絞り込み検索

nacsj

侵略的外来種の県内侵入と拡散に対する保全策などの助言を求めました。

2014.02.10
要望・声明

Seeking Your Expert Guidance and Advice(PDF/972KB)
Appendix(PDF/1.9MB)
和訳・専門家の指導と助言の要請(PDF/133KB)


*以下、要請文の本文の和訳と賛同団体リスト(日本の団体は日本語表記)です。

要請文の原文(英語)には本文の他に注釈もありますが、以下の和訳には注釈部分の訳はありません。

2014 年1 月27 日

Pieoro Genovesi 博士
グループ主任
侵略種専門家グループ(ISSG)
種の保存委員会 (SSC)
国際自然保護連合(IUCN)

専門家の指導と助言の要請

Genovesi 博士へ

 

私たちは、日本の最南端の県である沖縄への侵略的外来種の侵入と拡散の可能性について知って頂きたく、博士とIUCN(国際自然保護連合)のInvasive Species Specialist Group(侵略種専門家グループ)のみなさんに、大いなる懸念とともに、この手紙を書いています。みなさんに、この緊急状況へ注目して頂き、指導と助言を頂ければと思います。

2013 年12 月27 日、日本政府からの圧力のもと、沖縄県の仲井真弘多知事は、沖縄防衛局に対して、沖縄本島北部にある辺野古・大浦湾における160 ヘクタールの埋立て許可を与えました。この埋立ては、日本でも生物多様性の最も豊かな地域の一つであるこの地に、米軍飛行場/基地を建設するという計画の一部になります。埋立てには2100 万立方メートルの土砂が使用され(10 トントラックの300 万台以上の土砂です!)、そのうち1700 万立方メートルは、日本本土の異なる場所から搬入されることになります。埋立てのためのボーリング調査は、早ければこの3 月にも開始されます。

沖縄県知事は、記者会見において、埋立て申請が、公有水面埋立法の「基準に適合している」ので承認した、と明言しました。しかし私たちは、この承認は、埋立てによる環境への影響についての科学的な理解に基づいたものではなく、知事の政治的判断のみに基づいたものであったと理解しています。同法律では、「その埋立てが環境保全及び災害防止につき十分配慮されたのものであること」(第4 条1-二)「埋立地の用途が土地利用又は環境保全に関する国又は地方公共団体(港湾局を含む)の法律に基づく計画に違背しないこと」(第4 条1-三)に適合すると認める場合を除く他、都道府県知事は埋立てを免許することはできない、となっています。私たちの視点からすれば、知事の判断は、この法律に全く合致しません。

図1に示されるように、沖縄島は約160 の島々からなる沖縄県の一つの島です。沖縄は全体として亜熱帯に位置しており、殆どが温帯に属する日本本土からは、地理的に海で隔てられています。異なる気候地帯や地理地域を越えての多量の土砂の搬入は、沖縄への外来種の侵入ならびに拡散へと確実につながるものであり、その影響は計り知れません。コウジカビやセラチア菌による沖縄のサンゴ類への影響や、その他の陸域生物による海洋生物への影響が特別な懸念としてあげられています。アルゼンチンアリの沖縄島への侵入も懸念としてあげられています。沖縄へ搬入される土砂の採取予定場のある幾つかの地域では、アルゼンチンアリが確認され、深刻な問題となっています。沖縄の在来種や生態系へのあからさまな軽視は憂慮されるものです。

現在まで沖縄防衛局は、沖縄島への外来種の侵入をどのように防ぐつもりなのか、十分な情報を示していません。防衛局は、その埋立申請書のなかで、土砂を提供する事業者が沖縄への外来種の侵入を防ぐための適切な対策をとり、その事業者を管理する責任は防衛局がとる、と述べているだけです。沖縄県知事も、これまで何年も同基地建設に反対していながら、なぜ突然、埋立申請を承認したのかについて、納得できる理由を示していません。2012 年2月の環境影響評価書に対する「知事意見」では、建設は「環境の保全上、重大な問題がある」とし、示された保全措置では、「同省が示す保全措置では「事業実施区域周辺域の生活環境および自然環境の保全を図ることは不可能」と明言しています。防衛局と知事による情報や説明の欠如は大きな問題です。

