自然しらべ2009「湧き水さがし」

ユニークレポート vol.2

各地から寄せられた代表的な湧き水の解説

6.弘法大師のいいつたえ、旅人のための水

弘法清水/山形県鶴岡市(投稿者・出羽三山の自然を守る会さん)、弘法の泉/群馬県桐生市(投稿者・西村豊さん)、弘法の水/神奈川県南足柄市投稿者・一寸木肇さん)

弘法大師さまが関係する湧き水が、全国各地にありました。山形県鶴岡市の上名川にある「弘法清水」は、今はちょろちょろ流れ出る湧水ですが、弘法大師が休息したところと言い伝えられ、旅人に水を提供するという大事な働きを続けてきた湧き水です。なかなか素敵な看板が掛けられています。群馬県桐生市の新里町奥沢にも「弘法の泉」があり、ちょろちょろとした流れが小川をつくっていますが、ここでは、弘法大師が杖で地面をたたいたところから湧き出したと言い伝えられているそうです。また、神奈川県南足柄市の苅野というところには「弘法の水」と名づけられた湧水があり、今もこんこんと湧き出る流れの中には清流の象徴の一つであるサワガニもくらし、この土地の地主さんは「この湧き水があることを誇りに思っている」と言われているそうです。これらは、「水は、すべての命の源」であることを忘れてはならないと、あらためて思い出させてくれる湧き水でした。(横山隆一)

7.名前がユニークな谷津田の泉

いっせん木/千葉県木更津市馬来田(投稿者・矢那川を楽しむ会さん)

千葉県の木更津市付近には、今から約13万年前、海面の高さが今よりかなり高かった時期に堆積した、海成の砂層からなる台地が広がっています。これは、成田空港や千葉市街がある(載っている)台地と同じ時期にできたもので、いわばその南西に延びる土地の続きにあたる場所です。ただ、木更津辺りでは同じ地形面であっても隆起が激しいので、全体はもはや台地とはいえず、ほとんど丘陵地と化しています。この丘陵地には侵食谷がよく発達し、手の指のような形に伸びる谷の中は谷津田となっていて、この小さな谷の一番奥からほぼ例外なしに湧き水が湧き出しています。この泉の存在が、細長い谷の中に田んぼを作ることができた理由です。
「いっせん木」もそうした湧水の一つで、水がこんこんと湧き出しています。泉に続いて水路と湿地があり、セキショウ、セリ、セキショウモなどの植物が群落をつくっているほか、カワニナやいろいろなトンボ類などが生息し、豊かな自然環境が広がっています。名前が面白いのですが、語源ははっきりしていません。(小泉武栄)

8.地域の七不思議、間歇冷泉

時水(ときみず)/福井県越前市蓑脇町(投稿者・No nameさん)

福井県越前市、蓑脇町の鞍谷の郷にある太平山の中腹に、一の滝というところがあります。この標高320メートルにある小さな洞窟の奥の岩壁から吹き出るのが、地域の七不思議の一つとされる、湧水量が不定期に増減する「間歇冷泉」の「時水」です。湧水量は、毎分15リットル程度から600リットルを超えるまでに変化するといい、50分程度で元の水量に戻るといわれています。この水音は昔、山仕事をした人たちの時計代わりとなり、二時間(一刻)を知ることができたといわれているそうなのですが、時代が変わる間に間歇の間隔も変化しているようです。
湧き水の近くには、ウワバミソウ、サワガニ、ハコネサンショウウオなどがすみ、湧き出した水は飲み水や水田、アユの養殖にも使われ、鞍谷川に流れ込んでいます。間歇冷泉は鳥取県以北ではここだけで、日本では岡山県の「潮滝」・広島県の「一杯水」・福岡県の「満干」・熊本県の「息の水」の5ヶ所が知られているといいます(「時水を守る会」資料より)。この水音は、環境省の「残したい日本の音風景100選」にも選ばれたそうです。(横山隆一)

9.アユが泳ぐ天然の湧き水プールが!

嘉島町湧水公園、湧水プール/熊本県上益城郡嘉島町(投稿者・にわか調査隊さん/立田山自然探検隊さん)

膨大な湧水で有名な熊本県にあって特にユニークなのが、熊本市の南部に位置する上益城郡嘉島町下六嘉にある「嘉島町湧水公園」と「嘉島湧水天然プール」です。
九州山地に源を発する緑川の中流域にあり、こんこんとと言うよりも平らな地面からどっと湧き出す大量の水の存在感は、言葉どおり圧倒的です。この湧水天然プールは、遊水地から始まる川の一部にスリットのある木枠を設置したすべて木製のプールで、底には小石が敷きつめられ、周囲から何万トンもの水が湧いている真っ只中に作られています。水の中に潜ると、自然にくらすアユ、カワムツ、オイカワなどの魚たちが泳いでいて、「魚に泳ぎを教わるプール」という別名がついているとのこと。カワニナや、マシジミという淡水にすむシジミ貝、クロイトトンボなどのイトトンボ類も観察できます。このようなプールは、日本でここだけではないでしょうか。過去には水害の被害にもあわれたところだそうですが、今、町の人たちの誇りになっている湧水は、自然の恵みそのものだと思います。(横山隆一)

10.地表に鍾乳石ができている!

鹿児島県大島郡喜界町(投稿者・隆さん)

日本列島の南に位置する南西諸島は、鹿児島県の屋久島に近いトカラ列島だけが、いくつもの活火山を擁する火山島からできていますが、奄美諸島より南は、琉球列島や先島諸島を含め、大半が厚い石灰岩でできた島々です。石灰岩地域では、岩にできた割れ目から雨水が地下に浸透して、石灰岩の岩の内部を溶かし、地下に鍾乳洞の名でよく知られている、カルスト地形と呼ばれる特別な地形ができます。したがって、地表は乾燥している場所でも、地下には豊富な地下水のあることが珍しくありません。この地下水は、石灰岩台地にできた谷間から湧き水となって地表に現れるのですが、今回報告のあった奄美大島の南東側にある喜界島の場合、山からの湧き水の中に石灰分が多く含まれているため、いろいろな鍾乳石が小規模ながら地表にできているというところがとても特徴的です。このような湧き水は、全国的にみてもきわめて珍しいものだと思います。(小泉武栄)

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