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河川生態系の保全・ダム問題

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山から川そして海へ流域をひとつに考え河川行政に提言。

日本は「森の国」であるとともに、大小合わせると3万本ともいわれる河川がある「川の国」でもあります。降水量が多く、急峻な地形が多い日本の河川は、時折起こる大水によって山からの栄養を平地に運んだり、たまった土砂を下流や海まで供給しながら、長い時間の中で水の流れる曲線を自らつくり出してきました。 都市への人口集中が加速化するにつれ、その自然の流れは、巨大なコンクリートのダムで堰き止められ、3面張りの河川改修で直線化され続けてきました。川に求められるのは、雨水を早く下流に流す排水路としての機能ばかりになり、山から海までをつなぐ自然の動脈が分断され、上流から沿岸までさまざまな自然環境への影響が出ています。

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建設省の河川行政のあり方の転換

こうした長良川河口堰問題の社会的関心の高まりは、建設省内にも旧来型の河川管理の方法に疑問を持つ人々を誕生させました。長良川で指摘された数々の河川管理の問題から、「河川管理計画における環境影響への配慮は、もはや無視できないところにある」という認識は、やがて河川局全体へと広がりました。政府内でも、地球サミットなど国際的な地球環境問題への参画や、「環境基本法」の制定などを受けて、建設行政においても、環境に配慮することを明記した「環境政策大綱」が1994年に建設省決定され、97年の河川法改正で「環境保全」「地域住民の意見の反映」の観点が盛り込まれることへとつながっていきました。

長良川では、その後も建設省、反対し続けたNGO、市民グループ双方によりさまざまな影響調査などが行われつつも、河口堰の建設自体は95年に本格運用が開始されるという結果になりましたが、北海道千歳川放水路計画の中止や全国の巨大ダム・河口堰建設計画の見直しへ大きな契機となりました。国土交通省近畿地方整備局によって設置された淀川流域委員会(2001年設置)など、水系の「河川整備計画の案」の策定時に学識経験者や住民の代表から意見を聴く場がもたれるようにもなり、計画されているダム事業の見直し提言が活発になりつつあります。

長良川河口堰計画で高まった河川保護の機運

高度成長期、都市への人口集中による水需要の高まりや、平地の洪水の被害を抑制するために、「特定多目的ダム法」(1957年)、「水資源開発促進法」(1961年)といった法律が整備されました。川への公共投資は治水・利水を兼ねる多目的ダムや堰の建設に集中していく中で、長良川河口堰の計画が浮上しました。河口堰建設構想が表に出ると、まず流域の漁業協同組合の激しい反対が動き噴き出しました。反対運動はやがて漁業関係者だけでなく、釣りやカヌーを愛好する人たち、研究者、ジャーナリスト、作家、芸術家、弁護士など、広範な人々へ急速に浸透し、建設差し止めのマンモス訴訟にまで発展していきました。しかし、事業主体である建設省・水資源開発公団は計画通りに建設事業を進め、1988年に着工しました。

NACS-J河川問題調査特別委員会の設置

こうした、巨大開発の進行とNGOの活動、社会的関心の高まりを受け、日本自然保護協会は1989年末「河川問題調査特別委員会」設置し、下部組織として専門委員会である「長良川河口堰問題専門委員会」を置き、全国の河川をめぐるさまざまな問題について調査・検討を行い、河川環境保全のための新しい指針をまとめました。魚類や植生などの生態学、河川工学、水問題、砂防・災害問題などの専門家が集結し、「河川を上流の森林から海まで一連の生態系として捉える」ための科学的検討を続け、まず長良川河口堰の建設がもたらす環境への悪影響を中間報告としてまとめました。
今でいう、「工業事業の見直し勧告」に、事業主体である建設省・水資源開発公団は2ヶ月後に「長良川河口堰について」という文書を発表し、堰着工後にして初めて議論の糸口ができました。その後、NACS-Jは意見書や委員会がまとめた『長良川河口堰事業の問題点 第2次報告書』を携え、地方や本省の河川工学を基礎とする担当者に、河川を分断する治水・利水のあり方が及ぼす影響について、生態学や自然環境保全の面からの解説や説得を行い続けました。