1997 年に同建設計画が最初に提案されて以来、この計画が地域ならびに国際社会から強固な反対を受けてきたことは、強調されるべきです。10 年以上に渡る反対運動は、基地の建設が、辺野古・大浦湾の貴重な自然と地域の人々の暮らしにもたらす影響について焦点を当ててきました。すでに承知していると思いますが、IUCN は、この建設計画に関して、同建設予定地に生息する絶滅危惧種の海洋哺乳類であるジュゴンの保全を求めて、三度の勧告/決議を採択しています。さらには、この辺野古・大浦湾の地域は、2013 年12 月に日本の環境省が、ユネスコ世界自然遺産の候補地に選定した一つである沖縄本島北部地域からわずか20km しか離れていません。沖縄県知事による埋立ての承認は、ジュゴンに関するIUCN 勧告/決議への汚辱であり、また、これから同世界自然遺産候補地の審査に取り組むIUCN へ相反するメッセージを送ることになります。

私たちは、知事の埋立て承認の展開に非常に落胆していますが、辺野古・大浦湾の環境と人々の暮らしと、そして沖縄の環境を守るため、新たな努力を続けていきます。私たちは、沖縄県知事が、埋立が環境にもたらす影響の科学的理解にもとづき、自らの判断を見直し、沖縄への外来種の侵入を防ぐために適切な措置をとることを求めていきます。しかし、それは私たちだけでは出来ません。私たちが直面するこの状況の外にいる専門家からの科学的知見が必要です。私たちは、IUCN のInvasive Species Specialist Group(侵略種専門家グループ)が、外来種に対する島嶼生態系の脆弱性を認識していると理解しています。また私たちは、IUCN が外来種の問題に関して、専門家グループ、ガイドライン、データベースといった様々な仕組みを持っていると理解しています。それゆえ、私たちは、この埋立が差し迫る状況において、みなさんからの指導と助言を頂ければと思います。みなさんからの返信をお待ちしています。もし更なる情報が必要であれば、喜んで提供いたします。

敬具

沖縄・生物多様性市民ネットワーク
ジュゴン保護キャンペーンセンター
吉川秀樹

 

以下がこの要請文への賛同団体です。
<賛同団体>
琉球諸島を世界自然遺産にする連絡会(Okinawa, Japan)
北限のジュゴンを見守る会 (Japan)
アジアの浅瀬と干潟を守る会 (Japan)
Catholic Human Rights Committee (South Korea)
Catholic Solidarity for Peace on Jeju Island (South Korea)
Center for Biological Diversity (U.S.)
沖縄・生物多様性市民ネットワーク(Okinawa, Japan)
ジュゴンネットワーク沖縄(Okinawa, Japan)
Ecological Society of the Philippines (The Philippines)
Gangjeong Village Association (South Korea)
Gangjeong Village International Team (South Korea)
Global Network Against Weapons & Nuclear Power in Space (U.S.)
Hawai’i Peace and Justice (U.S.)
ヘリ基地いらない二見以北十区の会 (Okinawa, Japan)
IUCN, WCEL, Ethic Specialist Group International Forum on Globalization (U.S.)
国連生物多様性の10 年市民ネットワーク(Japan)
JUCON (Japan and U.S.)
Jeju Pan-Island Committee for Stop of Military Base and for Realization of Peace Island (South Korea)
Korea Catholic Federation for Justice (South Korea)
久米島ホタルの会 (Okinawa, Japan)
みん宿 ヤポネシア (Okinawa, Japan)
Moana Nui Action Alliance (U.S. and Pacific Islands)
National Network of Korean Civil Society for Opposing to the Naval Base in Jeju Island (South Korea)
「ヘリパッドいらない」住民の会 (Okinawa, Japan)
沖縄環境ネットワーク (Okinawa, Japan)
沖縄リーフチェック研究会 (Okinawa, Japan)
奥間川流域保護基金(Okinawa, Japan)
環瀬戸内海会議 (Japan)
Peace Philosophy Center (Canada)
ジュゴン保護キャンペーンセンター (IUCN member) (Japan)
ジュゴン保護基金(Okinawa, Japan)
The Australian Rainforest Conservation Society (Australia)
ヘリ基地反対協議会(Okinawa, Japan)
日本自然保護協会 (IUCN member) (Japan)
泡瀬干潟を守る連絡会 (Okinawa, Japan)
World Can’t Wait-Hawai’i Chapter (U.S.)


●要請文の原文(英語版)はこちら

※↓要請文とともにあてた付録(画像をクリックするとダウンロードできます)

AppendixkIUCNkSSCkISSG2-4.jpg

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する