自然しらべ2008「カマキリ」

人の暮らしとのかかわり

カマキリは、実は古くから人々の暮らしとかかわりが深い昆虫です。「生き物のことは詳しくないから」という人や、知る機会がないまま「虫が苦手」になってしまった人も、カマキリにまつわる歴史や文化の話題を交えながらカマキリさがしに誘えば、生き物をみることの面白さや自然を守る大切さに気づいてもらえるかも。


※会報『自然保護』2008年7/8月号より転載

1.カマキリの多彩な地方名・方言

カマキリは、胸の前でカマをそろえるポーズが「祈り」を連想させるとして、日本では古くから“オガミムシ”などと呼ばれています。英語でも、「Praying mantis祈り虫」と言います。
また、カマキリにイボを咬み切らせる、あるいはカマキリをすりつぶしてイボに塗るという薬効から、イボムシなどの異名が残っています。 古来から地域ごとに呼び慣わされてきた地方名や方言は、その地域の暮らしに根づいた言葉であり、大切にしていきたい文化です。

都道府県別のおもな地方名・方言

北海道 カマキリ、カミキリ(ムシ)、オガモ、オガマ(ッショ)
青森県 マキリ、カミキリ(ムシ)、イボクイ、イボトリ(ムシ)、ハエトリ、タイコハタキ、タイコンブチ
岩手県 カマキリ、イボクイ、イボトリ(ムシ)、イボムシ、デンガ(イボ)、ハエトリ、タイコハタキ、タイコンブチ、ザトー
宮城県 カマキリ、イボムシ、ハエトリ
秋田県 カマキリ、カミキリ(ムシ)、イボムシ、デンガ(イボ)、ハエトリ
山形県 カマキリ、イボムシ、ハエトリ、タイコハタキ、タイコンブチ
福島県 カマキリ、イボムシ、ハラタチ
茨城県 カマキリ、カマギ ッチョ、オガミ(ムシ)、イボクイ、イボトリ(ムシ)
栃木県 カマキリ、カマギッチョ、オガミ(ムシ)、トーロー(ムシ)、トーロンボー、イボクイ、イボトリ(ムシ)
群馬県 カマキリ、カマギッチョ、カミキリ(ムシ)、トカゲ、トカケ、オガミ(ムシ)、トーロー(ムシ)、トーロンボー、ハエトリ、ハラタチ
埼玉県 カマキリ、カマギッチョ、トカゲ、トカケ、トーロー(ムシ)、トーロンボー、ハエトリ、ハラタチ
千葉県 カマキリ、カマギッチョ、カミキリ(ムシ)、トカゲ、トカケ、イボクイ、イボトリ(ムシ)、ハラタチ、ザトー
東京都 カマキリ、トカゲ、トカケ、トーロー(ムシ)、トーロンボー、ゲンベーメ
神奈川県 カマキリ、カマカケ、トカゲ、トカケ、イボクイ、イボトリ(ムシ)、イボジリ、エンボージ(リ)
新潟県 カマキリ、イボクイ、イボトリ(ムシ)、イボムシ
富山県 カマキリ、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、デンガ(イボ)
石川県 カマキリ、カマタテ(ムシ)、カミキリ(ムシ)、オガモ、オガマ(ッショ)、ハエトリ
福井県 カマキリ、カマタテ(ムシ)、カミキリ(ムシ)、オガミ(ムシ)
山梨県 カマキリ、トカゲ、トカケ、トーロー(ムシ)、トーロンボー、イボジリ、エンボージ(リ)
長野県 カマキリ、トーロー(ムシ)、トーロンボー、イボジリ、エンボージ(リ)タイコハタキ、タイコンブチ
岐阜県 カマキリ、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)
静岡県 カマキリ、カマカケ、カマギッチョ、オ(ン)ガメ
愛知県 カマキリ、オ(ン)ガメ
三重県 カマキリ、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)
滋賀県 カマキリ、オガミ(ムシ)、オガモ、オガマ(ッショ)
京都府 カマキリ、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、モットイムシ
大阪府 カマキリ、カミキリ(ムシ)
兵庫県 カマキリ、カマカ ケ、カミキリ(ムシ)、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)、ホトケウマ、ザトー、モットイムシ
奈良県 カマキリ、カ マタテ(ムシ)、オガモ、オガマ(ッショ)、ホトケウマ
和歌山県 カマキリ、オガミ(ムシ)、オガモ、オガマ(ッショ)
鳥取県 カマキリ、 カマカケ、カミキリ(ムシ)、ハエトリ、ザトー
島根県 カマキリ、カマカケ
岡山県 カマキリ、カマカケ、カマタテ(ムシ)、トーロー(ムシ)、トーロンボー、ハエトリ
広島県 カマキリ、カマカケ、カマタテ(ムシ)、カミキリ(ムシ)、トーロー(ムシ)、トーロンボー
山口県 カマキリ、カマカケ、カミキリ(ムシ)
徳島県 カマキリ、ホトケウマ、イボジリ、エンボージ(リ)
香川県 カマキリ
愛媛県 カマキリ、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)、イボジリ、エンボージ(リ)、ヘンボ
高知県 カマキリ、カミキリ(ムシ)、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、イボジリ、エンボージ(リ)、ヘンボ
福岡県 カマキリ、カマギッチョ、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)
佐賀県 カマキリ、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、チョーランマイ
長崎県 カマキリ、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)、チョーランマイ
熊本県 カマキリ、カミキリ(ムシ)、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)
大分県 カマキリ、カマギッチョ、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)、トーロー(ムシ)、トーロンボー、チョーランマイ、モットイムシ
宮崎県 カマキリ、カマギッチョ、オガミ(ムシ)、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)、チョーランマイ
鹿児島県 カマキリ、オ(ン)ガメ、オガモ、オガマ(ッショ)、チョーランマイ
沖縄県 イシャトゥー(マイ)、サール(ー)、マーミーシ(ャ)トゥー

