参加/支援のしかた 自然観察指導員になる

地域の自然観察会に活かす

虫の食痕を読みとる

神奈川県・佐藤恭子さん(82年登録)
神奈川県で『自然新聞の事件記者』を目指している佐藤さんは、「昆虫の食べ痕観察」の専門家。
「植物についた〝食痕〟は、小さな食物連鎖の証拠。これを目にすることは、植物と動物が切っても切れない関係にあることを理解する最初の一歩だと思っています」。

くずの葉についた食痕のスケッチ
  食痕を見つけると、まず近くにその痕をつけている生きものがいないか、丹念に探します。近くにかかわりのある別な植物が生えていないかなど周辺をじっくりみて、「誰が何のために食べたのか」の「取材」と「検証」をしていきます。次に、植物や昆虫に詳しい方に聞いたり、図鑑や資料で調べ、食痕の大きさから食べた生きものの大きさを推定したり、タイプの違う食痕があれば複数の生きものがかかわったと判定していきます。このときに注意するのは、人の話や資料からの「聞き込み」情報だけで分かったつもりになってはいけないこと。「自分の目で正確に食痕をスケッチしながら、しっかりみたからこそ分かることを大切にしている」と、佐藤さん。
「例えば花びらについた小さな食痕など、植物の体についた小さな変化を見逃さない目を養うには、普段から植物の普通の状態をしっかりみる習慣を持つといいと思います」。
(※写真:「くずの葉についた食痕のスケッチ」)

定点観察でみる

三重県・脇葉 進さん(99年登録)
「自然観察を、一過性の現象をみるだけのものにしていては、みえるものもみえてこないと思います。本当は絶えずみ続けるのがベストでしょうが、そうもいかないので、同じ場所を定期的にみることにしています。観察場所を固定することで、少しでも生きものの動きが見える状態に近づけたいのです」。こう話すのは、三重県内に所有する田畑で9年間毎月欠かさず観察会を開き、定点観察を続けている脇葉さん。観察場所の田畑は、広大な伊勢平野の水田と、雑木林がある山地の農家集落との接点に位置する、いわゆるエコトーン(異なる環境の境界)にあたります。

みている範囲は小さくても、必ず変化をみることができる。
  「この場所をホームグランドとして、風や気温、湿度を記録しながら、生態系ピラミッドの底辺を支える「生産者」の植物と、「一次消費者」の草食動物、というような階層ごとに生きものたちの状態を観察します。定点観察を続けていれば、植物の〝勢い〟の変化なども見えてきます。植物に日照を好むものや日陰を好むものがあることも分かります」。
定点観察は、みている範囲は小さくても、生態系の営みに気づける方法なのです。
(写真:「みている範囲は小さくても、必ず変化をみることができる。」)

都市公園を使う

長野県・清水良昭さん(83年登録)
長野県須坂市の臥竜公園で開催している清水さんの観察会は、事前申し込みがいらないため、ウォーキングや夕涼み、子どもと散歩などの目的でたまたま公園に来ていて参加する人も多いそう。
「人工的な植え込みやボートの浮かぶ池、桜並木、きれいな形のアカマツ……、と整備されている都市公園に、わざわざ生きものを観察しに来る人はほとんどいないんです。でも、霧吹きで水をかけてみれば橋の欄干の間にクモの巣が見えてきたり、植え込みの枝にセミの抜け殻があったりします」。

ただ今、昆虫の体重測定中
  自然観察に興味があるわけでもなく何となく参加した人たちに、清水さんは手づくりの模型でセミの触角を説明したり、クモの糸に一円玉をひとつずつ重ねながら、『ジョロウグモの糸が切れるのは何グラムか?』などと観察する姿を見せます。すると『へぇ、生きものって不思議だね。よく見ると面白いかも』と興味を持ってもらえます。
「観察会をきっかけに、『公園で健康のためにウォーキングをする』から『公園でウォーキングしながら四季の変化を発見する』ようになってもらえるのが嬉しいんです」。
(※写真:「ただ今、昆虫の体重測定中」)

