伝えよう日本の自然

HOME > 参加型プロジェクト > 伝えよう日本の自然TOP > 第1話 自然解説「伝えよう自然の海辺の大切さ」

▲写真1: 松島の双観山付近からみた島々(2011年5月15日撮影)手前から恵比寿島と大黒島が見える。一部の樹木が葉を落としているのが分かる。

 複雑な海岸線を持つ多彩な海岸環境がもたらす自然の恵み


▲写真2: アカモク藻場に集まるヨコエビ

多島海(内海):豊かな漁場、景観美、防波・津波緩和
浅海:水生生物の餌場、魚介資源の養殖場
藻場:海草、海藻類、プランクトンや稚魚などのゆりかご、栄養循環
砂堆:稚魚のゆりかご、甲殻類の餌場・繁殖地、鳥類の餌場、昔ながらの漁法
磯・干潟:海水浄化・ウニやヒトデ・ゴカイ類、貝類、エビやカニの仲間の餌場・繁殖地、鳥類の餌場・繁殖地

 海辺ではどんなしくみで海水が浄化されている?


▲写真3: 海面に先端を漂わせる松島湾のアカモク

▲写真4: ロープに増殖させたアカモク

浅い沿岸域には陸域から豊富な栄養塩が流れ込むので、生物の生産性が高く、淡水から汽水、海水性の生態系へ移り変わる場であるため生物多様性が非常に高い。さまざまな生物が関与して物質循環を担い、水質汚濁の原因となる有機物、栄養塩などを浄化してくれている。

松島湾は、昭和30年ごろには湾全体の海底にアマモが繁殖していた。アマモ場は幼稚魚の保育場であり、葉と根が栄養塩を吸収したり、光合成で酸素を生産し水質を浄化する。しかし、陸からの水質汚濁、干拓、養殖による海面利用などによって多くの藻場が消滅し、湾の東部に一部残すのみとなった。このアマモ場も津波の影響で消失しており、自然の回復力が期待される。

長年にわたる水質・底質改善対策(松島湾リフレッシュ事業など)によって湾内の水質改善に一定の効果が認められたが、生物多様性の回復にはまだ至っていない。私たちは、かつて松島湾にもよく見られたものの船のスクリューに絡むため「ジャマモク」と呼ばれて除去されてきたアカモクに注目している。アカモクの葉には付着藻類が増殖し、それを食べる動物が集まり、魚が集まって豊かな海藻の森を形成する。また人々がアカモクを食べる(なかなか美味)ことで物質循環にかかわる。これは一例であるが、多様で豊かな海辺と人々のつながりを現代の暮らしにかなう形で蘇らせる浜の姿が松島にはふさわしいと思う。

(東北大学大学院工学研究科環境生態工学研究室教授・西村修)

 自然海岸はどのくらい減っている?

環境省の第4 回自然環境保全基礎調査の海岸調査(1988 ~92 年度)から第5 回海辺調査(1993 ~ 98 年度)で、自然海岸の距離の減少が最も大きいのは沖縄島(-49. 37km)で、次いで後しり志べし(-46. 84km)、三陸海岸(-37. 36km)、陸奥湾(-29.86km)。自然海岸の減少した割合が最も大きいのは陸奥湾(-32.93%)で、次いで鹿島灘(-30. 27%)、富山湾(-29. 90%)、遠州灘(-29. 88%)、福島の沿岸(-20. 91%)となっている。全国の海岸線の最新の調査が進んでいないことも大きな課題。


環境省「 第5回自然環境保全基礎調査 海辺調査総合報告書」より作成

 東日本大震災と松島


▲写真5・6: 松島湾奥の震災前(2/27)と後(3/19)のALOS/AVNIR-2の衛星画像(© JAXA)植生域を強調するために赤く表示してある。湾奥の島々の植生は津波直後では、ほとんど影響を受けていないようにみえる。ただし、写真の右上の地域では、低地が黒く表示されており、浸水している状況がうかがえる。

今回の大震災は東日本の広い範囲に渡り、特に大津波による甚大な被害を及ぼした。仙台平野の北端にあたる日本三景の「松島」は、比較的被害が少なかったことが報じられており、それが二百数十の島々が散在する多島海の特性によるものといわれている。震災後に仙台湾から松島、東松島まで現地を訪れての調査と衛星画像を解析したところ、外洋に面した奥松島と呼ばれる地域や島々では甚大な被害を受けたが、それらの島々が障壁となって津波の力を低減させ、湾奥の地域や島々での被害を少なくしたことは確かなようだ。ただし湾奥の地域まで津波は押し寄せ、小さな島は波をかぶり、一部の地域では地盤が沈下し浸水が続いた。松島の島々に生育するマツは主にアカマツだが、アカマツはクロマツに比べ塩害に弱い性質がある。湾奥の島でも海水をかぶったところでは、葉が茶褐色に変わった樹があった。継続的にモニタリングしながら植生の回復を見守っていくことが必要だ。

(東京情報大学総合情報学部環境情報学科教授・原慶太郎)

 自然海岸を守るしくみは?

日本の浅い海や干潟は、グラフのように埋め立てや護岸工事で減り続けているが、自然環境の保全を目的とした海辺の保護地域はこれまで非常に狭い場所にしか設定されていない。1970年に設置が始まった海中公園は、2010年4月に改正された自然公園法で「海域公園」と名称が変わり、生物多様性の確保に寄与することが求められている。しかし現在、例えば藻場の海域公園の指定面積は全藻場の0.2 %にも満たない状況であり、実効性のある保護策は乏しい。

写真提供  原慶太郎:1 西村修:2,3,4  JAXA:5,6

日本自然保護協会の海辺を守る活動

●海の市民調査
自然環境の急激な変化が進んでいる今、くらしをささえる豊かな自然海岸が急速に失われつつあります。私たち自身が自然の変化を記録し、変化の原因をつきとめ、環境保全に積極的にかかわっていくことは、海の生態系サービスを維持するためにも、より重要な活動になってきました。これまでNACS-Jでは、全国の海岸植物群落や沖縄沿岸の海草藻場・サンゴ礁で市民調査を続けてきました。今後も全国で自然海岸の市民調査を企画していきます。

●大切な海辺を守るしくみをつくる
今年の秋から冬に、海域公園や重要海域を選定する施策が予定されています。NACS-Jでは、専門家や各現地の研究者、市民グループとともに協力して、海辺を守っていくしくみをどのようにつくっていくべきか、積極的な提言を行うため、検討会、現地視察会を行っています。

自然の海辺を守る活動を応援してください。ご寄付はこちらから

NACS-Jでは、JustGiving Japanのしくみを通じて「自然の海辺を守る活動」へのご寄付を受け付けています。

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