1999年になって海岸法に「海岸環境の整備と保全」、「公衆の海岸の適正な利用」が追加される改正が行われました。この改正で、日本のほぼすべての海岸線は都道府県知事が管理する海岸保全区域とそれ以外は市町村長が管理し、環境保全や適正な利用のために、自動車の乗り入れなどの私的利用が制限されるようになりました。国や県が事業者である沖縄県の泡瀬干潟の埋め立て事業にも、環境監視と保全策を担保するための委員会が設置され、NACS-Jなどの専門家や地元市民団体などから委員として参加できる場もつくられるようになりました。
しかし、こうした委員会が開催されて、開発に対し自然保護上の問題があることが指摘されても、埋め立て工事が進行しています。泡瀬干潟の埋め立て事業では、調査の精度、環境保全の代替策や工法などにさまざまな問題点が指摘され、見直しの声が出ましたが、事後調査で対応するという見切り発車で環境影響評価の手続きは進み、抜本的見直しが行われることなく、2002年に着工されてしまいました。干潟の生物多様性に重大な影響を与える埋め立て事業に対して、抑止力となる包括的な海辺を守るしくみが必要になっています。
1980年代までは、湿地や干潟、サンゴ礁を含む浅海域は干拓や土地造成のために躊躇無く埋め立てられ続けてきました。東京湾、瀬戸内海を中心に工業用地として埋め立てが急増し、海岸の造成で潮流の変化や産卵場所の激減で沿岸の漁獲は減り、漁業補償による漁業権放棄が進みました。そのような時代に野鳥愛好家が渡り鳥の重要な中継地として干潟の保護運動を始め、全国的な干潟の保全活動が広がりました。特に昭和20年(1945年)から平成10年(1998年)の53年間の間にも約4割が失われました。これまでの干潟の消失原因で最も多いのが埋め立て(42%)です(第4回自然環境保全基礎調査1994)。
海辺に関する法制度は公有水面埋め立て法と海岸法が代表ですが、公有水面埋め立て法は埋め立て事業について知事の免許を規定するもの、海岸法は津波、高潮、波浪などによる被害から海岸を防護することを目的に制定されたものです。公有水面埋め立て法でも、面積50ha以上もしくは環境影響評価法対象の40ha以上の埋め立てに関しては、環境大臣の意見を聴取することになっていますが、事業ありきのずさんな環境アセスメントの結果、海辺や湿地の持つ生物多様性の重要さや希少さ、生態的機能、社会的機能の価値を十分評価せずに、1994年福岡の和白干潟の人工島建設や1997年の諫早湾の堤防締め切りが行われました。日本自然保護協会が発表した「全国の主な干潟の現状調査(1998)」でも、少なくとも日本の主な干潟36カ所のうち半数以上の干潟が、埋め立てや港湾施設等の開発計画により危機にさらされていました。
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