認定制度をつくる

熊本県・藤吉勇治さん(82年登録)
22年間、熊本県山都町で観察会活動に取り組んでいる「矢部郷自然観察会」は、回を重ねるうちに大人中心の観察会になってしまったため、子どもが主役となる観察の場も必要だと、17年前に「ジュニアレンジャー(少年少女自然観察指導員)」という独自の認定制度をつくりました。
この制度をつくったメンバーの一人で会代表のNACS‐J自然観察指導員・藤吉さん。

未来を担う〝少年少女自然観察指導員〟
  「子ども連れで定例の観察会に参加している保護者に『ジュニアレンジャー』の趣旨について説明し、希望する子どもたちを対象に認定会を実施しています。認定には、当会の指導員が審査員となり、子どもたちと地域の自然観察路を歩きながら、見つけた生きものについて図鑑や資料を使って自分で調べさせたり、生きものたちとのつながりについて考えさせたり、野外マナーなどについて口頭とレポート形式で答えさせたりするなどの審査を行います」。
結果的には全員を認定しますが、こうした機会で子どもの興味や関心が高まるとともに、認定されたことが誇りと意欲につながっています。
「ジュニアレンジャーがリーダーになる観察会を開いたり、会の新聞に自然の中での発見などを記事にして書いてもらったり、と役割を与えることで、子どもたちに自然を守る自覚が生まれ、継続して自然を観察したり、率先して自然の出来事に目を向けるようになってきているんです」。
(※写真:「未来を担う〝少年少女自然観察指導員〟」)

日常生活に活かす

身近な人に伝える

熊本県・篠原晴美さん(00年登録)
熊本県益城町の住宅地にある篠原さんの自宅には、好きな野菜や花を植えた小さな庭があります。この庭が篠原さんの観察会の場所です。庭が見通せる食卓の窓は大きく、いつも開け放してあるので、すぐに庭の様子が見られます。テレビが窓の横にあるので、テレビを見ているときでも少し視線をずらせば庭をみることができます。

ムラサキシジミやヤマトシジミ、ベニシジミも来る篠原さん宅の庭
「『あっ、今日はジョウビタキが来ている』と、食事の準備をしながら、洗濯物を干しながら、ひと休みしているときも、ご飯を食べているときも、お客さんがいらしたときも、いつでも庭の様子を観察して、目についた出来事を口に出し話題にしています。そんな私の姿を見ていただけの夫が、ついに庭の様子に興味を示すようになりました」。
晴美さんが、どうしてそんなに喜んでいるのか、写真を撮りまくるのか不思議でしょうがなかったという旦那さん。「今では、妻より自然を見る目が鋭くなったようです。いつの間にか、食卓から見る庭が私たちのフィールドになっていました」。
(※写真:「ムラサキシジミやヤマトシジミ、ベニシジミも来る篠原さん宅の庭」)

山梨県・高木 晃さん

自宅前で気軽に開く

山梨県・高木 晃さん(02年登録)
「自分の生活場所で、近所の人と一緒に自然をもっと知りたい」と、2002年に講習会を受け、1週間後に〝自宅前集合観察会〟を始めた木さん。
「ぼくの生活エリアは、住宅が10軒ほど固まっていて、その北側にアカマツを中心とした小さな森、南側には水田、その周りに放置された田んぼが姿を変えた原っぱが広がる地域。特別なものがあるわけではないのですが、家の周りをウロウロしていると、人の生活とのかかわりで成り立っている自然の営みの存在に気づくのです」。

観察会を始めたときについた愛称は、『ご近所探検隊』
  最初は、向こう三軒両隣の参加者でスタート。以来、月1回のペースで自宅前で50数回開催しました。回を重ねるうちに口コミで広がり、県内外から参加者が集まりましたが、ほとんどの参加者は町内在住の皆さん。近くで生活する人同士のため、観察会で出会った人たちが地域コミュニティづくりの活動に発展させる効果も表れてきています。
「周辺の自然の変化に注目する観察会は、その気になればどこででも誰とでも気軽にできる観察会です。何といっても『下見は日々の散歩』だけですから、周到な用意がなくともできるのです」。
(※写真:「観察会を始めたときについた愛称は、『ご近所探検隊』」)

