめて気づきました。。まだまだ修行が足りません。糞に集まるスミナガシには注意が必要です!!
オニヤンマ クロサンショウウオ
↑(左)所々にある沢ではオニヤンマが縄張り争いをしていました
↑(右)赤谷林道のクロサンショウウオは順調に大きくなっているようです
新しい地図とサインのお陰で、サンプリング作業はかなりやりやすくなりました。あとは隊員がどれだけホンドテンの気持ちになりきれるか?でしょうか。ホンドテンの境地に辿りつくまで楽しくやりましょう!みなさんお疲れ様でした。(出島)

ムササビ観察

センサーカメラによる調査の結果、たくみ小屋屋根裏のムササビは夜8時頃に出勤、朝4時頃帰宅という行動サイクルが確認されていました。夜7:30頃から、たくみ小屋の西側通気口で赤いセロハンを張った懐中電灯を持って待ち構えました。屋根裏で寝ている姿も見れるので、こっそりとみんなで覗きました。
 結局、9:00頃まで待ちましたが、寝ている場所を離れようとはせず、滑空する姿を見ることはできませんでした。残念。
巣材を運ぶムササビ ムササビの帰宅 出勤直前のムササビ 屋根裏を歩くムササビ ↑センサーカメラの画像です
 後日センサーカメラを確認すると、8月になってから、8時出勤、4時帰宅のサイクルが変わっていることがわかりました。また、上左の写真のように巣材を運ぶ姿も確認されました。子育て準備なのか?冬への備えなのか?今後もモニタリングを続けたいと思います。(出島)

コウモリ調査

コウモリ
 ムササビ観察の後、バットディテクター(※1)を持ってコウモリ調査へ行きました。いきもの村を含めて4つの地点を周り、それぞれのポイントで、どの周波数でコウモリの声をキャッチするか確認します。周波数と音の種類で大まかに種の予測ができます。「コン コン コン」と高い音がしたり、「チッ チッ チッ」とかすかな音がしたり、これはかなり面白い!はまります!!(出島)

(※1バッドディデクター:コウモリの発する超音波を人間の耳に聞こえるように変換してくれる機械)

センサーカメラで撮影したコウモリ→

プロジェクトエリア遠景

 参加されたみなさんお疲れ様でした。
特に炭窯づくりの方は重労働だったと思います。炭窯は10月の初窯に向けて最終工程です。炭窯ができれば、自然再生のために除間伐した植栽木を、無駄に捨てない再活用手段の一つとなります。赤谷の森の自然再生に意味を持つ炭窯です。
 さて、来月のいきもの村は、秋の入口?それとも夏のつづきでしょうか?また、アオダイショウとヤマカガシのような場面に出会えることを期待してしまいます。


写真:川端自人、目黒美紗子、茅野恒秀、赤谷森林環境保全ふれあいセンター
文:川端自人、芝小路晴子、出島誠一

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