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自然環境行政・環境基本計画への提言

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2018.05.23

「環境教育等基本方針」の改訂案に対して意見を提出しました

この基本方針は、平成24年に施行された環境教育等促進法に基づいて5年に1度見直しされるものです。

環境教育等促進法は、学校や職場など幅広い場での環境教育のあり方を定めるとともに、日本自然保護協会のような民間団体が行っている環境教育活動との連携促進や認定制度、市民団体から自治体への環境教育活動の提案制度などを定めています。

今回の基本方針の改訂案では、世界目標となったSDGs(持続可能な開発目標)への対応や、「体験の機会の場」づくりを重視することなどが盛り込まれています(詳細は環境省の解説を参照)。

そこで、日本自然保護協会では主に以下の点について意見を提出しました。

  • 生物多様性の喪失だけでなく様々な社会課題が深刻化している中で、環境問題と共に地域の社会課題についても解決を目指せるような、SDGsに貢献できる人材の育成を進めること
  • 学校で十分な環境教育を受けてこなかった社会人への環境教育こそ、重視すること
  • 動植物水族館やユネスコスクール、都市公園を環境教育の拠点として活用しソフト面の充実も図るとともに、ユネスコエコパークの登録自治体とも連携すること
  • 環境省に認定された団体・事業にこだわらず、多様な民間団体や自治体の人材育成事業と連携すること。特にユースセクターについては連携を具体化すること。

※ 環境教育等促進法の正式な名称は「環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律」です。

20180522_環境教育等促進法基本方針改定案への意見(304KB)


2018年5月22日

環境教育等基本方針の改定案についての意見

 

公益財団法人日本自然保護協会

                                理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、日本の各地における環境教育の中核的な担い手の一つである「NACS-J自然観察指導員」の養成を過去40年間にわたり続けてきました。アクティブラーニングやアウトプットの重視、ロールモデルの提示など、本環境教育等基本方針でも重要事項に掲げられている要素を盛り込んだカリキュラムを当初から実践し、変化しつつある課題に対応できる人材の育成を継続しています。これまで全国で登録された約3万人の自然観察指導員は、自然観察を通じた環境教育の機会を年間のべ130万人の国民に対して提供する(2016年度アンケート調査結果)など、それぞれの地域で最も主要な環境教育の担い手のひとつとなっています。

当会をはじめとする多くの関係者の取り組みの結果、環境教育分野では多くの成果が得られていますが、その一方で社会の変化・経済活動の拡大・科学技術の進歩とともに、次々と新たな社会課題が生まれています。新たな課題の解決ができる実行力のある人材を育成することが環境教育の喫緊の課題であり、本基本方針はたいへん重要なものであると考えています。

国内の環境教育の中核的役割を担ってきた立場から、本基本方針案について以下の意見を述べます。

 

■方針案全体について

SDGs・ESD推進の重要な手段としての「環境課題の解決を通じて他の社会課題にも同時的に貢献する『統合的アプローチ』」と、それに基づきSDGsを推進できる中核的な人材の育成の重要性について追記すべき。

 

■「はじめに」全体について

環境教育促進法に基づき作成されている基本方針であることや、本基本方針とESD国内実施計画の関係性がわかりづらい。国民が理解できる形で本文中にも記述すること。

 

■「はじめに」環境問題(2ページ)について

取り上げられている環境問題がすべて地球規模かつ漠然とした記述である。環境教育の関係者は地域にいること、本文中の課題との整合性からも、地域で今まさに生じている課題についても具体的な例を併記すべき。

 

■「はじめに」(2ページ、2パラグラフ直後)について

平成26年度中環審の答申を引用し、「個々の社会課題が複合的に関係しあっており、その解決には環境問題も含めた社会課題の複数・同時的解決をはかる「統合的アプローチ」が求められている」ことを明記すべき。

 

■1-(2)環境保全のために求められる人間像(6ページ)について

「地域の多様な社会課題とその問題の構造に目を向け、複合的な課題の同時的解決に貢献できる人間」を追記。

 

■1-(3)-①-ウ 「家庭、学校、職場、地域等~環境の整備」(7ページ)について

民間活動は、税制、助成、事業委託等で活動の経済的基盤が形づくられているとあるが、安価な事業と捉えられるケースは多く、経済的基盤が整っているとはいいがたい。適正な対価が必要という記述も加えるべき。

 

■1-(3)-①-ウ 「家庭、学校、職場、地域等~環境の整備」(8ページ)について

見学の例は、廃棄物処理施設だけでなく「上下水施設や、工場や商店など生産・消費と廃棄物処理施設の見学」など循環を意識したものを挙げるべき。廃棄物処理施設だけでは従来の美化教育と大差がない。

 