地域の自然を守る・活動に活かす

毎日公園でみる

東京都・高野 丈さん(05年登録)
東京都・井の頭公園とその周辺で鳥の観察・調査を続けている「井の頭バードリサーチ」の高野さん。
50人ほどのメンバーで、早朝に、出勤前に、買い物の途中に、家事を終えた後に、朝から晩まで一日中など、各自が好きなときに好きなコースを探鳥しながら歩き、必ず〝毎日〟観察できた種類をネット上で記録しています。このグループの代表でもある高野さんは、「メーリングリストを設け、各人が投稿した観察情報をメンバー全員で共有し、観察記録のとりまとめに活用しています。また、注目したい発見があった際はすぐに皆へ知らせることができるので、リアルタイムで観察機会を共有できる利点もあります」。

会メンバーによる鳥類観察会
〝毎日〟観察する理由は、「観察の頻度が高いと見落としが少なく、記録の精度が高まるから」。単にいつごろ何を見かけたかではなく、何月何日から何月何日まで何の鳥が何をしていたか、何月何日にだけある鳥が見られたなど、具体的で地域性の高い情報が得られます。夏鳥や冬鳥がその年初めて観察できた日や渡りの日が特定できたり、それらの年ごとの変化を追うことができるようになりました。日本で数例しか記録のないカラアカハラが渡り途中に立ち寄っていたのが確認されたり、ここにもすむオオタカやツミなど猛禽類の行動パターンなど、地域の鳥たちと環境の間柄がはっきり分かってきたそうです。
「多くのメンバーで毎日みて、このフィールドが、鳥類が季節移動の途中で休息し栄養補給をする中継地だとよく分かりました。市街地の中に残された重要な緑のオアシスであり、守っていかなければならない場所であることを強く実感しています」。
(※写真:「会メンバーによる鳥類観察会」)

福井県・北川博正さん

鑑識眼でみる

福井県・北川博正さん(80年登録)
「クマハギ」とはクマが樹皮を剥いだ痕のこと。福井県の北川さんは、自宅近くの山で20年以上クマハギの観察を続けています。

スギに残されたクマハギ
  北川さんは、皮が剥がれた木を見つけると、「これはクマハギか」「そこに何が起きたのか」を探ります。クマがしたものかどうかは、(1)剥がされた皮の高さや長さを見、(2)ツメ痕や噛み痕を探し、(3)周辺にクマのフンがないか、フンの中に樹皮が含まれていないかを探し、シカなどの皮はぎと区別していきます。次は、「何のためか」。(4)クマハギはどんな樹種や樹形の木になされるのか、(5)どのぐらいの樹齢か、(6)どうやって剥がしたか(上からか下からか、手や口も使っているかなど)、(7)剥ぐ向きに規則性はあるのか、といったことです。またクマハギをする季節を知るため、春~秋まで山に入れる間は定期的に出かけ、観察を繰り返します。
「春、スギなどでは樹皮を剥いで木肌をかじっているのに、秋は噛み痕だけ。春と秋ではクマハギの目的が違うと思われることなど、クマそのものを見れなくても、クマハギをじっくりみることで自分なりにクマを知ることができるんです」。
(※写真:「スギに残されたクマハギ」)

山口県・原 隆さん

ものさしとしてみる

山口県・原 隆さん(05年登録)
20年以上、山口県でトンボをみ続けてきた原さんは、トンボの出現期・種類・数が近年大きく変化してきたと感じています。その原因は周りの環境が変わってしまったから。
「トンボは、卵から幼虫の時期は水中にすみ、成虫は地上に出てきます。一生涯を生きるには水と陸上の両方の環境が必要。だから、その環境のどちらか一方が変わっただけでも影響が出るのです。なので、大好きなトンボを観察すれば、いち早く地域の環境変化をつかめると思っています」。

アシ原でみつけたベッコウトンボ
  トンボの観察では、特に終齢のヤゴがいるかどうかに注目しています。成虫は翅を持っているので発見場所が発生地とは限らないため、水中にすむヤゴがいるかどうかで、そのトンボが生息し、繁殖し続けている環境かどうかを見分けます。
「最近では、地球温暖化によって各地で南方から飛来したトンボが確認されていると聞きます。僕自身も例えば山口で、九州が北限といわれてきたハラボソトンボを同じ場所で2年続けて見つけました。温暖化で越冬できるようになったということかもしれないと思い注目しています」。
(※写真:「アシ原でみつけたベッコウトンボ」)

