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「過大な入場者数が自然環境に与える影響が予測評価されていない」

1999.04.07
要望・声明

環境アセスメント準備書に対する意見 ~36項目の問題点を指摘


目次

・はじめに

1)環境影響評価の仕組みに関わる問題点

1. 方法書に対する市民からの意見の軽視
2. 環境アセスメントを市民の合意形成の過程とする意識がない
3. わずか1年の調査期間で早急な結論を出したことの問題
4. 代替案のない環境アセスメントは「アワセメント」に過ぎない
5. 三事業の連携がまったくはかられていない

2)2005年日本国際博覧会および新住宅市街地開発事業計画の問題点

2)-1. 2005年日本国際博覧会事業計画の問題点

1. 2005年日本国際博覧会の会場計画には、自然環境への影響を回避・低減するための複数案が検討されていない
2. 2005年日本国際博覧会の会場計画は熟度が低く環境影響評価が成立していない
3. 2005年日本国際博覧会の会場計画の説明にはこれを妥当とする根拠が示されていない
4. 2005年日本国際博覧会の過大な入場者数が自然環境に与える影響が予測評価されていない
5. 2005年日本国際博覧会の森林体感空間・水平回廊計画は森への影響を拡大する
6. 2005年日本国際博覧会の理念の説明では、里やま(里地・里山自然)の保全の考え方を矮小化している

2)-2新住宅市街地開発事業計画の問題点

1. 新住宅市街地開発事業の自然環境への多大な影響は、「自然環境にやさしいまちづくり」という理念と矛盾する
2. 新住宅市街地開発事業は、大量の住宅供給が求められた、過去の時代の計画であり、根本的な見直しが必要である

3)環境影響評価準備書に対する意見

3)-1生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全に関する意見

1. 海上の森の生物多様性の豊かさが、他の地域と比較して評価できていない
2. 注目すべき植物種は、代償措置(移植)をとることが難しい種ばかりである
3. 注目すべき植物種のうち、シデコブシの遺伝子多様度調査は予測評価のしかたが意図的である
4. 植生(植物群落)の評価が、自然度の高い植生・希少な植物群落に偏っており、海上の森の生態系の中心的役割を果たしているアベマキ・コナラ林、アカマツ林が意図的に低く評価されている
5. 注目すべき植物群落のうち、貧栄養湿地植生・サクラバハンノキ群落が、新住宅市街地開発事業、名古屋瀬戸道路の建設によって、間接的影響を受ける可能性が強いにもかかわらず、環境保全措置がとられていない
6. 注目すべき動物種のうち、ムササビについては、行動圏調査、餌資源調査をやりなおすべきである
7. 注目すべき動物種のうち、オオタカについては、行動圏調査を継続し、地域整備事業の影響を評価し直すべきである
8. 注目すべき動物種のうち、カワセミについては、代償措置(カワセミ護岸等)ではなく、渓流・池沼への影響を回避・低減すべきである
9. 注目すべき動物種のうち、アオゲラ等繁殖鳥類については、渓流沿いの森林の破壊による影響が明らかである。渓流への影響を回避・低減する環境保全措置をとるべきである
10. 注目すべき動物種のうち、ゲンジボタルについては、吉田川に与える影響が大きい。 渓流への影響を回避・低減する措置をとるべきである。
11. 吉田川沿いの植物群落および動物群集の重要性を再評価すべきである
12. 注目すべき動物種のうち、ギフチョウについては、発生数の低下の原因を明らかにした上で、回避・低減措置をとるべきである
13. 光害による動物への影響が評価できていない
14. 生態系の上位性の観点のうち、オオタカ・フクロウ・カワセミを頂点とする食物連鎖に関する調査は、食物連鎖、階層構造の理解が低く、調査方法や評価方法に誤りが多い
15. 生態系の典型性の観点のうち、タヌキについては、環境改変の影響を比較的受けにくい動物であり、典型性の指標種の選定自体に問題がある
16. 生態系の特殊性の観点のうち、シデコブシに関しては、名古屋瀬戸道路のトンネル工事による地下水位変化の影響を受けるおそれが強い。影響回避のため、道路のルートを変更すべきである

3)-2人と自然との豊かな触れ合いの項目に関する意見

1. 景観資源に与える影響に関して、歴史的・文化的資源、利用者・地域住民に好まれる資源に対する影響が大きいにもかかわらず、環境保全措置がとられていない
2. 自然とのふれあいの場に与える影響に関しては、利用ルートの分断に関する影響評価が中心であり、海上の森が持つ自然との豊かなふれあいの場としての価値の評価ができていない

3)-3環境への負荷に関する項目に関する意見

1. 2005年日本国際博覧会事業の残土32万m3、新住宅市街地開発事業の残土160万m3、名古屋瀬戸道路の残土70万m3の処理が明確にされていない
2. 温室効果ガスの新たな発生は、日本政府の地球温暖化防止対策に反している

3)-4環境保全措置・追跡調査に関する意見

1. 「実行可能な範囲で」回避低減という表現を、安易に使うべきではない
2. 最低20年程度の追跡調査を行う計画をたてるべきである

3)-5総合評価に関する意見

1. 総合評価では、三事業の複合的影響を評価すべきである

・まとめ

* 本意見書において、「万○」は2005年日本国際博覧会の準備書、「住○」は新住宅市街地開発事業の準備書、「道○」は都市計画道路・名古屋瀬戸道路の準備書の中のページ数を表している。1/2. 2/2は、それぞれ2分冊のうち1、2分冊のうち2の中のページ数を表している。

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