谷戸田に基層文化を探るA Study of Traditional Local Lives around Paddy Fields of Yato, Yamasaki, Kamakura
著者名Authors
山崎の谷戸を愛する会Yamasaki no Yato wo Aisuru kai
相川明子Yoshiko Kondo・ 石井揚子Chizuko Muto・ 斉藤直子Shingo Shinoda・ 淡中京子Takeo Kouyama・ 坂斎明Ryoko Yamada・ 丸尾早苗Sachiko Kobayashi・ 丸山淑子Jin Karube
里山景観、谷戸の生態系が残る「山崎の谷戸」は、1966年の都市計画決定で鎌倉市の公園に指定されて以後、手入れが徐々に放置されたが、1990年に「鎌倉中央公園基本計画」が発表された。同時に「山崎の谷戸を愛する会」を発足させ、「谷戸を生かした市民参加の公園づくり」を目指して活動を始めた。平成の世まで残ったわずかな田んぼを維持したいために、会ぐるみで弟子入りして谷戸の米作りを習ったり、炭焼き窯づくりを古老に学んだり、会の出発点である青空自主保育「なかよし会」を中心に、子どもの遊び場としての谷戸の重要性を周知するための企画を行ったりと、様々な方法手段で目的達成のために活動してきた。1996年に市は「修正案」を出し、田んぼや湿地が少しは残ることになったが、「防災公園」の名目で国の補助金を申請しているため、従来の土木工事による一般的な都市公園になりつつある。この時代に逆行した計画を幾らかでも食い止めるための、ほとんど最終手段として、このたびの記録集づくりが急がれた。
実際に山崎で、燃料革命、肥料革命以前の「谷戸の百姓」をされていた方は数少なくなっており、昔の知恵を聞き取っておく緊急性を実感していたが、目の前でどんどん破壊されていく里山景観がどれほど貴重であるかを、昔のくらし方を学び、まとめることで訴える必要も、一刻を争う状態になってきた。
聞き取り調査を約25人に行い、昭和の初めから戦前頃を中心にした谷戸での農作業の詳細を記録することから、昔の暮らしや、今も残る古式ゆかしい年中行事についてをまとめ、さらに山崎の地名や史跡の地図、今はなきかつての谷戸の写真をできるだけ多く掲載した。本来は重要な民俗調査なので、時間をかけてじっくり聞き取りを行い、質の高い記録集を出したかったし、本助成を受けるにあたってもその点を期待されていたのだが、進行する土木工事に危機感を募らせ、時期を早めて出版の運びとなった。素人の稚拙なまとめではあるが、山崎の多くの方々の積極的な協力により、地域の歴史の記録としても少しは役に立つことができたと思う。
さて、発刊して新聞等に紹介されると、注文が殺到して好評な売れ行きを示した。特に山崎の地元の方々は、「本来は自分たちがやるべきことを代わりにまとめてくれた」と、感謝の意を表された。また、地元の歴史学者は全編にわたる間違いを指摘され、2001年8月には「訂正箇所」のプリントを印刷して、ほぼ完璧な記録集となった。行政もこれを参考にして、今後の整備計画や管理運営を検討してほしい。
付記

写真1. 記録集「かまくら・山崎 谷戸と暮らし」

写真2. 市民農業体験田畑

写真3. 草取りをする子どもたち

写真4. 元地主さんに聞き取りをする