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2017.10.11

嘉徳海岸侵食対策事業に対する意見を嘉徳海岸侵食対策事業検討委員会宛てに提出しました。

奄美大島の嘉徳海岸で海岸侵食対策事業が計画されています。この事業の目的が海岸浸食への対応であるならば、その前提として嘉徳海岸の砂の起源や減少の原因について把握することが必要であること、県内外で行われてきた類似の事例の検証、自然が持つ力の再認識、住民との合意形成を行うことなどを求める意見をだしました。鹿児島県には財産である自然海岸を大切にしていただくことを強く要望します。

 

嘉徳海岸侵食対策事業に対する意見


2017年9月15日

嘉徳海岸侵食対策事業に対する意見

                         公益財団法人 日本自然保護協会
理事長  亀山 章

嘉徳海岸は奄美大島でも数少ない人工物のない自然のままの海岸です。世界的に絶滅が危惧されているアカウミガメとアオウミガメが産卵し、2002年にはウミガメの一種オサガメが産卵したことが記録されています。オサガメの産卵記録は日本ではこの事例だけであり、世界の最北端の産卵場所として記録されたものです。

嘉徳海岸で今年6月に日本自然保護協会が海の生き物を守る会らと行った調査では、60種以上の生物種が記録され、そのうち9種は環境省のレッドデータリストに掲載されています。これらのことからもこの場所の生物多様性の豊かさの一端が伺えますが、全貌を解明するには更なる科学的調査が必要です。
今回の事業は海岸侵食に対応する目的とのことですが、その前提として嘉徳海岸の砂の起源や減少の原因について把握することが必要です。特に次のことを詳細に調べる必要があると考えます。

(1)これまで嘉徳湾口付近の青戸沖で行われてきた海砂採取が嘉徳海岸の砂に与える影響ですが、沖合で海砂を採ると、その補てんをするために砂浜の砂が減少することが予測できます。

(2)嘉徳川で行われている河川改修作業と砂の動きとの関連ですが、瀬戸内町から得た書類(支出命令、外勤命令簿など)によると、何等かの作業が河川にて行われていたことが示唆されます。

(3)アダンをはじめとする海岸林の状態が砂の減少と関連性があるのならば、海岸林の整備等をすることが必要となります。

加えて県内外で行われてきた類似の護岸工事の防災効果の有無や周辺環境の変化などを把握することが必要です。長期的に見た場合に護岸が解決策とならない場合も想定されます。砂丘はそれ自体が防災効果を持つものであり、防災・減災については、国際的には、巨大防潮堤などの人工構造物ではなく生態系を基盤にした防災・減災(Eco-DRR:Ecosystem-based Solutions for Disaster Risk. Reduction)の考え方、つまり自然が持つ力を利用した方法が注目されています。自然の緩衝材は往々にしてコンクリートの構造物よりも、高い防災効果を発揮することがあらためて確認されています。
さらには、将来にわたる海の管理を進めるうえでは、地域住民の参加が不可欠です。公開の説明会の開催、アンケートや聞き取り調査などを通じた住民との合意形成などが重要です。

鹿児島県にはEco-DRRなどの先進的な取り組みを行い、財産である自然海岸を大切にしていただくことを強く要望します。

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