一種をみ続ける

山口県・松田真紀子さん(01年登録)
引越してきた山口県・下関で偶然スナメリを見つけたことがきっかけで、スナメリ観察を始めたという松田さん。息子さんと一緒に毎日のように海辺に通ってひたすら海面を眺め、スナメリを見つけたら姿が見えなくなるまで観察を続けます。スナメリの行動と合わせて周りで起こる出来事に目を配ることも忘れません。
「スナメリが魚を狙って狩りを始めます。すると、必ずといっていいほどカモメが上空に集まってきます。このカモメをみていると、鳴き叫びながら水中にダイブして魚をくわえる狩りの仕方が分かったり、スナメリに追われて逃げまどう魚の群れの様子まで観察できるんです。すごい光景ですよ」。

陸からでも海の中の生きものを観察できる
  そして松田さんは、海面で見られるスナメリの行動から、その生態をつかんでいきます。
「毎日み続けたことで、14時ごろ砂浜の前を横切るように海峡方面へ行った群れが、17時ごろ戻ってくる、という行動パターンを見つけました。観察しづらい海の中の様子も、海面をじっと見つめることで垣間見られます。一部の光景でもこんなにすごいのに、海中ではどんな事が起こっているのかと、海の生きものの暮らしを想像しワクワクしています」。
(※写真:「陸からでも海の中の生きものを観察できる」)

埼玉県・田邉貞幸さん

植物園をホームグランドにする

埼玉県・田邉貞幸さん(03年登録)
田邉さんは、東京・文京区の地域住民が組織する環境NPOと協力しながら、東京大学小石川植物園で親子自然観察会を実施しています。この植物園では、武蔵野の植生に加えて、多種多様な植物が育てられています。どの季節に訪れても、参加者の興味を引く、花や実などを楽しめるポイントが園内に点在しているのが魅力です。

モミジバスズカケノキの表皮の中で越冬する生きものを、みんなで観察
  「植物園を利用することに特別な許可をいただいてはいませんが、事前に観察会実施予定をお知らせしています。入園には若干の料金がかかりますが、その分、自由に出入りできる公園とは違い、受付で入退場者のチェックが行われるなど、安全管理上の利点もあります。また一方で、入園者の利用目的はさまざまなので、ほかの方の迷惑にならないよう丁寧な心配りをしています」と田邉さん。
主に学術的な研究が目的とされる施設で、『身近な自然に目を向ける親子自然観察会』を地域の市民の手で開催し、実績を積み重ねることで、将来は大学との共催や講師派遣など、積極的な支援を得られるようになりたいと考えています。
(※写真:「モミジバスズカケノキの表皮の中で越冬する生きものを、みんなで観察」)

熊本県・田畑清霧さん

各地の活動情報を地域の活動に生かす

熊本県・田畑清霧さん(82年登録)
NACS‐J自然観察指導員講習会講師の田畑さん。普段は、地元熊本県で干潟や川の観察会を開いています。熊本県自然観察指導員連絡会の創設当初からのメンバーで、県内の保護問題にも活発に取り組んできました。自然を守る人を増やしていくことが必要であると考え、新しく指導員になった地元のメンバーに観察会のやり方や調査方法を紹介することに力を入れてきました。

地元の仲間と大分県の観察会にも行くこともあります
  「講師として全国を回るようになり、各地の活動やそこで活躍する人の存在を知る機会が増えました」。
田畑さんは、熊本に帰ると、各地の活動を連絡会の仲間に紹介したり、講習会で知った手法を研修会や自身の観察会でも取り入れていくようになりました。すると、仲間の指導員の視野も広がっていくようになりました。「自分も仲間も一番変わったことは、自分たちの地域の自然をほかの地域と比較して考えられるようになったこと」と言います。
田畑さんの活動は、地元とほかの地域の情報の橋渡しになり、それが仲間の活動の応援にもつながっています。
(※写真:「地元の仲間と大分県の観察会にも行くこともあります」)

持続的な農林水産業に活かす

里山管理を兼ねる

山形県・白壁洋子さん(99年登録)
山形県米沢市に住む白壁さんは、10年前に会社を辞め、林業技術を身につけ、林業の役割を伝えながら里山管理を行う「森の仲間たち」を立ち上げました。月に1度、管理を任されている個人所有の山で、参加者を募って下刈りや伐採などの里山管理の作業をしながら観察会を開いています。

