会報『自然保護』
更新日:2005.01.01
第3回IUCN世界自然保護会議報告 沖縄の野生生物の保全に2度目の勧告

▲本会議場での「IUCN総会」のようす
2004年11月17日から25日にかけて、タイ・バンコク市シリキット国際会議場で、第3回世界自然保護会議が開催されました。この会議は、IUCNが4年に1度開催し、今後4年間のIUCNの活動計画を決定する最も重要な会議であり、また、自然保護をテーマとした最新の世界の動向や事例について情報交換をし、共有することのできる世界最大の会議となっています。
2005年1/2月号より転載
会議のサブテーマは「人と自然~ただ一つの世界」。これは、地域住民の協力を得た自然保護をどう実現するか、貧困撲滅という課題に自然保護はどう貢献できるか、あるいは生物多様性の喪失・地球温暖化といった世界的な課題にどう取り組むかといった、今、人類に突き付けられている大きな課題を意識して付けられたテーマです。今回の会議の参加者は、5500人を超え、これまでで最大の自然保護会議となりました。
自然保護会議は大きく分けて、研究者を中心とした専門委員会会合、広く公開で行なわれる世界自然保護フォーラム、IUCN会員を中心とした総会の3部構成となっています。
専門委員会会合では、海洋保護地域の設定や最近のIT技術を活用した野生生物種データベースづくりなどの発表に高い関心が寄せられていました。2004年度のIUCNレッドリスト(世界の絶滅の恐れのある生物種のリスト)もここで発表されました。
世界自然保護フォーラムは、①生物多様性の喪失と種の絶滅、②生態系管理、③健康・貧困と保全、④市場・経済と環境と大きく4つのテーマが設定され、3日間で460ものシンポジウムやワークショップが同時並行で行なわれました。吉田正人(NACS-J理事)がファシリテーターを務める「東アジア・太平洋のジュゴン保護ネットワークの確立」と題したワークショップも開かれ、フィリピンやベトナム、地元のタイから研究者を招いて活発な議論が交わされました。
▲「東アジア・太平洋のジュゴン保護ネットワークの確立」についてのワークショップ
沖縄・辺野古沖ボーリング調査 中止への追い風になるか
今回の総会では、IUCNの会長選挙や今後4年間の活動計画を採択するともに、NACS-J、WWFジャパン、ジュゴン保護キャンペーンセンターが中心団体として提案した「日本のジュゴン・ノグチゲラ・ヤンバルクイナの保全に関する勧告」が賛成255票・反対26票で採択されました。
この勧告は、辺野古沖に計画されている米軍飛行場代替施設や、やんばる地方の森林に建設が予定されている米軍ヘリパッドの建設計画に対して、建設中止も含めた代替案を検討する国際基準の環境アセスメントを求めるとともに、この3種を保全するための保護計画の作成と保護地域の設定を日本政府に求めています。
建設予定地である辺野古沖では11月16日にボーリング調査のための掘削作業が開始されていますが、IUCNは日本の法律では環境アセスメントの対象外とされているボーリング調査も含めた環境アセスメントを行なうよう日本政府に勧告しています。IUCNがジュゴンの保全を日本政府に求めるのは2000年に続き、今回が2度目です。2度も勧告として取り上げられるのは異例のことで、それだけ沖縄の自然の豊かさが世界的に評価されていることを意味します。今後、日本政府にIUCNの勧告に誠実に応えるよう求めていきたいと考えます。
(道家哲平・保護研究部)