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シンポジウム「ネオニコチノイド系農薬の生態系影響」の開催結果概要レポート

2015.12.16
活動報告

「ネオニコチノイド系農薬」について考えるシンポジウムを、11月21日に開催しました。

浸透性農薬(ネオニコチノイド系農薬とフィプロニル)は、その利便性と安全性からこの20年間で世界中に普及した新農薬ですが、ミツバチや赤トンボ、生態系全体に影響を及ぼしていると疑われています。

当日はスイスからお招きしたIUCN浸透性殺虫剤タスクフォースのマーテン・ベイレフェルト氏や欧州アカデミー科学諮問委員会マイケル・ノートン氏をはじめ、国内外から昆虫学・環境学・毒性学・農薬管理をご専門とする5名の方にご講演いただき、新農薬の生態系影響や適正利用のあり方について議論しました。

シンポジウムには全国から環境系NPOや消費者団体、農家、化学メーカーなど約150名の方にご来場いただきました。

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当日のプログラム

シンポジウム「ネオニコチノイド系農薬の生態系影響」(PDF)

以下にシンポジウムの様子の動画と当日発表スライドを公表します。なお、論文未発表なども含むため、一部は非公開・加工されたものですのでご容赦ください。


趣旨説明「ネオニコチノイドとは?」…高川晋一(日本自然保護協会)

主催者よりシンポジウムの趣旨説明と、ネオニコチノイド系農薬の特性・環境問題について概説しました。

ネオニコチノイド系農薬は従来農薬とは異なり神経細胞に直接作用する農薬で、生物種によって受ける影響が大きくことなり、また水溶性・残留性が高く生態系全体に広がるという特性があります。一方で利便性が高いため農家に不可欠だという現状や、環境影響予測が難しく規制等の議論が進んでいません。

・動画①:https://youtu.be/O6ukMV0-xdU

・発表スライド:「ネオニコチノイドとは?」

基調講演「ネオニコチノイド系殺虫剤の生態系影響と『世界的な総合評価書(WIA)』の公表」…マーテン・ベイレフェルト (IUCN浸透性殺虫剤タスクフォース)

IUCN浸透性殺虫剤タスクフォースが2014年に発表した「世界的な総合評価書(WIA)」について紹介いただきました。

WIAは、浸透性殺虫剤の生態系影響について、800本もの学術論文をレビューしたはじめてのまとまった評価報告書です。「私たちはDDTへの対応に数十年を費やした。この過ちを繰り返してはならない」というメッセージをいただきました。

・動画②:https://youtu.be/DTznO70UW_Y

・発表スライド:「ネオニコチノイド系殺虫剤の生態系影響と『世界的な総合評価書(WIA)』の公表」

・WIAウェブサイト:http://goo.gl/bvDJG1

・WIA日本語版:http://goo.gl/hWUXbd

「生態系サービスと農業、そしてネオニコチノイド」…マイケル・ノートン (欧州アカデミー科学諮問委員会:EASAC)

EU各国の科学アカデミーに所属する専門家チームが2014年に公表したレポートの概要について紹介いただきました。このレポートは農業にとって不可欠な自然の恵み、特に昆虫による花粉送粉サービスについての総合評価を行ったものです。

その結果、EU全体で送粉サービスが近年劣化し続けていること、ミツバチよりもむしろ野生のハナバチ類への新農薬の影響が明らかであること、ミツバチの保護だけでは課題解決とならないことなどを発表いただきました。

・動画③:https://youtu.be/FZQZrnP4vvk

・発表スライド:「生態系サービスと農業、そしてネオニコチノイド」

・EASACレポート(英語):http://goo.gl/h4XTgmリンク切れ

「長期フィールド調査から明らかとなったアキアカネの激減」…二橋 亮 (産業総合研究所)

演者ご自身が富山県で35年間続けてきたトンボの定量調査の結果や、全国のトンボ研究者・愛好家へのアンケート結果について発表いただきました。

フィプロニルやネオニコチノイドが流通し始めた1998年ごろから全国でアキアカネが劇的に減少したこと、富山県でもアキアカネ・ノシメトンボが激減した一方で、ナツアカネなど減少のタイミングと農薬の影響との相関が明らかではない種も多かったこと、農薬の利用状況によって激減しなかった県もあることなどを発表いただきました。

関連論文:「富山県におけるアカトンボ激減の実態」昆虫と自然(2012年7月号)

「ネオニコチノイド系農薬の生態リスク評価及び実態調査」…五箇 公一(国立環境研究所)

水田メソコズム(圃場による擬似生態系実験施設)をつかった研究結果について、最新の知見も交えてご紹介いただきました。

確かにフィプロニルおよびイミダクプリド(ネオニコチノイドの一種)が水田の生物群集に大きな変化をもたらしていること、農薬によっては残留性が高く影響が徐々に増すこと、種によって影響の大きさがまったくことなり現在のバイオアッセイの方法では影響を予測しきれないことなどを発表いただきました。

また一方で、従来農薬や他の要因との影響比較など総合的な科学的評価が十分進んでいないという問題提起がありました。

・発表スライド(一部加工済み):「ネオニコチノイド系農薬の生態リスク評価及び実態調査」

「農薬問題の解決に必要な視点」…本山 直樹(千葉大学名誉教授)

長年農薬の安全管理に関わられてきた立場からご発表いただきました。

農業や農作物の保護には農薬が不可欠な役割を担っていること、厳しい安全基準を作ってリスク管理しながら適正に利用していく必要があることを説明いただきました。

また生態系の回復力が損なわれていなければ農薬の一時的利用は許容できる、生態系保全の責任を生産者だけに負わせてはいけない、といったこと主張されました。

・動画④:https://youtu.be/nf7wwkyRA7s 

・発表スライド:「農薬問題の解決に必要な視点」

パネルディスカッション

浸透性殺虫剤の生態系影響や、今後の農薬の適正利用について会場も交えながら非常に熱い議論が交わされました。「影響が科学的に十分明らかになってからでは対応が遅く、総合的な判断と対策が必要だ」「同じ農薬だけを使うのは害虫の抵抗性進化を促すため農薬製造サイドからみても持続可能でない」「代替案の無い状態で一律規制をかけるのは危険」「浸透性殺虫剤や農薬を使わずに生態系と共存する農業が日本各地でじわじわ広がっている」といった意見が交わされました。

動画⑤:https://youtu.be/hFVjh4rmoEA


今回のシンポジウムの開催によって、従来は「生態系影響はあるのか無いのか」「収量確保か生態系保全か」という二元論で語られてきた議論を、課題解決のための意味のある議論に結び付けられました。

まだまだ農薬や農業のあり方そのものを含んだ難しいテーマですが、「過去の過ちを繰り返さない」ためにも、日本自然保護協会では様々な取り組みを引き続き続けていきます。

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