自然しらべ2009「湧き水さがし」

ユニークレポート vol.3

各地から寄せられた代表的な湧き水の解説

11.自然の恵みの豊かさを感じる身近な風景

東京都東久留米市南沢(投稿者・よこたさん)

木立の中を澄んだ水が流れている風景は、住宅地にある湧き水には似つかわしくないほど美しいものです。現在も利用されている浄水所、弁天様をまつった氷川大明神など、人々が恩恵を受け、そのことへの感謝の念があったからこそ残った風景だと思います。
人だけが得をしているのではありません。周辺にくらす生き物もまた、等しく恩恵にあずかっています。それは、周辺の開発で消え去る運命にあった命のいくつかが、この湧き水によって現在も生息しえたことです。報告いただいた記録を見ると、セキショウやホトケドジョウ、ホタル類、淡水のエビ、カワニナといった水生生物がすんでいるとあります。また、記録には見られませんが、水温が低く、薄暗い流れや池があるという環境からすると、オニヤンマなどの流水性のトンボやゲンゴロウ、水草類なども発見できそうです。今後の観察を期待しています。(槐真史)

12.群を抜く美しさと豊富な水量

グダリ沼/青森県青森市箒場平(投稿者・三上京一さん)

青森県の八甲田山・田代代にあるグダリ沼は、駒込川の源流の一つ、突然幅10mくらいの川として現われる湧き水です。自然のブナに囲まれたなだらかな山肌に点在する水辺や草地、水面の水草、水際の立ち木は、美しいの一言に尽きる風景で、水量の豊富さとバイカモの群生の規模の大きさは群を抜いています。報告いただいた記録では、バイカモのほかにも、ヤナギモやたくさんのイワナなど、水温が低く澄んだ水辺や水の中にすむ生き物の大切なすみかになっていることがわかりました。
この沼と川が八甲田山系に位置することから考えると、カエルやサンショウウオ、ルリイトトンボ類のような寒冷地性のトンボや、ゲンゴロウなどの水生昆虫、バッタやキリギリス類などの中にも特色ある種類が生息していると思われ、今後の観察に期待します。でも、名前になっている『グダリ』とは、いったい何を意味するのでしょうか。(槐真史)

13.農村での多彩な湧き水利用

新潟県塩沢市栃窪(投稿者・Yさん)

魚沼の谷を見下ろす斜面に作られた静かな山里で、棚田への水として利用されているたくさんの湧き水がある地域です。流れだけではなく、稲がよく育つように湧き水の冷たい水の水温を上げる目的に作られた小さな池や、融雪のため家の周囲をめぐらせた池など、雪国で育まれた生活の知恵がたくさん見られるところです。また、高低差による微細な環境の変化もあって、池や流れが均一ではないなど、さまざまな水辺環境があることから、生物相はとても豊かなものになっています。
寄せられた記録からみると、池に生息するバイカモや産卵のために池を利用するモリアオガエル、小さな流れにできた溜まり水に見られるクロサンショウウオ、カワトンボ類など、すべてがこの地域における良好な水辺を示す生物指標となっています。報告には見られなかったものですが、いろいろな水草類や魚類、サナエトンボ類、淡水貝類もすんでいると思われ、この塩沢という地域にとって重要な生物種が生息している可能性が高いです。環境を荒らさないように注意しながら水の中を調べてみると、もっと多くの発見があるかもしれません。(槐真史)

14.渇水対策のためにつくられた多くのため池

うわい出水/香川県高松市香川町(投稿者・akiraさん)

香川県高松市のある讃岐平野は、瀬戸内式気候のため降水量が少なく、昔から水不足に悩まされてきたところです。稲作の時期に水が不足すると旱魃となり食べ物がなくなってしまいますので、それに備えて各地に溜め池が作られ、一帯は全国でも有数の溜め池が分布する場所になっています。しかしそれでも十分でないため、平野の南側の阿讃山地(讃岐山脈)の山麓に広がる扇状地では、山からの湧き水の利用が徹底して進められてきました。香川町の「うわい出水」も、そうした湧水の一つでしょう。
阿讃山地は、讃岐平野と、中央構造線に沿ってできた南の徳島平野の間にそびえる断層山地で、山地の北側は断層で境ができているため、それに沿って湧水が分布しています。それにしても、「うわい出水」の「うわい」とはどういう意味なのでしょう。(小泉武栄)

15.湧き水を守っているお寺や神社に感謝

龍興寺清水(りゅうこうじしみず)/長野県下高井郡木島平村(投稿者・Kさん)

長野県木島平村の内山地区は、小さな扇状地の扇頂近くに位置する小さな集落です。その集落の一番上の、背後に山を背負うところからは、きれいな清水がこんこんと湧き出しています。1日の湧水量は1,200トンを超えるといわれており、かつてこの地にあった寺の名前をとって「龍興寺湧水」または「龍興寺清水」と名づけられ、村の天然記念物として大切にされています。今は庭園風に整備されていますが、「平成の名水百選」の一つに選ばれ、たくさんの人がこの湧水の水を汲みにやってきます。この泉の水を使って、江戸時代初期に和紙作りが始まり、北信地域一帯に広まったそうです。この和紙は「内山紙」と呼ばれ、品質が大変よいことで知られていました。「内山和紙発祥の地」の石碑もあります。湧き水から500mほど下がったところには、「蓮寺」と呼ばれる稲泉寺があり、3haもある蓮田ではみごとな蓮の花が見られます。(小泉武栄)

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