『人と山の自然のつながりを伝えていきたい』と白壁さん
「ここには『自然観察をしたい』人と、『山の手入れをしたい』人の両方が来ます。どちらも片方の目的だけで満足するのではなく、両方を知ってもらいたいと思っています。だから、山の手入れ作業をしてもらったら必ずその作業の意味を伝え、そして、その場所の観察をするようにしているんです。例えばササを刈ったら、その場をその後も観察します。すると明るい場を好む多年草のウスバサイシンが生え、そこに産卵しにギフチョウがくる、という現場を目撃する……といった実体験で森のしくみを知ってもらえるんです」。
観察会を続けることが、少しずつでも山の状態をよくする=生態系を守ることにつながっている。白壁さんは、森を守るためにもこの「里山管理兼観察会」をずっと続けていきたいと考えています。
(※写真:「『人と山の自然のつながりを伝えていきたい』と白壁さん」)

天ぷらをつくる前に、採れた山菜を説明する辻谷さん(左)

都会人を一次産業の場に招く

奈良県・辻谷達雄さん(95年登録)
奈良県川上村で、「山の学校たっちゃんクラブ」を11年間続けている辻谷さん。
「私は、50年以上林業に携わってきましたが、高齢化や過疎化が進む村に活気を戻したいと常々思っていました。そこで考えたのが、都会の人を村に呼んで、林業地をフィールドにした自然観察会でした」。

『人と山の自然のつながりを伝えていきたい』と白壁さん
  辻谷さんの周りでは前例のないことで、チラシや新聞、ラジオなどあちこちに案内を出したり、講演会に出かけて宣伝をするという試行錯誤の連続でした。スタッフに観察会の様子をビデオに撮ってもらい、参加者がどんな反応をしているか分析もしました。参加者に何を知りたいかのアンケート調査も行いました。そうしたところ、村の人が自然とどうかかわって暮らしてきたかを知りたいという声が多く集まりました。
そこで、郷土食づくりや伝統的な道具づくり、植物の薬方などをテーマにした観察会を企画しました。山菜採りのときも林業地の中を歩いて、どんなところに植物があるか観察します。間伐をしてもらって、伐った直後の木肌に触れてもらいます。参加者は、水分が多いことに驚いています。このようなことを通して、林業地の現状や役割を伝えています。
今では、参加者が多いときは100人近くにものぼります。家族連れの参加者が多く、〝子どもがここに来ると元気になる〟というリピーターもいます。参加者の中には、郷土食に興味を持ち、都会に住む仲間を連れて村の人たちと交流を始めるようになった人もいるそうです。
「ここで生きてきたからこそ、伝えたいことがある」辻谷さんはそう言います。
(※写真:「天ぷらをつくる前に、みんなで採った山菜を説明する辻谷さん(左)」)

さまざまな業種で活かす

私塾をつくる

東京都・太田隆司さん(98年登録)
東京都・練馬区の太田さんは「ワンダースクール」という子ども向けの自然体験塾を主催しています。会費制で平日の放課後4クラスと週末3クラスの月15回の定期コース、月4~5回の選択コースを設け、子どもたちを河川敷などに連れていき、野遊びや観察をするプログラムを組んでいます。

『センス・オブ・ワンダー』をキーワードにした野遊びでこの表情!
  「定期的に親からも学校からも解放され、子どもだけで自由に自然の中で遊ぶ場をつくりたいと思って、『私塾』スタイルにしました。今の子どもたちは月曜から金曜まで学習塾やお稽古事が入ってる子がほとんど。親にも子どもにとっても、ここもお稽古事のひとつという認識みたいですが、だからこそ僕は先生としてではなく子どもと同じ目線の『ガキ大将』役となって、自然の遊び方やつき合い方を伝えています」。
太田さん一人で子どもをみられるように1回の人数は7人まで。学校が終わるころに塾生の家や学校前に迎えに行き、車で30分ほどの河川敷や公園に連れていきます。現在、80名ほどの小学生が在籍しています。
「毎月1~3回のペースで何年も続けている子が多いので、野遊びが原体験としてより深く身につくのではないかと思います。また、いわゆる『異年齢の遊び集団』として得られる効果もあるようで、私の代わりにガキ大将役をやってくれる子がいたり、子ども同士で問題を解決しようとしたりします。林床にアマナやノウルシが出る季節になると、『踏むなよ』と互いに注意し合うなど、自然の歩き方を身につけ合っているんです」。
(※写真:「『センス・オブ・ワンダー』をキーワードにした野遊びでこの表情!」)

