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更新日:2000.10.10
アンマン・レポート 9 各国政府やNGOの協力と歩み寄りで、日本から提案した勧告案は採択された(2000.10.10)
レポート:NACS-J常務理事・吉田正人
いよいよ今日は勧告案の採択の最終日。日本から出された、「沖縄のジュゴン、ヤンバルクイナ、ノグチゲラの保護」と「海上の森の保全」の2つが採択されるかどうかは、今日の議論にかかっている。

午前9時からの会議だが、昨日の渋滞に懲りて、8時には会場に着いて、ピジョンボックス内の書類(多くは勧告の変更案)をチェックしたり、本日のスケジュールボードを見て、勧告案に関する臨時の会議が招集されていないかどうかチェックしたりする。

しかし予想に反して、書類は少なく、メンバーの集まりも悪い。どうも昨日は、地元ヨルダン政府のレセプションで、アンマンからバスで2時間離れた、夜の死海でのパーティーがあり、ほとんどの外国からの参加者がそちらに行ったため、早起きできなかったようだ。私たちは、沖縄のNGOの人たちと、ヨルダン在住の沖縄の方を囲んで、アンマン市内で話しをしていたので、遅くなったといっても、比較にはならない。どんな話しをしたかは閑話休題にまわすとして、会議のようすに移ろう。

午前は、IUCNの委員会の役割について、予算計画について、会費について、選挙方法の変更についてなどの、会員にかかわる議題である。委員会、予算計画までは順調に来たが、さすがに会費については、支払う側の立場からたくさんの意見が出た。IUCNの会費は、まず、国家会員、政府機関会員、NGO会員の3つのカテゴリーに大きく分かれ、さらにその中で、その団体の予算規模に応じて、9-10のランクに分かれている。あまりに複雑なので、NACS-Jが属しているランク4(中規模の団体)の場合をとると、国家会員ならば63419スイスフラン、政府機関会員ならば15854スイスフラン(ただし国家会員になっている国の政府機関の場合は割引となり1904スイスフラン)、NGO会員ならば2157スイスフランが2001年の会費である。NGOでも13万5千円もの年会費を払わなくてはならないので、(それなりの情報は送られては来るものの)決して安い会費ではない。日本のNGOだったら、途上国の政府機関を上回る会費を支払うことになる。しかも、給与等の支出の自然増に対応するため、毎年3%ずつの会費増が2005年まで予定されているので、途上国の会員にとってはたいへんだ。アフリカの代表からは、「私の国では1年間で300%のインフレがあったため、スイスフランで支払うと、毎年会費が4倍に値上げされたと同じ計算になる。会員をふやそうと努力しても、会費を支払えず退会せざるを得ない。こういった国の事情も考慮してほしい。」と切実な訴えがあった。現在、特別に現地通貨による支払いが認められる制度もあるが、途上国のNGOの会費支払いを援助する制度はない。「会費の相互扶助制度を早急に検討したい」とマリッタ・コクベーザー事務総長は回答した。

選挙方法の変更は、先日も報告したとおり、あまりに複雑な選挙制度のため、無効票が多く出ること、これ以上会員数が増えてくると、集計に時間がかかりすぎることが理由である。具体的には、1地域3名枠の理事選挙に3名以上の候補が立候補した場合、1位の候補に3、2位の候補に2、3位の候補に1を記入する方法を改め、当選させたい候補3名(以内)にXを記入するという変更案である。実は私は、今回、選挙管理委員として、開票作業に立会い、現在の方法がいかに複雑で無効票を多く生んでいるかを目の当たりにしているので、この変更案は非常に納得の行く案であると感じた。それでも会員の中には、いろいろな利害をもっている人たちがいるらしく、「今回の開票結果を、現方式の場合と、新方式の場合で比較した表を見せろ」などの意見もあった。最後は、「本日採択するか否か」、「新方式とするか否か」を多数決で決めることになった。決をとるときは、政府会員は白、NGO会員は緑の10×15cmほどのカードを手に掲げ、それをIUCNスタッフが数えてゆくのだが、これがとても時間がかかり、手を挙げつづけるのが疲れる。(ヨルダンには、野鳥の会や麻布大学野鳥研究会はないのだろうか?)結果的には、IUCNの変更案で採択されたが、なぜか先進国のNGOに反対が多かった。倍の票を持っている政府会員が相談して、1人の候補に3点を集中して当選させるということができにくくなるので、NGOに有利な変更案だと思われるが、反対の団体はNGO会員の票をとりまとめたり、政府会員の票を動かすぐらいの政治力を持っているのかも知れない。

