03年に、環境省・林野庁は自然遺産候補地に、琉球諸島を選定しています。自然遺産には登録時の自然環境の顕著な普遍的価値と完全性が将来に渡り維持・強化されることを担保する保護担保措置が求められるため、林野庁はやんばるの「森林生態系保護地域」の指定(18ページ参照)、環境省はやんばる地域と奄美群島の「国立公園」指定に向けて準備・検討を始めています。この保護担保の対象は、陸域だけでなく海域まで広げる必要があります。
辺野古海域の生物多様性を守るには、観光や漁業が共存できる「海洋保護区」のしくみが必要です。具体的には、生態系の状態に対応した区画(ゾーニング)や、自然利用の規制・ルールを決め、陸域の集水域も含めた「総合的な沿岸管理」を市民合意のもとで進めるべきです。しかしこれを満足できる国内制度はまだありません。国立・国定公園や海中公園(表*)の指定だけでは限界があります。現に西岸部には沖縄海岸国定公園がありますが、ほとんどが普通地域のため規制は緩く、周辺で海砂利は採取され、無駄に大きい漁港や埋め立てなどの開発が届出の手続きだけで続けられています。漁業法・港湾法・海岸法など海岸線の管理も縦割りに区分・管理されており、沖縄島の自然海岸は既に53・7%にまで減っています。07年制定の海洋基本法では総合的海洋管理がうたわれていますが、状況改善の兆しはありません。
日本で海域を守るしくみは立ち遅れていますが、国際的には生物多様性条約や国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI・日本は創設から参加)で「海洋保護区のネットワーク強化」が求められています。さらにこの10月、IUCNの総会決議で日米両国に対し3度目となるジュゴン保護の行動計画策定が勧告されました。NACS‐Jは、「理想と現実」「海外と国内」「本土と沖縄」のギャップを少しずつ埋めながら、引き続き基地移設見直しを求め、辺野古海域をモデルに日本版海洋保護区のあり方を考えていきたいと思います。
(2008年11月1日 保護プロジェクト部 大野正人/会報『自然保護』No.506より転載)
2009年4月1日、沖縄防衛局は、沖縄・辺野古の普天間飛行場移設事業のアセス準備書を公表し、住民からの意見を聴くための縦覧を行いました。
NACS-Jでは7名の専門家による検討会議を設置。5400ページにもわたる準備書を点検・検証した結果、この準備書は科学的な予測・評価が満足に行われていないものと判断し、沖縄防衛局に対し、準備書の撤回、ならびに事業見直しのための日米政府間交渉を強く求めました。
日本自然保護協会
(NACS‐J)
〒104-0033
東京都中央区新川1-16-10
ミトヨビル2F
TEL:03-3553-4101(代表)
FAX:03-3553-0139