地元では4つの立場で活動

山梨県・時田 恵さん(84年登録)
山梨県の時田さんは、講習会講師のほか、山梨県指導員連絡会の事務局、地域住民として「南アルプス自然クラブ」の代表、高校の教師、子どもを持つ母親などさまざまな立場で活動しています。

大人も子どもも、いつでも誰かと観察会をしている時田さん(右)
  高校では、生徒が自然と触れ合うことのできる場を積極的につくっています。自然科学部の顧問として野外調査を指導したり、生物の授業の一環として櫛形山で「自然科学教室」を行ったりしています。「楽しかった」「また行きたい」。生の自然と触れ合う喜びが生徒の感想に見られます。
「家庭では娘と自然観察を楽しんでいます。石も花も、彼女には大切な友だち。クモ嫌いではなくなったのも自然観察のおかげ。小学校高学年ごろからは自然観察会の手伝いをしてくれるようになりました」。
どんな立場であれ、自然観察指導員である一個人ができることは何かを考え、試行錯誤しながらも自然観察の視点を伝えている時田さん。
「それぞれの立場での活動が、自然を大切にする仲間を育てることにつながっていくと思います」。
(※写真:「大人も子どもも、いつでも誰かと観察会をしている時田さん(右)」)

静岡県・勝山智男さん

散歩も観察会と人材育成の場にする

静岡県・勝山智男さん(82年登録)
勝山さんが講師を引き受けたのは、里山の保全活動を通して、少しでも地域の自然を守るために活動する人が増えれば、世の中は動いていくだろうという想いからでした。

普段は工業高等専門学校で物理の授業をされるとともに、自然保護を伝えている勝山さん(右)
  「今は仕事が忙しくなり、定期的に観察会を開くことはできなくなりました。代わりに、身近なところで観察会をするようになりました。犬の散歩に出かけたときなど、その場で出会った人と自然観察をしています。見ず知らずの人でも一人一人を相手にしているので、ゆっくりその人のペースに合わせて観察できます。目の前で起こったことを題材に、教えるというより共感しながら、自然を守る大切さを伝えるようにしています」。
講習会では一度に多くの方に伝えることができますが、そのような形だけが人材育成の場ではないという勝山さん。「最近は、何気ない日常で出会った人に自然保護について伝えることも〝自然を守る人〟を増やす人材育成の機会のひとつと思っています」。
(※写真:「普段は工業高等専門学校で物理の授業をされるとともに、自然保護を伝えている勝山さん(右)」)

静岡県・勝山智男さん

あらゆる機会に自然保護の考えを伝える

青森県・小関孝一さん(87年登録)
青森県自然観察指導員連絡会事務局長、青森の自然環境を考える会代表、白神山地ブナ林モニタリング調査会事務局、白神山地自然解説活動連絡協議会、日本野鳥の会県支部、自然公園指導員……。地元青森の自然を守るため、会社勤めをしながら、数々の保護活動グループの中心的役割を担って活動しているのが、講師の小関さん。

『地域コーディネータ育成活動ともいえますね』と小関さん(中央)
  「人間とのかかわりなくしては自然保護は語れません。開発と敵対するだけではなく人間と共存する術を探り、コーディネートするのも指導員の役割だと思い行動していますし、地域にそういう人を増やしたいと思っています」。
講習会以外の場でも、〝自然を守る〟人を増やすことを考えて、いろいろな方法で自然の見方や自然保護を伝えています。
「例えば3~4日に一度、自身の観察日記を一斉メールで流していますが、そのときにも観察記録だけでなく、その自然と人とのかかわりまで書くように心がけ、自然観察の着眼点を伝えるようにしています。こうしたちょっとした行動でも、自然を守るために具体的なアクションを起こし得る人を増やすことにつながります」。
(※写真:「『地域コーディネータ育成活動ともいえますね』と小関さん(中央)」)