ところで、今回の選挙の開票結果の報告を忘れていた。会長には、現会長で元エクアドル環境大臣のヨランダ・カカバゼさんが信任を受け、このほか6つの委員会の委員長、8つの地区の地域理事が決まった。南・東アジア地区からは、日本の赤尾大使、フィリピンのフェルナンド氏、中国科学院のHan氏が当選した。赤尾大使は、政府グループ325票で1位、NGOグループ 590票で2位、トータルで1位当選であった。

午後2時からは、勧告案の審議となった。議長(ヨランダ会長)が、「今日は夜9時30までかかっても、決議・勧告の審議を終わらせます。終わらない場合は、明日8時からもやります」と宣言したので、これでなんとか今夜中には採択にこぎつけることができると思う反面、明日まわしになったらどうしようという不安がよぎる。実は日本のNGOは、ほとんどが11日発のチケットで来ているため、今夜中に採択されないとたいへん困った事態になる。最初のころは、1決議5分程度のスピードで進んでいたので、なんとか8時か9時ごろには、大丈夫かなと思ったが、途中から1決議20-30分もかかる難題が出始めて、雲行きがあやしくなってきた。午後6時に夕食の休憩になったときに、議長と決議勧告委員会のアンジェラ委員長に、なんとか日本の決議は、わざわざ沖縄から何人もの人が参加してきているので今夜中にお願いしたいと頼み込んだ。「夕方からは、フロアーから出た修正案がコンピュータ上で修正されたとおりに、スクリーンに写るようになるから、審議がスムーズになるよ」と言われたが不安。

午後7時から審議が再開、不安は的中し、スクリーンに修正案が写されるようになると、ますますたくさんの修正案が出されるようになって、余計時間がかかるようになってしまった。テクノロジーは、人間の思考を助けてはくれない!? 

午後9時、いよいよ今夜中には決議・勧告案が終わりそうにないことがわかった時点で、アンジェラ委員長が、「ここで順序が異なりますが、沖縄の方々が明日帰国するので、沖縄の勧告案の審議を先にしたいと思います」と言ってくれた。ありがとう!

沖縄のジュゴン、ヤンバルクイナ、ノグチゲラの保護については、まずWWFJの花輪さんから、提案理由とたくさんの地元の人々が勧告採択を願って5万人もの署名を集めたことを紹介、次に日本政府(外務省)が環境影響評価の実施を約束、最後に米国政府が日本の環境影響評価に協力すること、ジュゴンの保全にも努力をすることを約束し、コンセンサスで採択された。

次に海上の森の保全勧告の審議に移り、米国の野生生物防衛基金が「(日本の捕鯨政策に反対して環境会議への出席をボイコットしているが)日本の提案団体ができる限り原案での採択を希望していることに配慮し、最小限の修正案を提案したい」として、「環境万博として成功するよう」というフレーズを「環境に配慮した方法で行われるよう」と変える修正案を出した。数日前は、「環境万博として成功するよう」云々のフレーズを全部削ってほしいという要求であったが、環境に配慮した万博であることがいかに重要であるかを説得した結果、むこうも相当折れてきたので、私から「海上の森の保全と捕鯨問題は全く関係ないので、ここで捕鯨問題を討議するのはふさわしくないと思う。しかし原案の文章が、IUCN会員間に微妙な問題を引き起こすのであれば、小さな修正は受け入れる」として、この修正案による採択を求め、コンセンサスで採択された。海上の森については、私の提案理由の説明にひきつづき、日本政府(外務省)が、「日本政府としては、今後も愛知万博が環境に配慮した万博となるよう努力する」と宣言した。

この2つの勧告が、関係政府会員を含むコンセンサスで採択された意義は大きい。強引に多数決で採択する方法もあるが、そうすれば、賛成したくない国は、その理由をつけて保留することもできるので、世界自然保護会議としては採択しても、不賛成の国の存在を公式に認めることになる。とくに沖縄の勧告では、日米両政府が、コンセンサスで採択されるよう、4~5回にわたる協議に参加し、文案のとりまとめに協力してくれた。その結果として、日米両政府の前向きな宣言を記録に残した勧告として採択された意義は大きい。

report9.jpgここまでで、9時30分。私は、急いでホテルに引き返し、帰国の支度をしないと、早朝2時発の飛行機に間に合わない。ホテルに戻り、勧告の結果を、日本にメールで知らせる。日本時間は午前5時なので、まだ誰も起きていないだろうが、とりあえずメールで送っておく。さあ、いそがないと飛行機に間に合わない。コンピュータの電源を切りますので、アンマンからさようなら。日本にかえったら、書き忘れたことをレポートにしたいと思います。
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