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オスプレイの訓練ルートが日本の重要な保護地域とイヌワシ・クマタカやライチョウなど絶滅危惧種の生息地を飛行することが分かりました。

2012.07.28
活動報告

 

米海兵隊MV22オスプレイが、「日本の重要な保護地域」と「イヌワシ・クマタカ、ライチョウ」の生息域を通過することの懸念

 

公益財団法人 日本自然保護協会
2012年7月28日

 

日本自然保護協会では、SISPA(戦略的保全地域情報システム)を用いて、米軍オスプレイ(MV-22)の飛行訓練ルートを、公表されている国内の自然環境情報と照らし、分析をし下記のことが明確になった。

  1. イヌワシの生息地メッシュ(北海道を除く)895メッシュのうち106メッシュを通過することになること(図1)
  2. クマタカの生息地メッシュ(北海道を除く)1449メッシュのうち132メッシュを通過することになること(図2)
    いずれも、正式には公表されていない中国山地のルートを除いている。
  3. ライチョウの繁殖分布地を通過すること(図3)
  4. 日本の山岳部の国立国定公園の13公園を通過すること(図4)

 

コメント

オスプレイ(MV-22)の日本本土でも予定されている飛行訓練は、地上60mでの飛行も想定されており、騒音や風圧など地上への影響は、自然環境上重要な地域ほど深刻だ。
特に、近年、繁殖率や個体数の低下が著しい イヌワシやライチョウのすでに限られた生息地とオスプレイの飛行ルートが重なり、さらなる絶滅への危機に追いやることに違いない。
また、日本を代表する山岳地帯の国立・国定公園の核心部を貫くことも、国民の共有財産として見過ごすことはできない。
米国の都合だけで進捗させれば、日本政府が何も手を打てずに危機的状況にあるジュゴンと同じ状況になるだろう。日本政府は、生物多様性の保全の観点からも米国とよく協議すべきだ。

(保護プロジェクト部 志村智子)

 

▼図1.イヌワシの生息地とオスプレイ飛行訓練ルートとの関係と、図2.クマタカの生息地とオスプレイ飛行訓練ルートとの関係
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▼図3.ライチョウの繁殖分布地とオスプレイ飛行訓練ルートと、図4.保護地域とオスプレイ飛行訓練ルート
20120728raicho_hogoarea_R.jpg

図1.イヌワシの生息地とオスプレイ飛行訓練ルートとの関係と、図2.クマタカの生息地とオスプレイ飛行訓練ルートとの関係(PDF/1.6MB)

図3.ライチョウの繁殖分布地とオスプレイ飛行訓練ルートと、図4 保護地域とオスプレイ飛行訓練ルート(PDF/1.6MB)

 

参考情報

■イヌワシ/絶滅危惧IB類(EN)、国内希少野生動植物種、保護増殖事業計画対象種。

国指定天然記念物個体が消失した生息地が2000年までの20年間で19カ所に対し、2001~2005年だけで24カ所と、急速に生息地の消失が広がっている。個体数が安定あるいは増加傾向にある欧米地域の繁殖成功率は60%とされているが、国内では、近年5~10年では約24%。1981~1986年の5年平均47.2%から著しく低下している。
(参照:環境省「猛禽類保護の進め方(改訂案)」2012)(参照:環境省「猛禽類保護の進め方(改訂案)」2012)

■クマタカ/絶滅危惧IB類(EN)、国内希少野生動植物種。

繁殖成功率については断片的な情報だが、山形県や奈良県、京都府、西中国山地等で繁殖成功率の低下が報告されている。特に西中国山地は、1981~1985 年 85.7%が、1996 年は 8.3%に急激に低下している(広島クマタカ生態研究会 未発表)。(参照:環境省「猛禽類保護の進め方(改訂案)」2012)

■生息上支障を及ぼすおそれのある行為、事例や留意点

日本イヌワシ研究会のアンケート調査 (1994)によると、イヌワシの繁殖失敗の原因を推定も含め 160例 39カ所(複数年、複数の原因をそれぞれカウントしている)報告している。このうち巣付近への人間の接近と巣付近や広範囲での開発行為または環境改変等の人為的原因によるものが全体の 73%( 116例 24カ所)であったと報告している。具体例のひとつに、「ヘリコプター飛行をともなう送電線鉄塔の建設・点検( 24例4カ所)」が挙げられている。(参照:環境省「猛禽類保護の進め方(改訂案)」2012)

■ライチョウ/絶滅危惧Ⅱ類(VU)、国指定天然記念物

<関連する日本自然保護協会の活動>

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