企業・団体内の生物多様性を守る活動に活かす

ホテルのサービスプログラムをつくる

長野県・新津栄市さん(95年登録)
八ヶ岳高原ロッジは、長野県・八ヶ岳連峰の東山麓にあるリゾート地で、ホテル・ロッジなどの運営、別荘地の管理、別荘物件の販売・仲介を主な業務としています。指導員で、社員の一人である新津さん。
「私は建築が専門ですが、例えば、別荘物件を販売する際は、営業・別荘管理・ホテル担当のスタッフが自分たちで敷地内の植生調査を行い、それらを分譲パンフレットに書き込んでお客様にご案内しています」。

ホテル宿泊者と別荘利用者を対象としたネイチャーウォーク
  ここでは、自然に詳しい専門スタッフをおいて自然解説業務を担当させるといった方法をとらず、指導員である社員を中心に、全社員がそれぞれの業務の中で自然を意識したおもてなしができるようになることを目指しています。
ほかにも、音楽堂でコンサートを行う際は、開催した翌朝にネイチャーウォークを実施し、音楽も自然も楽しんでいただけるサービスを行っています。レストランのウェイトレスも、食事をもてなすだけでなく、お客さんに窓の外にやってきた生きものの解説ができるよう研修を受けています。会社のホームページでは、『今日の八ヶ岳』というコーナーを設けて、社員が代わる代わる毎日の自然の様子を発信しています。
「自分の好きな園芸植物を植えるのをやめて、本来ある樹木や草花を生かす庭づくりを楽しむ別荘オーナーが徐々に増えてきており、効果が表れている手応えを感じています」と言う新津さん。社員・お客さん・取引先などかかわる人すべての自然に対する意識を高め、八ヶ岳全体の自然の特徴を踏まえた環境管理を実践しています。
(※写真:「ホテル宿泊者と別荘利用者を対象としたネイチャーウォーク」)

静岡県・勝山智男さん

大学の単位に組み込む

京都府・板倉 豊さん(84年登録)
環境教育の指導者として活躍するために必要な能力を育てることを目標に、京都精華大学が進める教育プログラムが環境教育指導者養成プログラムです。担当するのは、指導員の板倉先生。

ホテル宿泊者と別荘利用者を対象としたネイチャーウォーク
  「このプログラムを修了するには、学内の講座だけでなく、外部の団体が実施している講座を受講することも条件としています。外部の講座は、学内にはない実務的、現実的、社会的な要素を強く持っています。自然観察指導員講習会においては、一般社会人とともに受講することがNACS‐Jの共催条件になっており、学生だけの講座よりも社会的な緊張感を加えて実施できるという点が、大学側が講座として認める理由になりました」。
このプログラムを受講する学生たちは、自然を楽しんだり、新しい発見をしたりと自然への感性を磨いています。その結果は、地域のボランティア活動への積極的な参加、卒業論文の研究テーマにもつながっています。また、これらを生かし、自然系の公共施設や環境関連のNGO・NPOへと就職しています。
(※写真:「在学中の4年間、ボランティアスタッフを続け、それを卒業論文にした学生もいる」)

高校のカリキュラムに組み込む

佐賀県・前田修之さん(99年登録)
指導員の前田さんが教師として勤務する、佐賀県立唐津青翔高校では、環境コースとして「郷土の山・川・海」「海洋生物と環境」「環境調査」「自然観察実践」「環境の保全」といった独自の科目(「学校設定科目」)を持ち、自然環境を見る眼、考える力、伝える力を養っています。前田さんは、生徒たちと接していて、生まれ育った地元を好きという子が多いのに、地元の自然の価値をよく知らないということに気づきました。そこで、新高校再編整備推進委員会の委員に入り、前述の科目の設定を提案し、2年半の議論を経て実現しました。

自然観察を通して見えてきた自然を紹介する高校生
  「最初総合学習では、国語、英語、商業の先生と理科の私、合わせて4人・4グループがそれぞれの手法で実践しました。国語では、自然を観賞してそれを文章に表現する。英語では、海外の自然環境を英語のホームページで調べる。理科では、校庭や通学路で見られる生きものを観察したり、隣接する山でどんぐりやアケビを採って食べました。それぞれの先生が専門を生かしながら同じテーマに取り組み、生徒の感性を育めた1年間は、とても面白い時間となりました」。
(※写真:「自然観察を通して見えてきた自然を紹介する高校生」)

PAGETOP