絞り込み検索

nacsj

【配布資料】今日からはじめる自然観察「鼻も使って自然を感じ取ろう」

2013.04.24
解説

キービジュアル

【今日からはじめる自然観察】鼻も使って自然を感じ取ろう(PDF/2.33MB)
<会報『自然保護』No.533(2013年5・6月号)より転載>
このページは、筆者に、教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察会などでご活用ください。

その季節しかかげないにおいはたくさんあります。

新緑の時期だけ体験できるにおいも!さあ、自然の中に出かけて、意識的に鼻を働かせてみましょう。

鳥山由子(NACS-J評議員/元筑波大学教授)


5月5日の端午の節句に菖蒲湯に入る風習があります。ショウブは「尚武」に通じるとして、男子の武運を願って始まった風習であるという説があります。お風呂に浮かべたショウブの葉を、子どもが頭に結んで遊ぶのは子どもの日のほほ笑ましい光景です。ショウブの根には、アザロンやオイゲノールという精油成分が含まれています。風呂に入れるときには、葉の根元から発する香りを楽しむために、根元から刈り取った長いままの葉を浮かべます。

なお、6月中旬に美しい花を咲かせるハナショウブはアヤメ属の植物で、ショウブ(ショウブ属)とは別の仲間です。ハナショウブには、ショウブのようなさわやかな香りはありません。においを具体的な言葉で表現することは難しいことです。においを表す言葉は極端に少なく、「悪臭、刺激臭、芳香」などの抽象的な言葉以外は、アンモニア臭、アルコール臭、アルデヒド臭などの化学物質のにおいや、リンゴのにおい、花の香り、バナナのにおいなど、人々が共通して体験している身近な物のにおいで表現するしかありません。

盲学校に勤務していたとき、子どもたちの感覚の敏感さには、いつも驚かされました。春の校庭で子ども達が異口同音に「空気に果物のにおいがする」と言い出したことがあります。何のにおいのことかと思いながら校庭の隅のビワの若木に近づいたとき、子どもたちは「果物のにおいは、この木のにおいだったんだ」と言いました。芽吹いたばかりの若い葉が枝の先に大きな花のように重なり合い、その若葉の中に顔をうずめると、私にも、確かに果物のにおいが感じられました。

No533_kyoukarahajimeru-1.jpg
▲写真:ショウブ(サトイモ科)

No533_kyoukarahajimeru-2.jpg
▲写真:クサギの葉は、嫌なにおいのする植物と言われるが、ピーナツバターのにおいに似ていると言う人もいる。

嗅覚は個人差が大きい

においは拡散しやすく、ふわりと感じたのに、次の瞬間には感じられなかったり、同じ場所にいるのに、気づく人と気づかない人がいたりします。また、嗅覚は疲れやすく、初めに感じたにおいが分からなくなることもあります。

自然観察会では、いわゆる「香りの植物」だけのにおいに注目するのではなく、田んぼのにおい、草原のにおい、天気の変化のにおい……いつでも、何を観察するときも、あらゆる感覚を総動員して自然を感じることが大切です。

視覚に障害のある人たちや子どもの場合も同じですが、嗅覚が鋭いがゆえに、ハーブのにおい、特にローズマリーのような強いにおいを嫌う人も多いので注意が必要です。また、一般に年齢を重ねると嗅覚は衰えるものです。嗅覚の個人差も大きいので、においが分からない人もいることを理解しておきましょう。

▼図をクリックすると大きくなります
葉っぱのにおいをかぐときの3段階


クイズの答え:スイカ(ちぎったり、もんだりすると、スイカのにおいは感じられない。)

本コーナーは、エプソン純正カートリッジ引取回収サービスを利用されたお客様のポイント寄付によるご支援をいただいております。

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する