2.中国の故事「蟷螂の斧(とうろうのおの)」

中国の春秋時代、斉の荘公が乗る馬車にカマキリがカマを振り上げて立ち向かったという中国の故事から、弱い者が自分の力をわきまえずに手向かいすることをたとえて「蟷螂の斧(とうろうのおの)」といいます。

3.祇園祭の山車「蟷螂山(とうろうやま)」

京都の祇園祭で、最大の呼び物といえば山・鉾の巡行。その中に、前述の「「蟷螂の斧(とうろうのおの)」のたとえに由来する、からくり仕掛けのカマキリを 乗せた「蟷螂山(とうろうやま)」、別名「かまきり山」という山車があります。

南北時代に足利義詮と戦って死んだ四条隆資卿の武勇ぶりにちなみ、後に四条家の御所車にカマキリを乗せて巡行したのが始まりと言われています。「蟷螂の斧(とうろうのおの)」は風刺して言うことが多いですが、祇園祭では、カマキリは神、あるいは神の能力をもった使者として崇められています。

▲山車の上のカマキリは、クジラのヒゲをばねに使った木彫りのからくり人形。
車輪と連動して首や手鎌、翅が動く。(写真:幽黙)

▲蟷螂山(とうろうやま)のちょうちん。
(写真:幽黙)

▲山車の飾りの金具も美しい。
(写真:幽黙)

▲蟷螂山(とうろうやま)の縁起物のひとつである日本手ぬぐい。(写真:幽黙)

4.カマキリの化石入り琥珀発見

2006年10月に岩手県久慈市で、約8700万年前(中世代白亜紀後期)の地層からカマキリの化石が入った琥珀が日本で初めて発掘されました。 白亜紀のカマキリの琥珀は珍しく、世界でも8例目。前脚に小さなトゲがあり、これまで見つかった原始種のカマキリと現代のカマキリの中間的な特徴を持っていることから、カマキリの進化の研究に役立つことが期待されます。

▲カマキリの化石が入った琥珀(写真:久慈琥珀博物館)

参考資料:定本柳田国男集(筑摩書房、1969年)/日本方言大辞典(小学館、1989年)/学研漢和大字典(学研、2005年)/『京都祇園祭手帳』(河原書店、2007年)/久慈琥珀博物館発表資料。
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