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環境省・地方環境事務所の地方行政組織への権限移譲について意見を出しました

2012.05.24
要望・声明

出先機関の原則廃止に係る「作用法に規定がある事務・権限等の移譲の検討」等に関する意見

公益財団法人日本自然保護協会

該当法令:2-③鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律

意見:
国指定鳥獣保護区は、環境省直轄による地方事務所の業務として、国・地方がそれぞれ権限と責任を分担し、市民も含めた協働管理を行うべきである。
本件は『国の役割とされている理由について、地方の理解が十分に得られた場合には、「移譲の例外」となることも考えられる。』となっているが、合意の有無にかかわらず、すべてを地方に移譲するにはふさわしくない事務内容である。
理由:
野生鳥獣の保護管理や鳥インフルエンザ等の感染症、獣害対策などの課題は、広域連合や地方行政による個別の対応だけでは解決困難である。
生きものの行動範囲は、人間の都合で設定されている行政区画や国境とは関係がなく広がり移動するため、日本全体を科学的に把握する視点による保護管理の施策、国際的視点を持った保護地域(国設鳥獣保護区・ラムサール条約登録湿地等)の設定が重要である。
これに対応しうる専門性・調整能力のある人材の育成と配置は、国の責任のもとに行うのが効果的である。

該当法令:2-⑧絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律

意見:
希少野生動植物種は、環境省直轄による地方事務所の業務として、国・地方がそれぞれ権限と責任を分担し、市民も含めた協働管理を行うべきものである。
本件は『国の役割とされている理由について、地方の理解が十分に得られた場合には、「移譲の例外」となることも考えられる。』となっているが、合意の有無にかかわらず、すべてを地方に移譲するにはふさわしくない事務内容である。
理由:
絶滅のおそれのある野生動植物種の保存は、対象の種だけでは不十分であり、広くその生育・生息環境全体を含め保全しなければならない。例えばイヌワシの場合、繁殖地を含む行動圏だけではなく、次世代がそこから分散して番(つがい)を形成するまで、健全に生育できる場所を保全することが必要である。行政区画等の範囲と関係なく、国土全体を把握する視点と最新の科学的知見を持った保護管理の施策が必要であり、国の責任のもとに実施されるのが効果的である。

該当法令:2-⑫自然環境保全法および、2-⑱自然公園法

意見:
国立公園と自然環境保全地域は、環境省直轄による地方事務所の業務として、国・地方がそれぞれ権限と責任を分担し、市民も含めた協働管理を行うべきである。
本件は『国の役割とされている理由について、地方の理解が十分に得られた場合には、「移譲の例外」となることも考えられる。』となっているが、合意の有無にかかわらず、すべてを地方に移譲するにはふさわしくない事務内容である。
理由:
国立公園をはじめとする自然公園には、保護と利用の二つの目的がある。自然公園法の改正で生物多様性保全が目的に追加され、付帯決議においても利用が生物多様性を損なってはいけないことが明記されているが、自然公園が立地する地方においては、地域経済の発展や観光振興の視点から、利用の拡大への期待とそれに伴う開発促進の圧力が強いのが現状である。こうした現状で、全ての許認可の権限が集約され、開発を進める立場と規制を行う立場が同一になれば、保護よりも、利用や開発のみが常に優先されることになりかねない。権限を集約することよりも、牽制関係を維持することが重要である。
一方、自然環境保全地域・原生自然環境保全地域は、世界的に見ても優れた我が国の自然環境の保全を目的に指定されている地域であり、利用を前提としない自然保護区である。この保全のためには、国土全体を把握する視点と最新の科学的知見を持った保護管理の施策が必要であり、国の責任のもとに実施されるのが効果的である。
また、我が国で開催された生物多様性条約締約国会議(COP10)では、国立公園や自然環境保全地域を含む自然保護区の更なる拡充が決議された。国際自然保護連合(IUCN)は、「国立公園は国の最高機関によって所有・管理が行われるもの」と位置づけている。2013年には第一回アジア国立公園会議を日本で開催することが要請されており、また、2014年世界国立公園会議(オーストラリア/予定)への日本の積極的な関与が期待されている中、世界自然遺産やラムサール条約の登録地も含め、国際的な責務に国の権限をもって応える必要がある。

該当法令:3-③特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律

意見:
特定外来生物は、環境省直轄による地方事務所の業務として、国・地方がそれぞれ権限と責任を分担し、市民も含めた協働管理を行うべきである。
本件は『国の役割とされている理由について、地方の理解が十分に得られた場合には、「移譲の例外」となることも考えられる。』となっているが、合意の有無にかかわらず、すべてを地方に移譲するにはふさわしくない事務内容である。
理由:
侵略的外来生物の対策は、地方行政による個別の対応だけでは解決困難な状況であり、日本全体を把握する視点と最新の科学的知見を持った保護管理の施策が必要である。生物多様性条約では、生態系、生息地もしくは種を脅かす外来種への対策は国の責務として求められており、国際的な責務に国の権限をもって応える必要がある。

以上

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