■1-(3)-②ーア環境教育がはぐくむべき能力(9ページ)について

挙げられている能力はいずれも必要なものだが、後半の施策が学校教育に偏っている。これらの能力は子供・学生のみならず、学生時代に環境教育を受けていない社会人にこそ必要であることを明記しておくべき。

 

■1-(3)-②ーウ環境教育において特に重視すべき手法(12ページ)について

「体験活動」を通じた学びを行う際には、“特定の地域”からの視点、拠点としたものとあるが、“特定の”ではなく“具体的な”のほうが適切。

 

■「2-(2)推進のための施策」パート全体について

本基本方針に基づき実行計画を策定すること、基本方針ではなく実行計画においてアウトカム重視の成果進捗モニタリングを行うこと、法律や施策の知名度自体が低い状況を改善することについて、「ケ」として追記。

 

■2-(2)-① 学校、地域、社会等幅広い場における環境教育(17ページ以降)について

「ア」から「ク」までの推進施策について、非常に具体的な施策名に触れられているものから具体的なものが十分示されていないものまで大きな偏りがある。特にウ、オ、クを修正すべき。

 

■2-(2)-① 学校、地域、社会等幅広い場における環境教育(17ページ以降)について

「広い場」としながら本文中では学校教育への言及に偏りすぎている。気候変動はじめ環境問題は社会人の経済活動に起因する。持続可能な経済システムの構築のため、社会人向けの環境教育の強化について追記すべき。

 

■2-(2)-①-ア 学校における環境教育(17-18ページ) について

ユネスコスクールについて紹介するとともに、ESD推進のための拠点としてどのような具体的な取り組みを全国展開していけるのか、その方針を明記すべき。

 

■2-(2)-①-イ 地域等幅広い場における環境教育の推進(19ページ)について

対象は学校に通う児童・生徒だけではなく、これまで環境教育を受けてこなかった大人を対象であることに十分言及すべき。現在の案では、子ども対象の事例のみである。

 

■2-(2)-①-イ 地域等幅広い場における環境教育の推進(20ページ)について

「都市公園等の整備への支援」を「都市公園等での自然教育活動への支援」に変更。「整備」ではハード面の整備が連想されがちだが、ハード面でできる整備以上に、教育プログラム等のソフト充実が重要。

 

■2-(2)-①-イ 地域等幅広い場における環境教育の推進(20ページ)について

すべての登録地域でESDの実施が原則的に推奨されている「ユネスコエコパーク」について言及するとともに、その中核的役割を担う協議会や市町村との連携のあり方について具体的に方針を明記すべき。

 

■2-(2)-①-イ 地域等幅広い場における環境教育の推進(20ページ)について

全国の動植物園水族館における(在来種を使った)環境教育活動を強化することの重要性を追記すべき。認定動植物園制度についても紹介すべき。

 

■2-(2)-①-ウ 若者の社会参加の推進(20ページ)について

環境教育やESDの要素を取り入れと並列で書かれているが、2頁は「環境教育をESDが包含する形で整理がなされている」とある。両者の関係が混乱するので整理が必要。

 

■2-(2)-①-ウ 若者の社会参加の促進(20ページ)について

ESD-GPAでも重要な点として位置づけられるユースセクターについては、施策推進における役割についても追記し、また各大学の環境教育サークルなどユース団体との連携について具体的な促進方法を追記すべき。

 

■2-(2)-①-オ プログラムの整備(22ページ)について

「認定事業者と連携して」を「認定連携事業者をはじめとする様々な民間の環境教育団体と連携して」に変更すべき。自然観察指導員制度のように認定されておらずとも各県・全国で優良な取り組みが多くある。

 

■2-(2)-①-オ プログラムの整備(22ページ)について

「認定事業者と連携して」に「環境教育リーダーの認定・育成を進めている各自治体とも連携して」を追記。多くの都道府県で、数十年続く充実した人材育成事業が行われている。

 

■2-(2)-②職場における環境保全活動、環境保全の意欲の増進及び環境教育並びに協働取り組み(23ページ)について

冒頭に挙げられている気候変動はじめ環境問題は、社会人の経済活動に起因する。持続可能な経済システムの構築を目的として掲げ、社会人向けの環境教育の強化についても言及すべき。

 

■2-(2)-③環境教育等支援団体の指定(25ページ)について

「業務を継続的に実施するために必要な資力を有する」を指定要件に挙げているが、現状ではサービスを受ける側がサービスに見合う費用を支払うしくみが不十分。単なる安価なサービスではないことの明記も必要。

 

■2-(2)-⑧情報の積極的公表(29ページ)について

現場の主体の自主性にまかせるだけでなく、2頁で言及されている「環境事項の情報アクセスのガイドライン」について、今後の制度化にむけた政府の取り組み方針についても追記すべき。

 

■2-(2)-⑨国際的な視点での取り組み(30ページ)について

SDGsとの関係、SDGsの視点での記述を追記すべき。国際的な視点としては必須である。

 

以上

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