シンポジウム「うなぎ未来会議2016」-ニホンウナギの絶滅リスク評価-の開催と市民パネルの公募

日本自然保護協会は、中央大学研究開発機構、北里大学海洋生命科学部、ロンドン動物学会、IUCN(国際自然保護連合)種の保存委員会ウナギ属魚類専門家グループと共催で、シンポジウムうなぎ未来会議2016」~ニホンウナギの絶滅リスク評価~を、2016年10月28日(金)~10月30日(日)に開催します。
シンポジウムの詳細は、https://c-faculty.chuo-u.ac.jp/blog/eelunit/detail/をご参照ください。
このシンポジウムは、専門家だけではなく、市民の視点でウナギの問題を詳細に議論するという、これまでにない試みによって、解決すべき社会的な課題を明確にするという目的で開催します。
そのために、シンポジウムに先立ち、市民パネルとしての参加者を広く、一般公募することにしました。
市民パネルの方には、ウナギに関する基礎知識を得た上で専門家とウナギのこれからについて議論し、未来に向けた対策を一緒に考えていただきます。市民パネルの意見のとりまとめは、ファシリテーターがお手伝いします。
活動内容
・ウナギの基礎知識についてレクチャーを受ける
・評価会議で専門家の討論を傍聴し、質問する
・市民パネル間で意見をまとめ、シンポジウムで発表する
・うなぎ未来会議2016の終了後、市民パネルの意見を文書にまとめて発表する
市民パネルとして参加する具体的な応募方法については下記をご覧ください。
■ 募集人数
6~7名程度
■ 応募要件
1.ニホンウナギの保全に関心のある方
2.全てのプログラムに参加できる方
3.自分の意見を述べ、他者と積極的に交流できる方
■ 旅費、食費
・旅費と宿泊費をお支払いします。
・昼食はお弁当を用意いたします。
・謝礼はありませんのでご了承ください。
■ 応募方法
応募フォーマットに以下の情報をご記入の上、下記メールアドレスまでお送りください。連絡先などの記載に不備がありますと連絡ができかねますので,記入には十分にご注意ください。なお、いただいた個人情報を「うなぎ未来会議2016」の運営以外の目的に使用することはありません。
・氏名
・性別
・生年月日
・住所と最寄り駅
・電話番号
・メールアドレス
・職種(会社員、学生、主婦、その他)
・環境保全動経験の有無(あれば時期、内容)例:2012年5月に○○川をきれいにする会で河川清掃
・ウナギに関するシンポジウム等への参加経験(あれば時期、内容)
・「うなぎ未来会議2016」を知ったきっかけ(Web上であれば、サイト名等を具体的に)
・市民パネルに応募した理由(ウナギへの想い)(300字程度)
・宿泊希望の有無(居住地に関わらず宿泊いただけます)
応募フォーマットは、https://c-faculty.chuo-u.ac.jp/blog/eelunit/home/apply/civilpanel/よりダウンロードをお願いいたします。
■ 応募書類送付先
eelunit@tamacc.cho-u.ac.jp

 


山から海への自然のつながりを取り戻す

2001年長野県の田中知事の脱ダム宣言以来、地方自治体でも「脱ダム」の動きは加速し、不要なダム計画の見直す県も増えつつあります。しかし、計画から60年弱が経ちながら国交省が着工を急ぐ八ツ場ダム(群馬県)、県知事が建設反対の立場を表明し、計画は休止中の川辺川ダム(熊本)、建設による治水効果が不透明で乱暴な魚道試験などの問題が指摘されたサンルダム(北海道)など、国の直轄事業であるダム建設の自然環境面からの見直しは遅々としています。流域委員会でも最終意見が河川整備計画に反映されるプロセスが不明瞭で、河川法の改正の趣旨が活かされていないという問題も起きています。
また大小さまざまな規模の治水・利水ダム、砂防ダム(国交省所管)、治山ダム(農水省所管)などがコンクリートの耐用年数を迎えつつある今、不要なダム、老朽化したダムの撤去を行い、自然の河川のつながりを取り戻さねばならない時期に来ています。
NACS-Jでは、計画中のダムが自然環境に与える悪影響を指摘し続けるとともに、既存のダムの撤去によって流域の生物多様性を取り戻す取り組みも始めています。群馬県のAKAYAプロジェクトでは、治山ダムの撤去による渓流環境の復元に着手しています。
今後も山から海までの流域を考え、人の暮らしや営みの持続を支え続けられる自然環境の再生のために、ダム建設の見直し、河川管理のあり方を提言し続けていきます。

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