大規模開発の迫った京阪奈丘陵の里山での市民による生き物調査の実施Local resident's on current biodiversity in the nature field of Keihanna hills that is threatened with large scale land divelopment.

著者名Authors

生駒の自然を愛する会 Ikoma no Shizen wo Aisurukai

琢磨千恵子Chieko Takuma・ 有山泰代Yasuyo Ariyama・ 小川貞子Sadako Ogawa・ 森田美香Mika Morita・ 酒井宏光Hiromitsu Sakai・ 渡辺雄二Yuji Watanabe・ 足立明久Akihisa Adachi・ 武市博人Hiroto Takeichi1)・ 岸基史Motoshi Kishi2)・ 山田朋彦Tomohiko Yamada3)・ 藤田朝彦Tomohiko Fujita4)・ 鈴木佳子Keiko Suzuki・ 森本静子Shizuko Morimoto5)・ 林美正Yoshimasa Hayashi5)・ 八尾保男Yasuo Yao5)・ 石橋和彦Kazuhiko Ishibashi5)・ 佐藤秀夫Hideo Sato5)・ 望月基典Motonori Mochizuki5)・ 渡辺隆夫Takao Watanabe5)

著者所属Affiliations

  1. 1) 西宮甲山高校
  2. 2) 同志社大学経済学部
  3. 3) 京都大学
  4. 4) 近畿大学農学部
  5. 5) シニア自然大学水生生物研究科

1. はじめに

奈良県生駒市(高山地区)の里山は関西学術研究都市として288haに及ぶ宅地開発予定地になっている。当会はオオタカなどの猛禽類をはじめ、多くの絶滅危惧動植物が生息する地元の自然を保全する目的で、自然観察会や生き物調査を行っている。開発予定地内には300箇所以上のため池が散在し、これらのため池が淡水魚類の地域個体群維持に重要な役割を果たしてきたと言える。2001年にいくつかの池を調査したところ、アセスメント調査では記録のないカワバタモロコ(絶滅危惧IB類)を確認し、また、形態的にニホンバラタナゴに類似した種も確認した。これら淡水魚類の保全を提言するためには、ため池群の生物相の把握が重要と考え、市民による生き物調査の一環としてため池調査を助成事業のテーマとした。

2. 方法

開発に先立つ道路計画が差し迫っていることから、まず、道路計画予定地周辺のため池約60ヶ所の調査から始めた。高山地区のため池は棚田の上部に配置されたものが多く、300m2前後の小さなものが多い。水深も1mを超えるものは少なく、池の水は雨水や高山用水からの供給によっている。2002年秋から2003年春にかけて予備調査を行い、池の場所確認と周辺植生や池の環境調査を行った。2003年5月から2003年11月の本調査では、ため池一つあたり、モンドリ(魚のトラップ)2個を30分放置すると共に、タモ網による採集(2人×30分)を行った。また、目視や、一部の池では投網や釣りによる採集も併用した。

3. 結果

調査した池40ヵ所のうち、オオクチバスの観察された池は2ヶ所、ブルーギルを確認した池は10ヶ所と少なかった。これらが生息していた池では他の魚種の出現が乏しく、トウヨシノボリ、ギンブナが採集されたのみであった。オオクチバス、ブルーギルを確認していない池では、ヌマムツ、カワバタモロコ、モツゴ、コイ、フナ類、タイリクバラタナゴ、シロヒレタビラ、メダカ、トウヨシノボリ、ドンコ、ウキゴリ類が確認された。環境省による絶滅危惧II類のメダカは7ヶ所(17%)で、IB類のカワバタモロコは2ヶ所(5%)で確認された。貝類ではドブガイ、オオタニシ、サカマキガイ、モノアラガイが、甲殻類ではアメリカザリガニ、スジエビ、ヌマエビが確認された。水生昆虫については、トンボ目のギンヤンマ、オオヤマトンボ、コシアキトンボ、シオカラトンボ、イトトンボの仲間などの成虫とヤゴ、半翅目のオオアメンボ、アメンボ、イトアメンボ、タイコウチ、ミズカマキリ、マツモムシなど、さらに鞘翅目のゲンゴロウ科3種、ガムシ科3種、その他カゲロウ目、カワゲラ目、トビケラ目の昆虫各1種が確認された。水生植物ではオオカナダモ、スイレン、ヒシ、マツモ、イチョウウキゴケが確認された。ニホンバラタナゴ類似種についてはサンプルを専門家に同定していただいた結果、タイリクバラタナゴとの交雑種であることが確認された。

4. まとめ

調査の結果、外来魚(バス科)がため池の生態系に及ぼす影響が明らかになった。一方で、道路計画予定地および隣接地域の8ヶ所で絶滅危惧種が生息していることも分かった。たとえため池が埋め立てられずに残されたとしても、道路の開発によって人が入り込みやすくなると、これらの池へ外来生物が侵入する危険性が増える懸念がある。これらの種の地域個体群維持のためには開発計画を見直す必要があると思われる。今後、開発計画の見直しを関係省庁に提言する必要があり、市民の声を施策に反映させるためには世論形成が重要な課題となってくる。この助成事業には延べ125人の市民が参加し、身近な水辺環境であるため池の自然に親しみ、その再生や保全を考える契機となった。世論形成をスタートさせるための調査活動になったと考えている。

開発予定地では、会の生き物調査で今年オオタカの営巣を確認している。イヌセンブリ、スズサイコなどの絶滅危惧動植物も多数確認している。生物多様性を維持するためには、里山の保全策が早急に必要と思われる。

5. 今後の取り組み

今回の調査は高山ため池群の10%の調査を終えたに過ぎず、全体の生物相把握には至っていない。来春から調査を再開し、継続する予定である。

最後に、この調査に当たっては、多くの市民の方々や近畿大学、京都大学、同志社大学、シニア自然大学水生生物研究科の方々の協力を得た。ここに謝意を表す。

写真1 シニア自然大学水生生物研究科の協力

写真1 シニア自然大学水生生物研究科の協力

写真2 ため池調査風景

写真2 ため池調査風景

写真3 親子連れでたくさんの方が参加

写真3 親子連れでたくさんの方が参加