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その場所を守るための行動を効果的に起こせる タイミングがあります。

2006.07.01
活動報告

会報『自然保護』No.492(2006年7/8月号)より転載


5年ごとに見直される国有林の管理計画

森林や河川、海辺など、自然環境の管理方法を、より自然保護の考えに沿ったものに変えたい。そのために、NACS-Jは、行政などに働きかける上で最も効果的なタイミングを考えつつ活動を計画しています。

国土面積の約2割を占める国有林を例に挙げてみます。国有林については、全国規模の管理方針を定める「管理経営基本計画」(5年ごとに見直す)を基に、地域ごとの「地域管理経営計画」・「国有林野施業実施計画」が5年ごとに定められています。「地域管理経営計画」はその地域の国有林管理の基本方針を、「施業実施計画」は、今後5年間にどの森林で事業を行うかといった計画を定めています。

AKAYAプロジェクトが進む「赤谷の森」のある、林野庁関東森林管理局・利根沼田森林管理署管内(利根上流森林計画区)に関しては、2005年が地域ごとの計画の改定作業が行われる年でした。NACS-Jはこの機を逃さず、生物多様性の復元に向けた環境管理の意図が踏まえられた管理計画になるよう、いくつもの提案を行いました。

今年度は、福島・会津地域や東京・小笠原諸島で計画改定作業が進められています。NACS-Jはこの作業時期に合わせ、森林生態系保護地域や緑の回廊などの新規設定・拡充の働きかけを、04年から行っています(会報5/6月号34・37ページ)。NACS-Jの短中期の活動項目を組み立てていく際には、行政がこのような管理計画を立案するタイミングを常に考慮に入れています。

自分たちの地域の管理計画を知るには

地域ごとの「地域管理経営計画」・「国有林野施業実施計画」は、改定作業が大詰めを迎える年度終盤(おおむね1~3月の間)の1ヶ月間、森林管理局や森林管理署で公告・縦覧が行われます。誰でも計画案を閲覧し、意見を出すことができます。また、5年ごとに計画を見直す地域はあらかじめ順番が決まっていて(図)、各森林管理局のホームページでも公開されています。次の改定がいつ行われるかを把握し、それに合わせて関係機関へ働きかけを行うことが、計画に自然保護の考えを反映させるきっかけとなります。

国有林の場合の計画をチェックする際のポイントを紹介します。

(1) 森林の機能類型区分
どのような機能が重視され、管理されているかが分かります。林野庁が作成する各地の「国有林野施業実施計画図」を見れば、エリアの機能類型が色つきで区分されています(この地図は森林管理局・署で誰でも購入できます/関東森林管理局管内では1600円)。

(2) 伐採指定箇所
5年内に伐採などの施業がどこで予定されているかが分かります。「国有林野施業実施計画書」に添付されている「伐採造林計画簿」には、伐採するエリア・伐採方法などが記されています。

(3) 水土保全林の「施業群」
(1)の機能類型区分のうち、もっとも多くを占める水土保全林(水源かん養タイプ)には、伐採や植栽も含め、どのような手順で森林を管理していくかを定める「施業群」というものが設定されています。この中には、自然林であっても伐採を行う施業群が設定されていることがあり、本当に必要で、やむを得ない所かどうかに注意する必要があります。

なお、これらの計画書類は日ごろ目にしない用語や表も多く、すべてを読みとるのはなかなか難しいものです。そう感じたときには、憶せず行政の担当者に直接問い合わせることができます。国有林は国民の森なのです。

海でも山でも、地域の管理計画の現状と、改定のタイミングを把握しておくことは、計画に改良を加え、事前に問題を回避させられる機会へとつながります。戦略的に自然観察会や調査活動を実施することが、あなたの〝マイ・フィールド〟の保全に役立つのです。

(茅野恒秀/総合プロジェクト・AKAYA担当)

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←関東の地域管理経営計画と国有林
野施業実施計画の計画期間
(関東森林管理局資料より)

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