日本自然保護協会は、生物多様性を守る自然保護NGOです。

海辺・干潟・湿地環境の保全

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全国の海辺・干潟・湿地の保全と賢明な利用を確実に実現する。

自然の干潟や湿地、自然海岸には、かけがえのない生態的機能(水質浄化・生物生息環境・生物生産など)、社会的機能(レクリェーション・教育・景観など)があります。しかし現在、日本の干潟はその多くが消失し、自然海岸は本土では45%しかありません。 これまでの干潟の消失原因で最も多いのが埋め立てです。埋め立ては不可逆的な自然の改変であり、埋め立てで失われた干潟・浅瀬は機能的にも、歴史的にも人工的な技術で再生できるものではありません。現存する自然の干潟・海岸を未来に引き継ぐために、埋め立ての制限、開発、港湾整備事業計画での環境面でのチェック機能の強化が必要なのです。

 


海辺環境の生物多様性損失の抑止力となるしくみがない

1999年になって海岸法に「海岸環境の整備と保全」、「公衆の海岸の適正な利用」が追加される改正が行われました。この改正で、日本のほぼすべての海岸線は都道府県知事が管理する海岸保全区域とそれ以外は市町村長が管理し、環境保全や適正な利用のために、自動車の乗り入れなどの私的利用が制限されるようになりました。国や県が事業者である沖縄県の泡瀬干潟の埋め立て事業にも、環境監視と保全策を担保するための委員会が設置され、NACS-Jなどの専門家や地元市民団体などから委員として参加できる場もつくられるようになりました。
しかし、こうした委員会が開催されて、開発に対し自然保護上の問題があることが指摘されても、埋め立て工事が進行しています。泡瀬干潟の埋め立て事業では、調査の精度、環境保全の代替策や工法などにさまざまな問題点が指摘され、見直しの声が出ましたが、事後調査で対応するという見切り発車で環境影響評価の手続きは進み、抜本的見直しが行われることなく、2002年に着工されてしまいました。干潟の生物多様性に重大な影響を与える埋め立て事業に対して、抑止力となる包括的な海辺を守るしくみが必要になっています。

埋め立てられ続けている日本の干潟・海辺

1980年代までは、湿地や干潟、サンゴ礁を含む浅海域は干拓や土地造成のために躊躇無く埋め立てられ続けてきました。東京湾、瀬戸内海を中心に工業用地として埋め立てが急増し、海岸の造成で潮流の変化や産卵場所の激減で沿岸の漁獲は減り、漁業補償による漁業権放棄が進みました。そのような時代に野鳥愛好家が渡り鳥の重要な中継地として干潟の保護運動を始め、全国的な干潟の保全活動が広がりました。特に昭和20年(1945年)から平成10年(1998年)の53年間の間にも約4割が失われました。これまでの干潟の消失原因で最も多いのが埋め立て(42%)です(第4回自然環境保全基礎調査1994)。

海辺に関する法制度は公有水面埋め立て法と海岸法が代表ですが、公有水面埋め立て法は埋め立て事業について知事の免許を規定するもの、海岸法は津波、高潮、波浪などによる被害から海岸を防護することを目的に制定されたものです。公有水面埋め立て法でも、面積50ha以上もしくは環境影響評価法対象の40ha以上の埋め立てに関しては、環境大臣の意見を聴取することになっていますが、事業ありきのずさんな環境アセスメントの結果、海辺や湿地の持つ生物多様性の重要さや希少さ、生態的機能、社会的機能の価値を十分評価せずに、1994年福岡の和白干潟の人工島建設や1997年の諫早湾の堤防締め切りが行われました。日本自然保護協会が発表した「全国の主な干潟の現状調査(1998)」でも、少なくとも日本の主な干潟36カ所のうち半数以上の干潟が、埋め立てや港湾施設等の開発計画により危機にさらされていました。

 


包括的な海辺を守るしくみを提案

2010年の生物多様性条約締約国会議の大きなテーマのうちのひとつが保護地域問題です。公海上の保護地域の設定とともに、日本が早急に取り組まなくてはならないのが、沿岸の保護地域のしくみの充実と拡大です。陸上に比べ、海の保護地域の指定は面積も狭く、いろいろな制御や規制が弱いことが問題です。循環型の漁業資源の確保や沿岸地域の防災面からも、広域の保全管理のしくみづくりや、山~川~海を連続させて自然のダイナミズムと折り合いをつけながら環境保全をしていくための提言を今後も続けていきます。

人がつくり出すことのできない干潟の機能や生物多様性をアピール

社会でもサンゴ礁を中心に、干潟や湿地の価値が少しずつ認識されはじめてきています。藤前干潟では、市民活動が実りゴミ処分場建設計画が中止されラムサール条約登録湿地として保全される場となりました。三番瀬では地域住民が合意形成を行いながら埋め立て中止を導き、自然環境の再生・保全と地域住民が親しめる海の再生を目指して行政とともに再生計画をたてています。
しかし、保全を重視する社会的合意は地域により温度差がまだまだあります。日本自然保護協会では、諫早湾締め切り後の有明海の変化を科学的に調査し、大貧酸素水塊ができることを究明しました。三番瀬や泡瀬干潟でも継続的な調査や支援活動を行い、干潟の持つ機能、生物多様性の多様さを発表し続けてきました。こうした科学的根拠に基づき、全国で計画中の干潟の埋め立ての見直しが進むことを提言していきます。

 

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