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国立公園制度の改良

意見
更新日:2011.04.28
リニア中央新幹線計画「中央新幹線小委員会答申(案)」に対するパブリックコメントを提出しました

国土交通省交通政策審議会の中央新幹線小委員会(委員長:家田仁・東京大学教授)は4月21日、リニア中央新幹線計画の最終答申(案)をとりまとめました。答申(案)は、南アルプスの地下にトンネルを貫通させて東京と名古屋をほぼ直線で結ぶ「南アルプスルート」の採用を認めた内容となっています。 
この答申(案)へのパブリックコメント募集に対し、NACS-Jは、以下の意見を提出しました。

>>中央新幹線小委員会答申(案)に対するNACS-Jのパブリックコメント(PDF/535KB)


中央新幹線小委員会答申(案)に対するパブリックコメント

2011年4月28日
公益財団法人 日本自然保護協会


■リニア中央新幹線の計画を進めるべき社会状況ではない。
2011年3月11日に東日本大震災が発生し、甚大な被害が生じた。その上に福島第一原子力発電所(東京電力)の事故が発生し、我が国はこれまで経験したことのない重大な事態に陥っている。被災地の復興だけではなく、安全対策、経済や社会構造、エネルギー政策のあり方そのものが問われている。こうした社会状況において、新たな大規模な開発事業でありエネルギー消費を伴うリニア方式による中央新幹線計画は、一旦立ち止まり、その必要性を検証し直す必要がある。これまでの既存の安全基準が、今回の事態で機能しなかったことを踏まえ、国土の交通政策そのものの見直しも必要である。新規の新幹線の計画は、こうした見直し作業が終了したうえで、新たな基準に則り、計画を立案しなければ、今回の震災の経験を活かすことにはならない。
該当箇所】全般

■大地震の活動期に入ったとされる現状で、いくつもの断層地帯を横切る計画はリスクが高いため避けるべきである。
今般の東日本大震災で、日本における地震活動が静穏期から活動期に入ったと地震学の見地から指摘されている。言い換えれば、同様な大地震が、いつどこで起きても不思議はない状況になったということである。リニア中央新幹線の想定ルートには、中央構造線、糸魚川-静岡構造線といった大断層線が存在している。また既知の活断層は、これまでの調査で明らかになったものだけで194箇所存在(産総研HP、活断層データベース)している。これ以外にも未知の断層が存在することはこれまでの知見で明らかである。南アルプスや、中央アルプス付近では、100年間で40㎝隆起し続けており、今回のリニア中央新幹線がこれら断層活動(地震)の影響を受ける可能性は高い。特にリニア方式では、安全運行のためにはコイルが整然と並んでいる状態を維持することが必要不可欠なため、いくつもの断層地帯を横切る計画は危険である。
【該当箇所】4.ルートについて、及び全般

■原生的な自然環境が残される南アルプスの保護地域に大きな負荷を与える長大なトンネルを掘るべきではない。
南アルプス地域は、国立公園のみならず、原生自然としての厳重な保全が求められる「大井川源流部原生自然環境保全地域」の指定地も存在する大規模な山塊の保護地域である。これまで、山塊を横断する道路は、自然保護上問題とされ、大規模林道見直しの契機となった南アルプススーパー林道(一般車両通行不可)しか存在せず、人為的インパクトを極力排除し、自然状態を維持してきた(添付図面参照)。こうした、大規模な山塊で、一般車両が通行できる道路、鉄道、トンネルが全く存在しない場所は、本州では南アルプス以外にはない。これは、日本の生物多様性を支えるまさに屋台骨であり、後世に引き継ぐべき財産であるため、環境省により、国立公園の拡大候補地にあげられ、その拡大指定が見込まれている。また、これまでの様々なトンネル工事では、地下水文環境の大きな変化(異常出水など)、工事にかかる作業道路の設置による影響、斜坑の設置による地上部への影響、工事の際に出される大量の排土砂による影響、トンネル本体工事にかかる周辺工事の影響など、大きな負荷が自然環境にかけられてきた。原生的な自然環境が残されている南アルプスの保護地域に、長大なトンネルを掘るべきではない。
【該当箇所】4.ルートについて

■南アルプスルートを採択することが妥当であるとした答申は根拠が不十分である。
中間まとめの際に環境省から提出された意見の中では、「計画決定前段階での環境影響評価を行うべき」と指摘されているにもかかわらず、環境面からのルートの影響評価については、環境アセスメントの調査項目に則って既存情報の有無の整理が行なわれ、「環境への配慮が必要」としていることにとどまり、具体的にどのような配慮が必要かは評価されていない。また、重要な自然環境の情報も十分に拾い上げられておらず、これでは、構想計画段階での影響評価となっていない。事実、小委員会の議事でも、「戦略的アセスメントになっておらず、その前段階」との委員の発言がある。これを受け、「どのルートが最適かの判断はできない」と小委員会の議論の結果が総括されている。にもかかわらず、南アルプスルートが最適であるとの答申は、議論の結果からも矛盾の上、根拠が不十分であり、審議会としての機能を果たしていない。
【該当箇所】4.ルートについて、及び、全般

■本計画の具体的なルート選択の際には改正した環境影響評価法に合わせた手続きを踏むべきである
今期の通常国会において環境影響評価法改正法案が成立した(4月22日)。改正法には「日本版戦略的環境アセスメント」のプロセスが新たに導入され、複数案を評価した「配慮書」を公表し、住民・知事・主務大臣・環境大臣の意見をもとめることになる。しかし、法施行は公布日より2年を超えない範囲とされ、その間に「方法書」を公告した場合、適用されないことに法律上はなるが、1997年法制定時にもあったように、いわゆる「駆け込みアセス」として社会的にも認められるものではない。拙速にも「本年12月には環境影響評価を着手する」という報道がされているが、法改正の精神にのっとり、同等の手続きの実施を前提として考えるべきである。
【該当箇所】全般

リニア新幹線ルートと保護地域の関係1.jpg





リニア新幹線ルートと保護地域の関係2.jpg
■参照
・産業技術総合研究所 活断層データベース http://riodb02.ibase.aist.go.jp/activefault/
 「起震断層・活動セグメント検索」ページをクリックしてください。



<参考>
国土交通省 交通政策審議会 中央新幹線小委員会
・中央新幹線小委員会 答申(案)(PDF/243KB)
・中央新幹線小委員会 答申(案)に関するパブリックコメントの募集について(PDF/71KB)

日本自然保護協会
(NACS‐J)

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