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「那覇空港滑走路増設事業に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見・助言」への意見書

2013.08.07
要望・声明

「那覇空港滑走路増設事業に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見・助言」への意見書(PDF/149KB)


2013年8月7日

国土交通大臣
太田昭宏 殿

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

「那覇空港滑走路増設事業に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見・助言」への意見書

2013年8月5日に環境大臣より国土交通大臣に対し「那覇空港滑走路増設事業に係る環境影響評価に対する環境大臣意見・助言」が提出されました。日本自然保護協会は、沖縄のサンゴ礁域の生物多様性の保全を訴えてきた立場から、特に留意すべき点として以下を強調します。

この意見・助言には、大きく分けて9項目の分野にわたっていますが、いずれも重要なものです。とりわけ、「2.潮流・底質について」、「3.海草藻場及びカサノリ類について」、「4.サンゴ類及びクビレミドロの移植について」、「7.埋立用材及び緑化資材について」、「8.環境監視委員会について」は重大な指摘なので、国土交通大臣においては、洩れることないよう実行していただきたい。

1.潮流のシミュレーション

海域の保全にあたっては、海域に大きな構造物を作ることによる潮流の変化の予測が鍵を握る重要な要因の一つになります。海草藻場やサンゴ類、底質、堆積物への影響を予測するにあたり、潮流の正確なシミュレーションを行うことを考慮していただきたい。

2.生き物の移植

移動させやすい生き物のみに絞って移植することは環境保全措置として適切ではありません。移動・移植を環境保全措置としている生物種や生態系については、移動・移植以外の保全措置を検討した上で、具体的に明記していただきたい。仮に、サンゴや海草の移植、サンゴ礁の移築等を試みるのであれば、事業全体の工程のなかで、いつどの位の量を移植するのか、どの種を用いるのか、どの方法を用いるのか、先行事例を示し、具体的に示すべきです。

また、サンゴや海草の種類や群体型等を全く考慮せず、被度のみを確保すれば良いという偏った考え方に基づき移植や造成等の措置を検討していることは、生物多様性保全の観点からは不適切です。

クビレミドロについては中城湾港(泡瀬地区)における移植実験は室内でしか行われておらず、フィールドでの実験は準備書に記載されている結果では不十分です。室内実験では上手く出来ることが、フィールドでは出来ないということは現在までの経験からよくあることであり、現段階では移植技術が確立しているとは言えないため、これをもってフィールドでの移植を行うのは早計です。

さらには、移動・移植を環境保全措置としている生物種や生態系については、移動・移植先の環境への影響も併せて具体的に明記していただきたい。

3. 埋立土砂

沖縄の自然は脆弱な島嶼生態系であり、他地域から移入される生物や物質に対しては、厳重な配慮が必要です。購入土砂の利用については、島嶼部特有の生物多様性を保全するために、より一層の監視と保全対策の実行が必要です。

4. 環境監視委員会

今後設置される環境監視委員会(仮称)については、委員の氏名と専門分野を公表し、市民に公開して行うことを求めます。

埋め立ては、サンゴ礁の自然に不可逆的な変化をもたらすものであり、一度行ってしまうと、もとに戻すことは不可能ですので、事前によく検討することが重要です。上記の指摘を今後の手続きに役立てていただくことを強く要望します。

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▲滑走路建設予定地。手前に見える茶色い塊はサンゴ。奥には滑走路がある。(写真提供:有光智彦)

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