日本自然保護協会は、生物多様性を守る自然保護NGOです。

尾瀬プロジェクト

自然保護発祥の地で国立公園の保全管理モデルを目指す。

尾瀬は、NACS-Jの組織と活動を作るきっかけとなった地域です。 国立公園(自然公園法)、天然保護区域(文化財保護法)、ラムサール登録湿地の各指定地の中で最もランクの高い指定地とされながら、その保護と利 用のあり方について常に課題・問題を提起し続けている場所です。 NACS-Jは、人の利用が許容できない自然性の地区は厳正に保存し、人の利用を許容できるところでは許容範囲内で教育的な活用を行うという、保護 地域の利用に対する基本的な考え方をもって、尾瀬をモデル事例としてこれらの課題に取り組んでいます。

 


尾瀬プロジェクトとは

尾瀬は、2007年8月末に国立公園として独立し、会津側に公園地域が拡大されました。この拡大範囲は森林生態系保護地域と一致しています。尾瀬の国立公園としての独立、地域拡大に対し、環境省、林野庁、関係 団体の関係者・責任者が同席する中、拡大される地域自然の現実の公園利用の前に、NACS-Jは脆弱な自然性の予防的な保護措置をとるよう要望し、環境省はその対処を約束しました。

これまでの自然公園制度による 尾瀬の保護管理は、アヤメ平や至仏山登山道といった、脆弱な自然を無防備なまま観光利用させてきたことで復元不能の荒廃を引き起こすという、大きな反省事項を持っています。これまでの保護地域と共に、拡大させる地域に対しどのような保護対処がなされるか、注視と参加が必要です。

尾瀬ではこうした環境行政・林野行政という縦割りの行政施策から来る矛盾を最小とし、始めから重なり合いを意識した検討と計画になるよう、今後も、NACS-Jの尾瀬の活動が触媒となっていく必要があります。脆 弱な自然環境への科学的な調査研究をはじめ各種の検討組織への参加など、NACS-Jの尾瀬への総合的な関わ りをNACS-J事務局(保護プロジェクト部)では「尾瀬プロジェクト」と名づけて実行しています。

「尾瀬プロ ジェクト」の働き方や機能には今、これまで以上にたくさんの期待と要望が寄せられるようになっています 。

尾瀬をモデルとした保護地域の共通課題

尾瀬国立公園独立の2007年8月、尾根部と峠では使用できる携帯電話を、尾瀬ヶ原などの中核地域でも使え るようにしてほしいという、2004年にも問題となった携帯電話の基地局設置問題が再燃しました。
この要望 は、地元・片品村の団体から主として事故対策の手段を理由に出されたものですが、こうした問題を本質的 に解決するには、国立公園特別保護地区の環境のあり方との関係、予防にも十全な対策をめぐらす本来の事 故対策のあり方との関係、さらに、これからの国立公園の利用者像のあり方との関係など、論議を経るべき 課題が数多くあります。
また、尾瀬のような自然特性を持つ地元の地域社会に対し、日常、誰がどのように どのような情報を提供し、啓発していくべきかという、全国の保護地域にある基本的な問題点を提起するも のでもあると思われます。

NACS-Jが参加してきた尾瀬に関わる検討組織

2007年度現在、NACS-Jは、尾瀬に関わる三つの検討組織に参加しています。

(1)荒廃した至仏山登山道周辺自然(国立公園特別保護地区)の緊急対策についての検討会議(理事・横山) 、
(2)尾瀬に対する基本的な考え方を整理する「尾瀬のあり方検討会議」(理事・横山)、
(3)尾瀬保護財団評議員会(理事・水野)。
至仏山については、群馬県と共に生態系調査を三年間にわたって行い、至仏山の荒廃のメカニズムを初めて 明らかにしました(理事・大澤、横山)。 また2006年度までは、

(4)尾瀬の二ホンジカと食害対策検討会(理事・吉田)、
(5)ツキノワグマとの共生対策検討会(理事・横山)、
(6)尾瀬ヶ原の適正利用密度検討会(理事・横山)
にも参加し、自然保護の立場から意見を述べました。これらは主として、環境行政に関わる検討課題への取 り組みです。これらの内容は、尾瀬保護財団、環境省国立公園事務所のホームページで閲覧できます。

また同時に、手薄であった林野行政の課題にも関与し、2003年から

(7)福島県・会津地域の国有林保護のあり方検討会(理事・横山)
に参加してきました。そこでは、約10万ヘクタールの地域をまるごと森林生態系保護地域や緑の回廊とする 計画を採択に導き、2006年度に行われた

(8)会津森林生態系保護地域設定委員会(理事・横山)
では具体的な保全範囲を提案し、2007年度までに会津駒ケ岳・帝釈山・田代山などを含む広い地域が、「奥 会津森林生態系保護地域」となりました。この間の論議は、日本森林技術協会のホームページで、指定内容 は、関東森林管理局のホームページで閲覧できます。

荒廃した至仏山登山道周辺自然(国立公園特別保護地区)の緊急対策についての検討会議(理事・横山) 、
尾瀬に対する基本的な考え方を整理する「尾瀬のあり方検討会議」(理事・横山)、
尾瀬保護財団評議員会(理事・水野)。
(2007年10月1日/横山隆一 常勤理事)

 


デリケートな自然を守りながら利用のルールをつくっていく。

NACS-Jでは2003~2004年にかけて、尾瀬国立公園特別保護地区・至仏山の登山道周辺の自然植生荒廃の現状把握と環境修復計画策定のため、新しい生態系区分の手法を用いて、健康診断を行ないました。その結果、最も壊れやすく、公園利用の際に注意と配慮が必要で、本来は避けるべき場所を登山道が通っていることが分かりました。
このため、至仏山保全対策会議(事務局:尾瀬保護財団)をつくり、緊急措置として、登山シーズンを3つにわけて、入山のためのルールを決めて、できるだけ自然に負荷を与えない方法をとること決めました。NACS-Jもこの会議に参加しています。
至仏山の登山道については、さらに一部迂回路を作ることも視野に入れ抜本的対策に乗り出すための調査が開始されることになりました。

また、2007年8月に独立した尾瀬国立公園の新規編入の会津駒ヶ岳・帝釈山・田代山については、基本的な管理方針が策定され、現行登山道の是非を含め科学的に検証しながら保全対策をつくっていくことになりました。

(保護プロジェクト部 辻村千尋)

 

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