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工事再開を控える泡瀬干潟の調査を実施しました

2011.09.12
活動報告

NACS-Jは地元の人たちと協力し、沖縄県の泡瀬干潟の埋め立て地とその周辺海域で海草やサンゴ群集、地形の調査を行っています。今年も5~7月に海草藻場とサンゴ群集の調査を実施しました。

現在、泡瀬干潟の埋め立て事業は、反対する地元住民らが裁判を起こし、一審、二審とも「経済的合理性がない」と沖縄市と沖縄県に公金差し止めを命じる判決が下り、昨年度1年間は工事が行われていません。

しかし、これまでの調査で、すでに行われた工事の影響を受け、直接の工事現場である護岸内部だけではなく、護岸の外に位置する砂州の形が大きく変化したり、土砂の堆積により海草やサンゴが消失したことが分かっています。

 

大潮で潮が引いている日に徒歩で海草藻場の調査を行いました

現場に入るとすぐに、昨年までも減り続けていた海草の量がさらに消失していることに気付きました。陸から沖合い600~1600mまでのラインを張って海草の被度や地形の変化をみるモニタリング調査では、昨年よりも干潟が平坦になってしまったことが分かりました。また、砂州の形状もさらに大きく変化してしまい、平坦に広がっていました。粒の小さい土砂の堆積もあり、水の濁りが激しくなっていました。

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▲ライン調査の様子

工事が再開されれば回復したサンゴもまた危機にさらされる

今年5月には、工事が行われていない泡瀬干潟西防波堤のヒメマツミドリイシ(サンゴの一種)が群生している場所で調査を行いました。ここでも、2005年からサンゴの被度は右肩下がりの傾向を示しており(グラフ参照)、2010年までは生きているサンゴが減り続けていたことが分かります。しかしながら今年は1年半工事が停止していた影響なのか、サンゴの被度は前年より少し回復し、41・9%になりました。

短い期間とはいえ、水質汚染が改善されたことにより、サンゴが少し生きやすくなったのかもしれません。また、数値で分かるほどに1年間で被度が回復したのは、ミドリイシ類の成長が早いことも要因のひとつだと思います。ここで工事が止まり少しでも環境が良くなれば、元通りとはまではいかなくても、さらに回復し、より良い状態になっていくと思います。

しかし7月19日に沖縄県知事から埋め立てを承認する許可が下り、早ければ9月中旬にも工事が再開されます。少し回復したサンゴや激減したもののまだ残っている海草、激変してしまった地形も、またすぐに危機にさらされることになります。

これに対し7月22日に、泡瀬干潟を守る連絡会を中心に、275人の沖縄市民県民、そして、「泡瀬干潟」や5種類の野生動植物が原告となり、沖縄県と沖縄市に公金支出の差し止めを求め、提訴しました。NACS-Jも引き続き科学的データをもって地域住民の活動を支援し、国、県、沖縄市に埋め立て中止を要請していきます。

(安部真理子/保護プロジェクト部)

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